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第51話 悪徳金融業者の陰謀



ディオール学園の設立から半年が経過し、セリカが推進した教育制度は領内に広く根付き始めていた。貴族と平民が共に学ぶ姿は、この異世界では革新的なものだった。そんな平等な学びの場を目指すセリカの姿勢に、領内外から賛同の声が少しずつ集まり、ディオール領も活気づいていた。


ある日の午後、学園運営に関する報告を受けていたセリカのもとに、見慣れない男が訪れた。男は中年で、しわが寄ったスーツと小さな鞄を抱え、いかにも商人らしい姿だった。


「お嬢様にお目通りできるとは、光栄の至りです」そう言って頭を下げる男は、うっすらと薄笑いを浮かべていた。


「あなたは?」とセリカは尋ねた。


「私は、この地で金融業を営んでおります、ロワンスと申します。ディオール領の発展のために、ぜひご協力できればと参りました」


ロワンスは丁寧な言葉を並べたが、その目の奥には陰のある光が見え、セリカはわずかに不快感を抱いた。それでも、領地運営には資金が必要なことを理解していたため、話を聞くことにした。


「ディオール学園の評判は隣接する領地にも広がっております。この学園をさらに発展させるためには、資金が必要でございましょう。私の方で、特別に低金利の融資をお出しできるのですが」


「確かに資金は必要ですが、今のところは間に合っております」


「ですが、将来的な拡張を見据えると、資金を備えておくのも一手かと。今日中にご決断いただければ、さらに好条件で契約を進めることも可能です」


その言葉に、セリカは再び違和感を抱いた。契約書に細かく書かれた複雑な文面が気になり、少し距離を置きたい気分だった。


「少し考えさせていただけますか?」


ロワンスは僅かに目を細めつつも、頭を下げて退出した。その後、セリカは不安を覚えながら、信頼する仲間のサエに契約書を見せてみることにした。



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「セリカ、これ、ちょっとおかしいよ」サエは文書に目を通すと、瞬く間に内容を理解し、要約し始めた。「一見低金利みたいだけど、違約金の条項が厄介だね。もし支払えなくなると、高額な罰金が発生するってこと。これは実質、抜け出せない借金を抱え込む罠だよ」


サエがはっきりと説明すると、セリカの心に強い怒りが芽生えた。彼女は、ロワンスが子どもである自分を甘く見て金を騙し取ろうとしていることに気づき、対抗策を練る決意を固めた。


「サエ、ありがとう。彼が本当に詐欺まがいの手口で人々を苦しめているなら、見逃すわけにはいかないわ」


その日のうちに、補佐官のドライドにも協力を仰ぐことにした。ドライドもまた、セリカの言葉を聞いて事態をすぐに把握し、ロワンスが詐欺的な融資を行ってきたことを独自に調査した結果、彼の悪名がいくつかの領地に広がっている事実を突き止めた。


「お嬢様、やはりロワンスは悪徳業者です。彼のような者には適切な対応が必要でしょう」


「そうね、正々堂々と彼を追い払うわ」


セリカは自信を持ち、サエやドライドと共に対抗策を練り上げていった。



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