クライス王、メント、そしてクリスはサダベルの報告を受けて、アルタイル王国へと帰還した。しかし、すでにその時は遅かった。
「それで、ティードはまだ生きているのか?」
クライスは玉座に座り、足を動かしながらイライラと問いかけた。
「ええ、仕留め損ねました。」
カイラは無表情で答えた。
「陛下、お言葉ですが、これはカイラの責任ではありません。」
クリスが続ける。「ダグもアレンも殺され、しかも相手は極悪海賊に世界一の魔法使いです。」
「わかっている。」
クライスは低く、力なく答えた。「遅れてしまった私にも責任がある。」
その時、突然の痛みが走った。
「は?」
カイラが目を見開いた。
クリスが激しくうめいた。
「ぐぅ...貴様...!」
彼の体が急に後ろへと崩れ、背中を深く刺したのはメントの杖だった。
血が吹き出し、クリスはその場に倒れた。
「いやああああ!!」
カノンが駆け寄り、血を押さえようと必死に手を当てた。
「貴様ぁ!」
クライスは目を見開き、剣を握りしめて立ち上がった。その音は、王宮に響き渡った。
「いつから裏切っていた!」
クライスの声は怒声となった。
メントは冷徹に答えた。
「ずっと前さ。」
メントがそう言い終わると、窓が突然割れ、赤い鎧を着た兵士たちが数十人も王宮に侵入してきた。
「その赤い鎧...貴様ら魔国の者だな?」
クライスの声には驚きと怒りが込められていた。
「そうだ、魔国ジーンだ。」
メントが不敵に笑った。「ティード海賊団がピンチだとなれば、我々も黙って見ているわけにはいかない。」
「クソが...」
クリスは朦朧とした意識で呟いた。 「毒が強すぎる...」
カノンは涙をこぼしながら、彼の頬を手で支えた。
「いやだ...死なないで...」
彼女は泣きながら言った。
「カノン、ごめんな。」
クリスの声はかすれていた。「一緒に居てやれなくて...お前はもう兵士を辞めて、静かに暮らせ。長生きしてくれ...それが...おれの...願い...」
その言葉を最後に、クリスは動かなくなった。