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第46話 公爵邸への訪問とマリアの説得

数日が経っても、セリカやサエたちの姿は学校には戻ってこなかった。噂は次第に広がり、生徒たちの心に拭えない不安が広がり続けていた。セリカの不在が特に大きく影響していることは、誰の目にも明らかだった。彼女の親友であったエレンとカイルは、毎日がいつもとは違う寂しさを感じていた。セリカがいなくなったことで、教室の雰囲気が一変してしまったのだ。


ある日の放課後、二人はマリア先生に直接話をしようと教室を出た。「マリア先生なら、何か知ってるんじゃないかな?」と、エレンがカイルに声をかけ、廊下を歩く。彼女は元々社交的な性格だが、セリカがいないことがここまで大きな影響を及ぼすとは思っていなかった。彼女の中で、セリカの存在はただの友人ではなく、彼女にとって特別なものとなっていたのだ。


一方のカイルも、彼女の言葉に黙ってうなずいた。普段はやんちゃで楽観的な彼だが、セリカのこととなると表情が真剣になる。二人は何も言わず、黙ってマリア先生のいる職員室へと足を向けた。


職員室の扉をノックすると、マリア先生が微笑みながら二人を迎え入れた。彼女は二人の様子を見て、何か特別な相談があることを感じ取ったようだった。二人が事情を話し始める前に、マリア先生が優しく言葉をかける。


「エレンさん、カイルさん、セリカさんのことで心配しているんですね?」


エレンは小さくうなずき、心の中に抱えていた不安を吐き出すように話し始めた。「先生、セリカが学校に来なくなってから、毎日が何か空っぽなんです。どうして何も言わずにいなくなっちゃったんでしょうか?」


カイルもまた、エレンに続いて訴えるように言葉を紡いだ。「そうですよね、マリア先生。セリカがいなくなってから、授業も、何をしても楽しくなくて。まるで、何か大切なものを失ったような感じなんです。」


マリア先生は二人の言葉に深くうなずきながら、その手を握り返すようにそっと彼らの肩に触れた。そして、優しく語りかける。「セリカさんはきっと、皆さんのことを思って、ある決意を胸に秘めていったのかもしれません。彼女が戻ってくる日がきっとあります。その日まで、どうか元気で待っていてくださいね。」


マリア先生の言葉は温かく、二人の不安な心を少しだけ和らげた。しかし、その日もセリカたちの姿が見えないまま学校の一日は終わった。エレンとカイルは、普段ならば笑い合いながら帰るはずの道を、今日は静かに歩いていた。



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