京都の街を覆う静寂は、すでに過去のものだった。メントとヴェンデッタが操る数百体の骸骨兵が市民を無差別に襲い、混沌が支配する地獄絵図が広がっていた。
その中、クライスが叫ぶ。「デジャヴ!人間を守れ!」
仲間たちは一瞬、耳を疑ったように顔を見合わせた。ギャバットが驚きに声を上げる。「人間を!? クライス王、どうしてしまったのですか!」
エリーも同調するように続けた。「そうっすよ!人間を守るなんて!」
クライスは静かに、自らの剣を地に突き立てた。その瞳には迷いのない決意が宿っていた。
「もう終わりにしよう。我々が間違っていたのだ。……今でも夢にルーシェが出る。そしてこう言うのだ。『人間を守って』、ってな」
その言葉は空気を震わせるように響いた。
「ずっと考えていた。これがエルフの在り方なのかと。ロイスの“人間の尊厳を取り戻す計画”を知り、これはやり直せるチャンスなのではないかと思った」
ハンドルが口元に手を当て、低くつぶやいた。「クライス王……」
「贖罪の前にまず、この地の人間を守る! お前たちの力を貸してくれ!」
即座に、全員の声が重なった。「ハイ!」
ヴェンデッタの口元に冷笑が浮かぶ。「これがあなたの下した決断なのね。でも私たちに敵うと思わないことね。
空気が凍り、鋭利な氷の槍が群れをなして放たれる。
その直後、氷の壁が立ち上がった。白銀の壁が凍てつく刃を受け止める。
ロイスが転移してきたのだった。「
ヴェンデッタは眉をひそめる。「しつこいね、嫌われるよ? 魔法使いさん」
ロイスは肩をすくめ、皮肉を込めた声で応じた。「しつこいのはそっちでしょう。どこまで“滅亡”に真面目なのよ」
「魔女の相手は任せて! あなたたちはこの“偽物”を!」
ロイスの言葉に背中を預けるように、クライスたちはメントを包囲する。
「貴様、もう逃げ場などないぞ。降伏するか?」
メントは静かに首を振った。「誰が逃げたと? この世界は、私が壊してやる」
そして、光の奔流がクライスに向けて放たれる。
「私の魔法は魔力を消費しビームを放つ!」
剣がうなりを上げ、クライスが斬り裂く。「ふぅん!!」
ビームは空を裂き、地を焼いた。だが、それを迎え撃った剣は光すら斬った。
その時、低空でヒューンという音が轟く。自衛隊の軍用ヘリが何隻も到着し、上空から援護射撃を始めた。
ビルの陰から釜野が姿を現す。手にはAKライフル。骸骨兵に狙いを定めた。
「動くな!!」
引き金を引き、銃弾が骸骨兵を砕く。
「……あいつが頑張ってるのに、いつまでも待っておくわけにいかん!」
破壊されたビルの残骸を縫うように、一人の男が静かに歩いていた。深くフードをかぶったその男は、崩れた窓辺に立ち、ゆっくりとスナイパーライフルを構える。
「久しいね、悠くん……君を殺せる好機を、逃すわけにいかないよ」
名取だった。