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第60話

那覇、ホテルの部屋。


ピピピピ!と目覚まし時計が鳴り響く。


「んー…」


「ほら、起きて!寝ぼすけ!」


雪が声をかける。


「わかってる…あと五分だけ…」


ふと、思い出す。


雪はもう大丈夫なんだ。


「どした?怖い夢でも見た?」


「いや、何でもないよ。」


二度と失わないように、守らなきゃ。


俺は強く念じた。


「久しぶりだな、探偵。」


声が響く。


目の前に現れたのは、あの時、重要参考人として捕らわれていた海賊団のグリスだ。


「なんで生きてる…石になったはずじゃ…」


「忘れたのか?俺は石化を逃れて、警察たちの記憶を改ざんし、逃げ延びた。」


そうだった、あの後何事もなかったかのようにみんな過ごしていたな。


「魔法って便利なんだな。でも、人の部屋に透明で居座るなんて悪趣味でしかないぞ。」


「話が終われば出ていく。」


雪が俺の袖を掴んで、震えている。


「大丈夫だよ。少し外してくれ、すぐ終わる。」


「うん、わかった…」


雪は部屋を出ていった。


「お前が助けたケッカイ島の人間たちはまだ出荷されていない。おそらく、ティードはまだ生きている。復帰したら真っ先に日本に攻め込んでくるだろう。」


「それに、今テレビをつけてみろ。」


「テレビ?」


「いいから。」


リモコンでテレビをつける。


「なんだよ…これ…」


ニュースが映し出される。


「狼野悠、エルフの手先として全国指名手配。」


俺が、指名手配!?


「どういう訳かお前はサダベルの仲間として追われている。おそらく、世界を繋げる能力を目の当たりにして、サダベルやティードを送り込んだ張本人として追われているらしいな。」


呆然としている俺を尻目に、グリスは言った。


「せいぜい生き延びろよ、探偵。」


そう言うと、姿を消した。


「悠?どうしたの…?」


雪が心配そうに部屋に戻ってきた。


どうする…?とにかく、今すぐ逃げないと。


「雪!!逃げ!」


ピンポーン!


部屋のインターホンが鳴り響く。


「雪、部屋の奥で待ってろ。」


恐る恐る覗き穴を見ると、そこには誰もいない。


「きゃあああ!」


部屋の奥で雪の悲鳴が聞こえ、俺はすぐに駆けつけた。


雪を拘束していたのは、パーカーを着たフードを被った数人の男たち。


「てめぇら動くなぁ!」


銃を構える。


「お前がな。」


ドン!


後頭部を銃で殴られ、俺は倒れ込んだ。


目を開けると、そこは事務所のような場所で、10人ほどの強面の男たちが立っていた。


手足を縛られ、身動きが取れない。


「クソ…ここは…」


中央の椅子に腰掛けたサングラスの男が口を開いた。


「起きたか、探偵さん。」


「なにもんだよ…あんたら。」


「俺たちはロシアンマフィア スカー、俺はそのボス、ザックだ。」


ロシアンマフィア…?どういうことだ、まさか…ここは。


「ここは…どこなんだ…」


「言いそびれていたな、ここはロシアの孤島、カリ島だ。」


「安心しろ、お前さんの彼女には一切乱暴してない。ただ彼女を返してほしけりゃ俺たちに協力してもらう。」


「何が目的だ…?」


「異世界に攫われた俺の娘を取り返す。」


「おらぁ、戦争したいんだよ、エルフたちを皆殺しにしてやるんだ。」


フフっと鼻で笑い、そう言った。


「銃と魔法ってさ、どっちが強いと思うか?」

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