那覇、ホテルの部屋。
ピピピピ!と目覚まし時計が鳴り響く。
「んー…」
「ほら、起きて!寝ぼすけ!」
雪が声をかける。
「わかってる…あと五分だけ…」
ふと、思い出す。
雪はもう大丈夫なんだ。
「どした?怖い夢でも見た?」
「いや、何でもないよ。」
二度と失わないように、守らなきゃ。
俺は強く念じた。
「久しぶりだな、探偵。」
声が響く。
目の前に現れたのは、あの時、重要参考人として捕らわれていた海賊団のグリスだ。
「なんで生きてる…石になったはずじゃ…」
「忘れたのか?俺は石化を逃れて、警察たちの記憶を改ざんし、逃げ延びた。」
そうだった、あの後何事もなかったかのようにみんな過ごしていたな。
「魔法って便利なんだな。でも、人の部屋に透明で居座るなんて悪趣味でしかないぞ。」
「話が終われば出ていく。」
雪が俺の袖を掴んで、震えている。
「大丈夫だよ。少し外してくれ、すぐ終わる。」
「うん、わかった…」
雪は部屋を出ていった。
「お前が助けたケッカイ島の人間たちはまだ出荷されていない。おそらく、ティードはまだ生きている。復帰したら真っ先に日本に攻め込んでくるだろう。」
「それに、今テレビをつけてみろ。」
「テレビ?」
「いいから。」
リモコンでテレビをつける。
「なんだよ…これ…」
ニュースが映し出される。
「狼野悠、エルフの手先として全国指名手配。」
俺が、指名手配!?
「どういう訳かお前はサダベルの仲間として追われている。おそらく、世界を繋げる能力を目の当たりにして、サダベルやティードを送り込んだ張本人として追われているらしいな。」
呆然としている俺を尻目に、グリスは言った。
「せいぜい生き延びろよ、探偵。」
そう言うと、姿を消した。
「悠?どうしたの…?」
雪が心配そうに部屋に戻ってきた。
どうする…?とにかく、今すぐ逃げないと。
「雪!!逃げ!」
ピンポーン!
部屋のインターホンが鳴り響く。
「雪、部屋の奥で待ってろ。」
恐る恐る覗き穴を見ると、そこには誰もいない。
「きゃあああ!」
部屋の奥で雪の悲鳴が聞こえ、俺はすぐに駆けつけた。
雪を拘束していたのは、パーカーを着たフードを被った数人の男たち。
「てめぇら動くなぁ!」
銃を構える。
「お前がな。」
ドン!
後頭部を銃で殴られ、俺は倒れ込んだ。
目を開けると、そこは事務所のような場所で、10人ほどの強面の男たちが立っていた。
手足を縛られ、身動きが取れない。
「クソ…ここは…」
中央の椅子に腰掛けたサングラスの男が口を開いた。
「起きたか、探偵さん。」
「なにもんだよ…あんたら。」
「俺たちはロシアンマフィア スカー、俺はそのボス、ザックだ。」
ロシアンマフィア…?どういうことだ、まさか…ここは。
「ここは…どこなんだ…」
「言いそびれていたな、ここはロシアの孤島、カリ島だ。」
「安心しろ、お前さんの彼女には一切乱暴してない。ただ彼女を返してほしけりゃ俺たちに協力してもらう。」
「何が目的だ…?」
「異世界に攫われた俺の娘を取り返す。」
「おらぁ、戦争したいんだよ、エルフたちを皆殺しにしてやるんだ。」
フフっと鼻で笑い、そう言った。
「銃と魔法ってさ、どっちが強いと思うか?」