生き残った住民たちが広場に集まってきた。
「おーい!!カノン!探偵さーん!!」
「げぇ!」
「アリス!!」
カノンは声を上げ、アリスの元へと駆け寄った。二人は嬉しそうに抱き合う。
「怪我してない?心配してたよー!」アリスが声を上げる。
「私は大丈夫!アリスのパパとママも無事でよかった!」カノンは笑顔で答えた。
その後、アリスは悠に駆け寄ってきた。
「な、なんだ?」
「この間は食べちゃおうとしてごめんね?でももうあなたは食べないから!」アリスはにっこりと笑う。「あなたがいなくなったらカノンが悲しむもんね!」
悠は少し困惑して答えた。「あなた"は"...ね」
その時、遠くから足音が響いた。
「あれは…?」
制服姿の男が鎧姿の兵士を数名引き連れて歩いてくる。
「無事ですか?みなさん。」
「おおおお!たいちょおおおおお!!」
「カイラ!帰ってきてたんだな!」クリスが笑顔を見せた。
「私が呼んだんだ。手当と迎えの兵士が必要だろ。」クライスがにっこりと微笑んだ。
「カイラ?」悠は少し驚きながら彼に視線を向ける。「こいつがか?」
その男は騎士というより、まるでカノンと同じ学生のように見えた。
「アリス、カノンちゃん無事でよかった。」カイラは心からの安堵を込めて言った。
「悠、紹介しよう。我がアルタイル騎士団の隊長、カイラ・エドワードだ。」クライスが静かに言った。
「あなたがウォーク能力者の人間か、話は聞いてます。」カイラがぎこちなく頭を下げたが、悠は目をつむることにした。
「カイラは我がアルタイル王国で一番の戦力だ。だから私の息子と次女の護衛をカイラ一人に任せた。」クライスは誇らしげに語った。
「安心してください、ご子息様は王宮へ無事帰還しました。」カイラは真剣な表情で報告する。
「うむ、ご苦労だったな。」クライスがその言葉に満足そうに頷いた。
その時、突然の爆発音が響いた。
「忘れてもらったら困るぜええ!!探偵!!!今度こそ貴様を炎で消す!!!」レガースの怒声が広場に響いた。彼は馬に乗り、炎の玉を振りまきながら近づいてきた。
「まずい…」悠は冷静に状況を把握する。拳銃は弾切れ、他の騎士たちはもう動けない。王国の兵士ではとても勝てそうにない。
「陛下!お下がりください!ここは我々が!」兵士たちが慌てて後退しようとするが、カイラが前に出た。
「みんな下がってて。」カイラは冷静に言うと、右手をレガースに向けて放った。
「こい、リヴァイアサン!」
すると、巨大なエイに羽が生えたような異形の生物が現れ、レガースに向かって突進した。リヴァイアサンは大きな口を開け、レガースを丸ごと呑み込んだ。
次の瞬間、爆発音が響き渡った。
ドカーン!!!
リヴァイアサンが爆発し、レガースの姿は跡形もなく消え去った。
「何が起こったんだ?」悠は目を見開きながら声を上げる。
「リヴァイアサンが対象を飲み込んだら、そいつはこの世のどこにも存在できなくなる。だから体の中で消滅する。」カイラは冷静に説明した。
「カイラは格闘術もすげえんだぜ!俺らなんかじゃとても太刀打ちできねえ。」ダグが感心した様子で言った。
「ダイアリーの皆様!海賊共の脅威は去りました!これからこの町の復興を全力で支援していく!兵士たちの指示に従ってテントへ向かってください!」クライスが広場に向かって大声で呼びかけた。
その後、兵士たちが馬車で続々と到着し、仮設の大きなテントが次々と立てられていった。
「悠、そして騎士たちもご苦労だったな。だが、これでティードが諦めるとは思えん。近いうちにまたやってくるだろうな。」クライスが冷静に言った。
「コロウの爺さんはどこいったんだ?」悠は周囲を見回しながら問いかけた。
「奴には市民の救助に向かってもらった。そのうち戻るだろう。」クライスは安心させるように答えた。
俺たちは城へと帰還した。しかし、事件は何一つ解決していなかった。これからも、俺は戦い続けなければならない。
数日後、スモーク山の小屋前。
「それじゃあ、いろいろと世話になった。」
「いいか、今のお主には呪いがかかっておる。」コロウが低い声で警告する。「くれぐれも"自分の口からこの異世界のことに触れるなよ"。石になって死ぬぞ。」
思い出す。確か、拘留室の男も異世界のことを口にしたら石になったはずだ。あいつも海賊の仲間だったのか?
あれ?
なんで俺が一度帰ったとき、釜野たちは石になった男のことを話さなかったんだ?
おかしいな。だって、あまりにも不自然だろう。
まるであの直後、誰かが密かにその男を処分したかのようだ。
誘拐事件の捜査班が解体されたことも気になっていた。警視庁か、海賊たちと何か絡んでいるのか?
俺は頭をかきながらゲートの中に入った。
渋谷のスクランブル交差点。ガヤガヤとした喧騒が広がり、何も変わらない日常が続いている。
でも、その世界には雪はいない。
諦めない。だって、俺は…
「どうしても、あいつらが許せない。必ず取り戻す。」
「たとえ俺の命が尽きても。」