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第40話 サエとの出会いとその才能に気づくセリカ



セリカが彼女を初めて見かけたのは、学校の教室だった。昼休みになると、他の生徒たちが外に駆け出して遊ぶ中、一人だけ机に座ったまま、分厚い本を読んでいる少女がいた。彼女の名はサエ。長い黒髪を肩にかけ、まるで影のようにひっそりとした存在感を持つ子で、誰かと会話をする様子はほとんどなかった。セリカよりも少し年上、8歳だと聞いていたが、年齢の割に落ち着いており、時折見せる穏やかな表情が印象的だった。


「サエ、いつも本を読んでいるよね。本が好きなの?」とセリカはある日、何気なく声をかけてみた。サエは顔を上げ、少し驚いたようにセリカを見つめたが、すぐに穏やかに微笑んで答えた。「ええ、本が好きなの。」


「もう本を読めるほど字を覚えたの?すごいね。」セリカは感心した。4歳の自分にとっては、まだ字を覚えることが一苦労で、すらすらと本を読んでいるサエがまるで別世界の人に見えたのだ。しかしサエはあくまで控えめに微笑み、「好きなことだから、一生懸命覚えたの」と答えるにとどめた。


しかし、セリカの興味を引いたのは、彼女が読んでいる本の内容だった。ちらりと表紙を見てみると、それはどう見ても年相応の物語ではなく、専門的な内容が多く含まれた学術書のようだった。話が難解な単語や専門用語に満ち、彼女がそれをどうにか読みこなしている様子を見て、セリカは胸に驚きと感心が湧き上がるのを感じた。


「それ、難しくない?」と尋ねると、サエは一瞬不思議そうにセリカを見つめてから、「字が読めればわかるわ」とさりげなく言った。この言葉に、セリカはさらに驚いた。彼女が読んでいる本は、転生してきた自分にとってさえ簡単ではない内容だったからだ。難しい専門用語や知識がふんだんに盛り込まれており、読解力が必要とされるものだ。サエはどのようにして、こんな高度な知識を理解しているのだろうか?


「この子、ひょっとして…」セリカは小さく息を飲んだ。この子には、特別な才能があるのかもしれない。彼女の知識欲と集中力、そして、年齢を超えた理解力に、セリカはただただ感心するばかりだった。


また、サエは本の内容に対する厳密さにも驚くほど敏感だった。その日、二人で話していた時、彼女が急に顔を上げて言った。「あれ? この本、スペルが間違っているわ。」サエが指さしたのは、確かに一文字違いのスペルミスだった。その違いによって、文章の意味が変わってしまっていたのだ。セリカが本を覗き込んで確認すると、確かに意味が通らなくなっている。見つけた間違いも、正しいスペルも、サエの年齢では知っているはずのない難しい単語だった。


「本当だ…一文字違うだけで意味が全然変わってしまうね。」セリカは唖然としてそのページを見つめながら、思わず口を開けた。転生してきた自分には難しい言葉があることを知り、セリカは内心でさらに感心すると同時に、サエに対する好奇心が高まっていくのを感じた。


サエはその場で軽く微笑んでいたが、特に自分がすごいことをしているという意識はないようだった。むしろ、彼女にとってはこれが普通のことであり、周囲と馴染むことにさほど関心を持たない様子が窺えた。



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