十二月 夕暮れ 岡山県北部の山
ポチャン…。
木々が生い茂る冬の山。僕は一人、キャンプに来ている。
幸い、雪は降っていないし、池も凍っていない。
椅子に腰掛け、静かな池に釣り糸を垂らす。冷たい風が吹いている。
五分後。
「はぁ、やっぱり釣れないな…」
ため息をつきながら呟く。「さみーな…」
釣り糸をたるませたまま、俺はそそくさとテントへ戻り、腰を下ろした。
ピカーンとランタンを点け、寝袋に横たわる。
手元にあったのは、僕の一番好きな小説「羊たちの沈黙」。
「はぁ…クソ、集中できないな。」
横になった途端、無意識に考え込んでしまう。
「雪…」
雪のことが頭をよぎる。どうしても、雪のことを考えずにはいられなかった。
僕はリュックのチャックを引き、リボルバー拳銃を取り出す。
カチャリ…。
装弾数を確認し、
カチャ…。
銃を手に持ち、座って構える。
「全員、殺してやる。」
独り言が漏れる。言ってみたものの、言葉の重みが心に響く。
再び寝転がり、目を閉じると、いつの間にか眠気が襲ってきた。
外の静けさと、ランタンの灯りが、僕を包み込む。
テントの外を片付け、ランタンを消してから、再び横になる。
目を閉じると、冷たい風の音だけが遠くから聞こえてきた。