真夜中のケッカイ島。ティード海賊団の部下たちが一斉に切りかかってきた。
「おらぁ!」
一人の下っ端が叫びながら突進してくる。俺は無視して、冷静に二発の弾丸をその腹に打ち込んだ。
「何がおらぁだよ、馬鹿がァ!」
バン!バン! 下っ端海賊がその場に崩れ落ちる。
「森へ進むぞ!ついてこい!!」
コロウが指示を出し、俺たちはケッカイ島の森へと足を進めた。釜野は拳銃を構えながら、周囲を警戒している。
「こ、これが...別世界なのか?」
「油断するな!刑事よ!」コロウが警告の声を上げた。「この島にはまだティード海賊団の幹部が残ってる可能性が高い!」
「さっさと進むぞ!」
俺は急かしながら、さらに歩みを速めた。
突然、後ろから下っ端の叫び声が響いた。
「探偵だ!探偵が来ている!船長に連絡を入れろ!」
あちこちで海賊たちが動揺し始める。俺たちは島の中心部へ進み、ついに被害者たちが収容されていると思われる大きな木造の倉庫を見つけた。
「ここだ...ここに雪が!!!」
俺は走り出し、倉庫の門を蹴り開けた。
「おい!あぶねえぞ!離れるな!」釜野が叫ぶが、もうそんな暇はない。
「きえええええええい!!」突然、空からバードリーの叫び声が響く。
俺が振り返る暇もなく、バードリーが嵐のように舞い降りてきた。
「羽爆弾!」
ヒューン、と鋼の羽が空を切り、倉庫の前で爆発が起きる。
「うぉおおああ!」
釜野や警察隊がその爆発に巻き込まれ、倒れ込んだ。
「クソ!釜野!!」
俺は叫び、バードリーに向き直った。
「よそ見するな!探偵!」
バードリーが転移魔法で俺の背後に現れ、鋼の羽を振りかざしてきた。
「は!?」
俺は咄嗟に振り向き、拳銃を振り下ろそうとしたが、バードリーの羽が猛烈なスピードで迫ってくる。
「殺す!」
バン!バン!バン!
三発の弾丸をバードリーの羽に打ち込んだが、全く効果がない。
「無駄だ、おれの羽は変幻自在にその効果を変えられる」
バードリーは冷笑を浮かべながら、さらに羽を振り下ろしてきた。
「悠!!今助ける!」
その時、コロウが叫んだが、俺はすでにバードリーとの戦闘に集中していた。
「貴様の相手はこの私だ!!!」
ジャックが忍者のように転移魔法でコロウの前に現れた。
「幹部がもう一人!!」
「奥義!忍仁砲!」
ジャックが両手から光線を放ち、コロウの両脚を切り裂いた。
「ぐうぅ!」
コロウの両脚が吹き飛び、切断される。
「おい!!じいさん!!!」
「ここまでか...!」
コロウは力尽き、うつ伏せになった。
「よくやった、ジャック!」
「元騎士団メンバーを討ち取ったぞ!!!」
ジャックが誇らしげに言う中、俺は激しい怒りに駆られた。
「よそ見すんなよ、ボケナスが」
バン!バン!
「無駄だと言っているのがわからんのか?」
俺はその言葉を無視し、バードリーの羽を掴んで、その先端をバードリーの手羽に突き刺した。
「ぐわああああああ!!なにいいい!!??」
血が流れ出し、バードリーは苦しみながらのたうち回った。
「やっぱな、お前の抜け落ちた毛も硬質化されるみてぇだな」
ジャックが叫びながら近づいてきた。
「探偵!貴様ああ!!」
その瞬間、倒れていたコロウがかろうじて猟銃を構えて、ジャックに一発を放った。
「まだ生きてたか!じじい!」
「貴様だけでも...!終わりだぁ!」
コロウは息を吐ききりながら、ジャックの心臓を狙い撃ち。
「バァン!」
「うぐ!」
ジャックがその場で倒れ、息絶えた。
「バカな!ジャック!!!!!!」
バードリーが叫びながら、さらに激しく暴れ始める。
「うらぁ!」
俺は冷徹にバードリーの胸に羽を突き刺した。
「ぐわあああああ!」
バードリーはその場に倒れ、のたうち回った。
「ま、待て!助けてくれ!!命だけは!」
「助けてくれだぁ?鳥、お前らは何百人もの助けてくれと懇願した人間を犠牲にしてきたじゃねぇか、地獄でその報いを受けろ」
「ぎゃあああああ!!」
「死ねぇ!」
俺はバードリーの頭部に羽を突き刺し、彼はそのまま息絶えた。
「これは...鍵か?」
バードリーの腰に、被害者たちを収容した牢屋のカギと思われる物がついていた。
俺はコロウの元へ駆け寄り、彼を抱きしめた。
「じいさん!!」
「ゆ、悠...お前は、早く人間たちのところへ行け...」
「見捨てられない!あぁ、血を止めないと!」
「わしはここで死ぬ...行くんだ...お前にかかっている、お前がエルフと人間の架け橋になるんだ...」
そう言うと、コロウは静かに息を引き取った。
「クソ...」
俺は釜野の元へと駆け寄り、彼を起こした。
「無事でよかった、掃けていた部下たちが集まりつつある、すぐに倉庫の中へ行くぞ、わかったら銃を構えろ」
釜野は立ち上がり、拳銃を装填した。
釜野と俺は、倉庫の扉を開けると、そこには想像を絶する光景が広がっていた。
「な...に...」
釜野の声が震えた。倉庫の中には、何十個もの大きなかごが置かれ、その中にボロボロの布を着せられた児童や女性が無数にいた。彼らは目を見開いてこちらを見ていたが、どこか虚ろで、光を失った目をしている。
「警察だ!助けに来た!!もう大丈夫だ!」
俺は声を張り上げるが、彼らは反応を示さない。じっと、無表情でこちらを見つめているだけだった。
「リンク!」
沖縄へと繋がったゲートが開き、そこから光が差し込む。被害者たちはその光に目を見張り、驚いた表情を浮かべるが、それでも動くことはない。
「は?何で沖縄なんだよ!」
釜野が疑問の声を上げるが、俺はすぐに答える。
「今関東に繋げたら、やばいだろ。海賊共と軍隊がドンぱちやりあってる!」
俺は急いでゲートの向こう側に目を向けた。沖縄の静かな海辺が広がっている。今、ここにいるべきではない。ここから脱出する必要がある。
「釜野!連れ出すぞ!手伝え!」
釜野は一瞬躊躇したが、すぐに頷いて銃を構える。俺たちは一つ一つ、檻の鍵を開け、被害者たちを外へ連れ出していった。
その時、微かな声が耳に届く。
「悠...?」
その声に振り向くと、最奥の檻に雪がいるのを見つけた。ボロボロの布を着て、泣いている雪がいた。目には涙がにじんでいる。
「雪?」
俺は駆け寄り、檻のドアを開けた。
「悠...うぅ...」
雪が顔を手で覆いながら、かすかな声を上げる。俺はその手を取ると、ぎゅっと抱きしめた。
「怖かったな...もう大丈夫...もう大丈夫だからな...」
雪はまだ震えているが、俺の腕の中で少しずつ安心したように見える。被害者たちは次々と外へ連れ出され、沖縄へと避難していった。
「みんな、もう大丈夫だ!」
俺たちは全員を助け出し、無事に異世界から脱出することに成功した。沖縄の海辺に立つと、少しずつ夜が明け、空が明るくなり始める。
雪を抱きしめたまま、俺は深いため息をついた。
「これで終わりか...」
だが、まだ終わりではない。俺の目の前には、まだ多くの課題が残されている。エルフと人間、そして異世界の問題を解決するためには、もっと多くの戦いが待っている。だが、今はただ、雪と一緒にいられる時間を大切にしたいと思った。