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ChapterⅡ異世界と現代

第31話

十二月 夕暮れ 岡山県北部の山


ポチャン…。


木々が生い茂る冬の山。僕は一人、キャンプに来ている。


幸い、雪は降っていないし、池も凍っていない。


椅子に腰掛け、静かな池に釣り糸を垂らす。冷たい風が吹いている。


五分後。


「はぁ、やっぱり釣れないな…」


ため息をつきながら呟く。「さみーな…」


釣り糸をたるませたまま、俺はそそくさとテントへ戻り、腰を下ろした。


ピカーンとランタンを点け、寝袋に横たわる。


手元にあったのは、僕の一番好きな小説「羊たちの沈黙」。


「はぁ…クソ、集中できないな。」


横になった途端、無意識に考え込んでしまう。


「雪…」


雪のことが頭をよぎる。どうしても、雪のことを考えずにはいられなかった。


僕はリュックのチャックを引き、リボルバー拳銃を取り出す。


カチャリ…。


装弾数を確認し、


カチャ…。


銃を手に持ち、座って構える。


「全員、殺してやる。」


独り言が漏れる。言ってみたものの、言葉の重みが心に響く。


再び寝転がり、目を閉じると、いつの間にか眠気が襲ってきた。


外の静けさと、ランタンの灯りが、僕を包み込む。


テントの外を片付け、ランタンを消してから、再び横になる。


目を閉じると、冷たい風の音だけが遠くから聞こえてきた。

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