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第73話

「貴様が……母を殺した、憎むべき悪魔……!」


カイラの声が怒りに震える。魔王は、その憎悪を真正面から浴びながらも、ヘラヘラと唇を歪め、薄ら笑いを浮かべたまま彼女を見つめていた。


「召喚術——リヴァイアサン、イカリ、フレイム、サイクロン、ダイス!」


その瞬間、カイラの周囲が白く眩く輝き始める。空が一気に黒く染まり、大地は唸るように轟いた。


「全部の神様か!?」悠が思わず声を上げた。

カイラは自らが契約したすべての神々を、この場に召喚しようとしていた。


空が裂け、次々と神々が舞い降りる。雷と炎、氷と風、古代の力が混ざり合い、現世に降臨するその様は、まるで天地開闢の光景だった。


カイラは冷たく命じる。「撃ち落とせ。奥義エンド


無数の神々が、細く鋭利な光線を放ち、一斉に魔王へと浴びせた。


異世界における魔法光線は、細ければ細いほど威力が増すという特性を持つ。そしてこの《エンド光線》は、必中必殺。受けた者は確実に死に至る——細く鋭いそれは、文字通りこの世で最強の攻撃手段と呼ばれていた。


「ぎゃああああああああああああ!!!!」


魔王が絶叫し、身をよじらせ、のたうつ。


「今だ!デジャヴ総員、総攻撃を仕掛けろ!」


カイラの号令と同時に、仲間たちが次々と飛び出した。


「よっしゃきたーッ!」

エリーが拳を構え、地を蹴って一直線に魔王へと殴りかかる。


「強化魔法、バースト! おらぁっ!」

ギャバットは咆哮を上げ、巨大な鉄槌を振り下ろした。


「ふぅん……!」

クライスもまた剣を構えて駆けつけ、鋭い斬撃を繰り出す。


「久しぶりだな……決着をつけよう」


魔王は苦悶の叫びを上げ、全身から黒煙を吹き上げた。


「なんかわからんけど、いいぞ。これで魔王は死ぬ!」悠がそう呟いたそのとき——


突然、空間が歪んだ。


「やってくれるな、最強の戦力……火炎魔法!」


転移してきたのは、白衣を纏った一人の男。メントと名乗ったその男は、医者の風貌をしていたが、明らかにただの人間ではなかった。彼が放った火球は、カイラの胸元に直撃する——が、煙の中から彼女が無傷で現れる。


「……お前、誰だよ」


「ただ医者の皮を被っただけの魔族さ」メントはニヤリと口角を吊り上げた。


カイラは鋭く睨んだ。「で? 何の計算もなしに出てきたわけじゃないだろ?」


「君の父親はクライス王だ」

メントは不意に、言葉の刃を放った。


その一言に、カイラの動きが一瞬止まる。その刹那の隙を見逃さず——


「グランド! タイムトラベルだぁあああ!!!」

瀕死の魔王が最後の力を振り絞り、笑いながら詠唱を始める。


「げへへ……ぐがげげがぐげ!」


カイラの目の前に巨大なゲートが出現した。その先に広がっていたのは、視界のすべてを覆い尽くす、暴風の吹き荒れる謎の空間だった。


奥義トルネード!」

メントが再び詠唱し、猛烈な突風が吹き上がる。


「オイ、まじか……くそっ!」


風に押されるようにして、カイラの体がゲートへと吸い込まれていく。


「カイラッ!!」ギャバットが叫ぶ。


振り返ったカイラは、必死に手を伸ばしながら叫んだ。「ギャバット! あとは頼む!」


その声を最後に、彼女の姿はゲートの奥へと消えていった。


「カイラァァァァァァァアアアアアアア!!!」

クライスが絶叫し、怒りと悲しみをそのまま剣に叩き込む。


「貴様ァアアアアアアア!!」

瀕死の魔王に向かって、剣を振り上げ、ザクッ! ザクッ! と何度も眼球を突き刺した。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

最後の咆哮とともに、剣をその首に突き立て——斬り裂いた。


魔王は絶命し、長き因縁は、血の中で静かに終焉を迎えた。

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