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第58話

那覇ホテル 1Fロビー


危険な状況を乗り越え、無事に被害者たちを救出した俺たちは、沖縄の某ホテルに避難させることにした。釜野が支配人に事情を説明し、どうにかかくまってもらうことができた。


「雪、大丈夫か?」

俺はロビーのソファに雪を座らせ、隣で見守る。


「ごめん、無理させてるよな…」


雪は力なく笑顔を見せたが、その表情に隠された痛みを感じ取った。

「ちゃんと助けに来てくれたから、大丈夫だよ!」


ドーン!外から爆発音が響き渡る。

釜野は驚きの声を上げ、近くの窓から外を見た。

「なんだ…今度は一体、何が起きてるんだ…」


雪は震える手で俺の腕をぎゅっと握った。

「大丈夫だよ、俺がいるから。」


釜野は静かに拳銃を構え、冷静に指示を出す。

「被害者たちを客室に避難させてもらえるか?」

スタッフは慌てながらも対応し、すぐに被害者たちをエレベーターに乗せて上階へと送り出した。


その時、ロビーを通りかかった小さな女の子が震えながら、低い声で言った。

「オオカミが、私たちを捕まえに来たんだ…」


それは不安を掻き立てる言葉だった。ティードたちは今、東京にいるはずだ。ここまで来るはずがない。

釜野は目を見開き、再度俺を見た。

「雪ちゃん、君も避難しよう。こっちへ!」


「あとで必ず迎えに行く。今は釜野の言う通りにして。」

雪は無言で頷き、スタッフに手を引かれてエレベーターに乗り込む。


釜野はすぐに立ち上がり、外を見に行くと言った。

「ちょっと外を見てくる。」


「だめだ、危険すぎる。」

俺は強く引き止めたが、釜野は軽く肩をすくめて答える。

「大丈夫だって、出入り口から顔を出して確認するだけだ。」


そう言って、釜野はホテルのロビーから外に出て行った。


数分後、雨に打たれながら戻ってきた釜野は、顔を険しくしていた。

「空港だ、間違いない。どうやら爆撃が起きてる。」


「ティードか?」

俺は一瞬だけ考え込む。


「いや、違うだろ。ティードが沖縄まで来るなんて。」


釜野は拳を握りしめ、深く息をついた。

「じゃあ、どうするんだ?」


「沖縄県警に連絡を取ってくれ。」

「まさか…行く気か?」


「当然だろ。真犯人が目の前にいるんだ。応援呼んで、即逮捕だ。」


釜野はしばらく黙っていたが、やがて、諦めたように頭を掻きながら携帯電話をかけ始めた。


20分後、沖縄県警の武装集団がロビーに到着した。

警察官はウージーサブマシンガンを携え、厳戒態勢で俺たちを取り囲んだ。

「で、作戦の方は?」

「作戦などない、とにかく撃ちまくれ。やつが倒れるまでだ。」


警察隊は不安げに顔を見合わせ、ひそひそと相談し始めた。

釜野は呆れた様子でため息をつく。

「やっぱりそうなるよな。」


「無理もないさ。だが、俺には世界を繋ぐ能力がある。もしもの時は、海の中にでも繋いで放水攻撃をかければいい。」

釜野はまたため息をつき、何も言わなかった。


那覇空港


アレンとティードの壮絶な戦いが繰り広げられていた。

アレンは剣を振りかざしてティードに突進する。

「遅い!」

ティードは冷静に散弾銃を構えて撃ち込む。

アレンはその銃弾をかわし、背後に回り込んでティードを切り上げた。


ティードは激痛に苦しみながら、後ろへ転がりながら反撃する。

「うおおあああ!!」


アレンは息を荒げながらも、ティードの首を切り落とし、散弾銃を手に取る。

「ふぅ、やったぞ、カイラ。これでティード海賊団は終わりだ。」


しかし、次の瞬間、ヴェンデッタが現れた。

「最奥呪法スピア」

アレンの首が切り落とされ、彼はその場に倒れた。


「な、なぜお前が…ここに…」

アレンは最後に言葉を漏らし、目を閉じた。


ヴェンデッタはティードの亡骸を抱え、再び転移していった。


アレンはそのまま命を落とし、静かに戦いの終焉を迎えた。



沖縄県警の隊員たちが空港に到着し、内部に入っていく。

「どうなってるんだ?」

アレンの死体を見つけた俺は、すぐに駆け寄った。

「ごめん、早く到着できれば、こんなことにはならなかったかもしれない…」


俺たちはアレンの亡骸を包み、沖縄県警の装甲車へと運び込んだ。

「こいつはカイラの友達だ。遺体はカイラに返す。」


「わかった。」

釜野は頷き、装甲車の中に遺体を安置した。

その後、俺たちは沖縄県警本部へ向かうことになった。

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