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第30話

生き残った住民たちが広場に集まってきた。


「おーい!!カノン!探偵さーん!!」


「げぇ!」


「アリス!!」


カノンは声を上げ、アリスの元へと駆け寄った。二人は嬉しそうに抱き合う。


「怪我してない?心配してたよー!」アリスが声を上げる。


「私は大丈夫!アリスのパパとママも無事でよかった!」カノンは笑顔で答えた。


その後、アリスは悠に駆け寄ってきた。


「な、なんだ?」


「この間は食べちゃおうとしてごめんね?でももうあなたは食べないから!」アリスはにっこりと笑う。「あなたがいなくなったらカノンが悲しむもんね!」


悠は少し困惑して答えた。「あなた"は"...ね」


その時、遠くから足音が響いた。


「あれは…?」


制服姿の男が鎧姿の兵士を数名引き連れて歩いてくる。


「無事ですか?みなさん。」


「おおおお!たいちょおおおおお!!」


「カイラ!帰ってきてたんだな!」クリスが笑顔を見せた。


「私が呼んだんだ。手当と迎えの兵士が必要だろ。」クライスがにっこりと微笑んだ。


「カイラ?」悠は少し驚きながら彼に視線を向ける。「こいつがか?」


その男は騎士というより、まるでカノンと同じ学生のように見えた。


「アリス、カノンちゃん無事でよかった。」カイラは心からの安堵を込めて言った。


「悠、紹介しよう。我がアルタイル騎士団の隊長、カイラ・エドワードだ。」クライスが静かに言った。


「あなたがウォーク能力者の人間か、話は聞いてます。」カイラがぎこちなく頭を下げたが、悠は目をつむることにした。


「カイラは我がアルタイル王国で一番の戦力だ。だから私の息子と次女の護衛をカイラ一人に任せた。」クライスは誇らしげに語った。


「安心してください、ご子息様は王宮へ無事帰還しました。」カイラは真剣な表情で報告する。


「うむ、ご苦労だったな。」クライスがその言葉に満足そうに頷いた。


その時、突然の爆発音が響いた。


「忘れてもらったら困るぜええ!!探偵!!!今度こそ貴様を炎で消す!!!」レガースの怒声が広場に響いた。彼は馬に乗り、炎の玉を振りまきながら近づいてきた。


「まずい…」悠は冷静に状況を把握する。拳銃は弾切れ、他の騎士たちはもう動けない。王国の兵士ではとても勝てそうにない。


「陛下!お下がりください!ここは我々が!」兵士たちが慌てて後退しようとするが、カイラが前に出た。


「みんな下がってて。」カイラは冷静に言うと、右手をレガースに向けて放った。


「こい、リヴァイアサン!」


すると、巨大なエイに羽が生えたような異形の生物が現れ、レガースに向かって突進した。リヴァイアサンは大きな口を開け、レガースを丸ごと呑み込んだ。


次の瞬間、爆発音が響き渡った。


ドカーン!!!


リヴァイアサンが爆発し、レガースの姿は跡形もなく消え去った。


「何が起こったんだ?」悠は目を見開きながら声を上げる。


「リヴァイアサンが対象を飲み込んだら、そいつはこの世のどこにも存在できなくなる。だから体の中で消滅する。」カイラは冷静に説明した。


「カイラは格闘術もすげえんだぜ!俺らなんかじゃとても太刀打ちできねえ。」ダグが感心した様子で言った。


「ダイアリーの皆様!海賊共の脅威は去りました!これからこの町の復興を全力で支援していく!兵士たちの指示に従ってテントへ向かってください!」クライスが広場に向かって大声で呼びかけた。


その後、兵士たちが馬車で続々と到着し、仮設の大きなテントが次々と立てられていった。


「悠、そして騎士たちもご苦労だったな。だが、これでティードが諦めるとは思えん。近いうちにまたやってくるだろうな。」クライスが冷静に言った。


「コロウの爺さんはどこいったんだ?」悠は周囲を見回しながら問いかけた。


「奴には市民の救助に向かってもらった。そのうち戻るだろう。」クライスは安心させるように答えた。


俺たちは城へと帰還した。しかし、事件は何一つ解決していなかった。これからも、俺は戦い続けなければならない。


数日後、スモーク山の小屋前。


「それじゃあ、いろいろと世話になった。」


「いいか、今のお主には呪いがかかっておる。」コロウが低い声で警告する。「くれぐれも"自分の口からこの異世界のことに触れるなよ"。石になって死ぬぞ。」


思い出す。確か、拘留室の男も異世界のことを口にしたら石になったはずだ。あいつも海賊の仲間だったのか?


あれ?


なんで俺が一度帰ったとき、釜野たちは石になった男のことを話さなかったんだ?


おかしいな。だって、あまりにも不自然だろう。


まるであの直後、誰かが密かにその男を処分したかのようだ。


誘拐事件の捜査班が解体されたことも気になっていた。警視庁か、海賊たちと何か絡んでいるのか?


俺は頭をかきながらゲートの中に入った。


渋谷のスクランブル交差点。ガヤガヤとした喧騒が広がり、何も変わらない日常が続いている。


でも、その世界には雪はいない。


諦めない。だって、俺は…


「どうしても、あいつらが許せない。必ず取り戻す。」


「たとえ俺の命が尽きても。」

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