那覇ホテル 1Fロビー
危険な状況を乗り越え、無事に被害者たちを救出した俺たちは、沖縄の某ホテルに避難させることにした。釜野が支配人に事情を説明し、どうにかかくまってもらうことができた。
「雪、大丈夫か?」
俺はロビーのソファに雪を座らせ、隣で見守る。
「ごめん、無理させてるよな…」
雪は力なく笑顔を見せたが、その表情に隠された痛みを感じ取った。
「ちゃんと助けに来てくれたから、大丈夫だよ!」
ドーン!外から爆発音が響き渡る。
釜野は驚きの声を上げ、近くの窓から外を見た。
「なんだ…今度は一体、何が起きてるんだ…」
雪は震える手で俺の腕をぎゅっと握った。
「大丈夫だよ、俺がいるから。」
釜野は静かに拳銃を構え、冷静に指示を出す。
「被害者たちを客室に避難させてもらえるか?」
スタッフは慌てながらも対応し、すぐに被害者たちをエレベーターに乗せて上階へと送り出した。
その時、ロビーを通りかかった小さな女の子が震えながら、低い声で言った。
「オオカミが、私たちを捕まえに来たんだ…」
それは不安を掻き立てる言葉だった。ティードたちは今、東京にいるはずだ。ここまで来るはずがない。
釜野は目を見開き、再度俺を見た。
「雪ちゃん、君も避難しよう。こっちへ!」
「あとで必ず迎えに行く。今は釜野の言う通りにして。」
雪は無言で頷き、スタッフに手を引かれてエレベーターに乗り込む。
釜野はすぐに立ち上がり、外を見に行くと言った。
「ちょっと外を見てくる。」
「だめだ、危険すぎる。」
俺は強く引き止めたが、釜野は軽く肩をすくめて答える。
「大丈夫だって、出入り口から顔を出して確認するだけだ。」
そう言って、釜野はホテルのロビーから外に出て行った。
数分後、雨に打たれながら戻ってきた釜野は、顔を険しくしていた。
「空港だ、間違いない。どうやら爆撃が起きてる。」
「ティードか?」
俺は一瞬だけ考え込む。
「いや、違うだろ。ティードが沖縄まで来るなんて。」
釜野は拳を握りしめ、深く息をついた。
「じゃあ、どうするんだ?」
「沖縄県警に連絡を取ってくれ。」
「まさか…行く気か?」
「当然だろ。真犯人が目の前にいるんだ。応援呼んで、即逮捕だ。」
釜野はしばらく黙っていたが、やがて、諦めたように頭を掻きながら携帯電話をかけ始めた。
20分後、沖縄県警の武装集団がロビーに到着した。
警察官はウージーサブマシンガンを携え、厳戒態勢で俺たちを取り囲んだ。
「で、作戦の方は?」
「作戦などない、とにかく撃ちまくれ。やつが倒れるまでだ。」
警察隊は不安げに顔を見合わせ、ひそひそと相談し始めた。
釜野は呆れた様子でため息をつく。
「やっぱりそうなるよな。」
「無理もないさ。だが、俺には世界を繋ぐ能力がある。もしもの時は、海の中にでも繋いで放水攻撃をかければいい。」
釜野はまたため息をつき、何も言わなかった。
那覇空港
アレンとティードの壮絶な戦いが繰り広げられていた。
アレンは剣を振りかざしてティードに突進する。
「遅い!」
ティードは冷静に散弾銃を構えて撃ち込む。
アレンはその銃弾をかわし、背後に回り込んでティードを切り上げた。
ティードは激痛に苦しみながら、後ろへ転がりながら反撃する。
「うおおあああ!!」
アレンは息を荒げながらも、ティードの首を切り落とし、散弾銃を手に取る。
「ふぅ、やったぞ、カイラ。これでティード海賊団は終わりだ。」
しかし、次の瞬間、ヴェンデッタが現れた。
「最奥呪法スピア」
アレンの首が切り落とされ、彼はその場に倒れた。
「な、なぜお前が…ここに…」
アレンは最後に言葉を漏らし、目を閉じた。
ヴェンデッタはティードの亡骸を抱え、再び転移していった。
アレンはそのまま命を落とし、静かに戦いの終焉を迎えた。
沖縄県警の隊員たちが空港に到着し、内部に入っていく。
「どうなってるんだ?」
アレンの死体を見つけた俺は、すぐに駆け寄った。
「ごめん、早く到着できれば、こんなことにはならなかったかもしれない…」
俺たちはアレンの亡骸を包み、沖縄県警の装甲車へと運び込んだ。
「こいつはカイラの友達だ。遺体はカイラに返す。」
「わかった。」
釜野は頷き、装甲車の中に遺体を安置した。
その後、俺たちは沖縄県警本部へ向かうことになった。