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第61話

クライス王、メント、そしてクリスはサダベルの報告を受けて、アルタイル王国へと帰還した。しかし、すでにその時は遅かった。


「それで、ティードはまだ生きているのか?」

クライスは玉座に座り、足を動かしながらイライラと問いかけた。


「ええ、仕留め損ねました。」

カイラは無表情で答えた。


「陛下、お言葉ですが、これはカイラの責任ではありません。」

クリスが続ける。「ダグもアレンも殺され、しかも相手は極悪海賊に世界一の魔法使いです。」


「わかっている。」

クライスは低く、力なく答えた。「遅れてしまった私にも責任がある。」


その時、突然の痛みが走った。

「は?」

カイラが目を見開いた。


クリスが激しくうめいた。

「ぐぅ...貴様...!」

彼の体が急に後ろへと崩れ、背中を深く刺したのはメントの杖だった。


血が吹き出し、クリスはその場に倒れた。

「いやああああ!!」

カノンが駆け寄り、血を押さえようと必死に手を当てた。


「貴様ぁ!」

クライスは目を見開き、剣を握りしめて立ち上がった。その音は、王宮に響き渡った。


「いつから裏切っていた!」

クライスの声は怒声となった。


メントは冷徹に答えた。

「ずっと前さ。」

メントがそう言い終わると、窓が突然割れ、赤い鎧を着た兵士たちが数十人も王宮に侵入してきた。


「その赤い鎧...貴様ら魔国の者だな?」

クライスの声には驚きと怒りが込められていた。


「そうだ、魔国ジーンだ。」

メントが不敵に笑った。「ティード海賊団がピンチだとなれば、我々も黙って見ているわけにはいかない。」


「クソが...」

クリスは朦朧とした意識で呟いた。 「毒が強すぎる...」


カノンは涙をこぼしながら、彼の頬を手で支えた。

「いやだ...死なないで...」

彼女は泣きながら言った。


「カノン、ごめんな。」

クリスの声はかすれていた。「一緒に居てやれなくて...お前はもう兵士を辞めて、静かに暮らせ。長生きしてくれ...それが...おれの...願い...」


その言葉を最後に、クリスは動かなくなった。

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