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第57話

カイラはサダベルの怒声が響く中で、必死にその力に立ち向かおうとしていた。


「お前らの相手は僕だ!」


その言葉が響き渡った瞬間、サダベルは冷ややかな笑みを浮かべ、指を鳴らすと、巨大なブレアスライムが地面を震わせながら現れた。その姿はまさに巨大な青い溶岩の塊、池袋の高層ビルをも超える圧倒的な大きさだった。


「きゃあああ!!!おいなんだあれええ!!」


池袋の市民たちが恐怖に駆られ、悲鳴を上げながらその巨体を見上げていた。スライムの溶岩がじゅうっと周囲の建物を溶かし始め、町が飲み込まれていく。


「サダベル!もう人間はありったけ攫った!もう好きにしてよい!じゃ、逃げるか…」


ティードが背を向け、余裕を見せるように言った。しかし、アレンの声がそれを遮った。


「逃がさない!」


アレンはその一言を放つと、目にも留まらぬ速さでサダベルの隣に転移した。サダベルは一瞬で動揺を見せたが、それでも冷徹に冷笑し、手を上げて言った。


「ブレアスライム、"墓場"だ。」


その瞬間、青い溶岩が池袋全域を覆い、関東地方全体がブレアスライムの溶岩に包まれていった。ブレアスライムの流れる溶岩で全てを無に還すというその必殺技は、言葉通り、東京を、そして関東全域を瞬く間に更地に変えた。


「これが、世界一の魔法使いの魔力か…」


カイラは必死にその魔力を感じ取りながらも、どこか冷静さを保っていた。だが、その目の前で都市が崩壊する光景に、心の中で諦めかける自分もいた。


「無理か、諦めよう。」


心の中でそうつぶやき、カイラはその重圧を感じた。しかし、そんな自分にカイラはすぐに言い聞かせるように、叫んだ。


「まぁ思ってないけどな。結界魔法!」


その瞬間、カイラは周囲に結界を張り、青い溶岩の進行を少しでも防ごうとした。結界魔法は、範囲によってその効力が変わる。だが、サダベルの圧倒的な魔力の前では、国内最高戦力のカイラでさえ、周囲2メートルの小さなバリアを張るのが精一杯だった。


「その結界で果たして防げるかな?さぁ放て!」


サダベルの挑戦的な言葉とともに、溶岩の雨がカイラを襲う。その圧倒的な力がカイラの結界を打ち破り、周囲の景色が焼け焦げていく。真夜中の都心で、命の叫び声が響き渡った。


「何とか防げたか…」


カイラは焦りながらも、冷静に溶岩の収縮を見守った。なんとかブレアスライムの溶岩が収束し、周囲は更地となっていたが、その先にはサダベルの残忍な笑みが待っていた。


「エスケープ!」


その瞬間、カイラの背後に突如現れたサダベルの手が彼を掴み、二人はどこかへ転移した。


ここで、カイラとサダベルが岡山に転移するシーンに続きます。


AM1時 岡山県 岡山駅前


新年の祝福に沸く岡山駅前広場で、人々が笑顔を交わしていたその瞬間。


「そぉら!」


サダベルの声が響き、突如として広場に現れた。彼は、カイラを力任せに放り投げた。カイラはその勢いでバスターミナルに吹っ飛び、痛々しくバスにめり込んだ。


「んぐ!」


カイラは激しい衝撃に思わず息を呑んだが、それでもすぐに立ち上がろうとする。その顔には怒りが滲み出ていた。


「クソが、やってくれたな、時代遅れのじじいが!」


カイラは歯を食いしばり、必死に反撃を誓った。サダベルにされるがままでいるわけにはいかない。その後ろで、市民たちがカメラを構え、彼らの壮絶な戦いを撮影し始める。


「お前、もう終わりだ。」


カイラは意気込んでサダベルに向かって駆け寄る。だが、その目の前でサダベルは余裕の表情を浮かべていた。


「あんたの首を持ってクライス王のとこ行かないと僕の隊長としての立場ないんだよ。おまえ、ここで自殺してくれてもいいんだぞ?」


カイラの冷徹な言葉がサダベルを挑発した。それでも、サダベルは全く動じることなく、カイラを見つめ返す。


「手間かけさせやがって、刺し殺してやる!」


カイラは一気に距離を詰め、剣を振りかざした。鋭い一閃がサダベルの腹部を切り上げた。


「まだまだぁ!」


サダベルはその剣を笑みを浮かべながら、軽々と受け流す。そして、すぐさまカイラの首を掴んだ。カイラは必死に腕を振り払おうとしたが、サダベルの力はそれを許さなかった。


「うおおお!」


カイラはサダベルの腕を無理やりへし折り、その瞬間、サダベルは悲鳴を上げる。カイラの剣はサダベルの体を何度も突き刺し、再び激しい攻撃を繰り返した。


「痛いか?貴様に焼かれた者たちはもっと痛かっただろうなぁ!」


カイラは怒りを込めてサダベルに剣を突き刺し続けるが、その度にサダベルは反撃を試みる。カイラの剣が突き刺さった瞬間、サダベルは一瞬で剣を折り、カイラを後方へ吹き飛ばした。


「僕の剣が…」


カイラはうろたえ、倒れ込む。剣が壊れてしまったのは予想外だったが、彼は冷静さを保ちながら、また立ち上がろうとする。


「痛い…」


サダベルは立ち上がったカイラに向かって、冷徹に言い放った。


「人間とはうっとうしいやつらだ。」


サダベルの言葉に、カイラもまたうなずくように言った。


「同感だね。」


その瞬間、サダベルは再び火炎魔法を放ち、周囲に爆発を引き起こした。カイラはその熱波を耐え抜きながらも、再びサダベルに向かって走り出す。


「お前は、私のフルパワーを出さなければ勝てなさそうだ。」


その言葉がカイラに冷徹に響いた。サダベルは再び、恐ろしい力を見せつけようとしていた。


「アーマード・ブレア!」


サダベルの体を取り囲む青い溶岩の鎧が現れる。その輝きは、まるで地球の破壊を示すかのように眩しく、熱気を帯びてメラメラと燃え上がっていた。


「これ、勝てるかなぁ…」


カイラはその圧倒的な力を前に、ただ冷静に考え込んだ。だが、少し考えた後、彼は決意を込めて言った。


「まぁやるだけやってみるか。」


その言葉とともに、カイラはもう一度、サダベルに向けて走り出す。だが、その目には、決して引き下がることはないという強い覚悟が宿っていた。


AM1時 沖縄 那覇空港


一方、沖縄ではアレンがティードを追い詰めていた。転移した先は海沿いの空港。すぐにティードは海面で暴れながら、アレンに向かってきた。


「動くな!オオカミ!」


アレンの叫びとともに、ティードはアレンを必死に捕まえようとする。アレンはその猛攻をかいくぐりながらも、何とかティードを掴み取った。


「掴んだぁ!」


ティードの暴れる力が強く、アレンを砂浜に投げ飛ばした。砂嵐が巻き起こり、アレンは地面に叩きつけられた。


「ガハハハ!貴様を殺してやる!待ってろ!」


ティードはそのまま海中から勢いよく跳ね上がり、アレンに向かって猛然と突進してきた。


「まずい…!」


アレンは即座に剣を抜き、立ち上がった。しかしその時、ティードの一撃がアレンを直撃し、空港に向かって吹き飛ばされた。


「空港が…爆発した!?」


アレンは苦しみながらも立ち上がり、再びティードに立ち向かう決意を固めた。その惨状を見た観光客たちは、驚愕し、必死に逃げ出す。

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