ついにティードたちは、仲間を解放した末に京都の地へと足を踏み入れた。
「メントとヴェンデッタを探して殺せ。ただし、ヴェンデッタだけは生かして俺の前に連れてこい。この手で直々に始末してやる」
命令を下すティードの声は、冷酷で揺るぎなかった。
「おいおい、待ってくれよ船長!」と、モンキーヘッドが不安げに口を開く。「こんな危ねぇ戦場で、俺たちまで動かす気かよ!」
しかし、ティードは容赦なく一喝した。
「黙れ。貴様らは弱小海賊だ。俺の指示に従え」
その言葉に、仲間たちは沈黙するしかなかった。
「もう時間がない。新惑星を支配するのは、メントじゃない。この俺様だ」
その時だった。突如、ビルの影から自衛隊が姿を現し、銃口を一斉にこちらへ向ける。
「目標確認!撃てええええええ!!」
ズドドドドドドッ!
轟音と共に、M4の連射音がティードたちを襲った。
「ロックバリア!」
ロックがとっさに地面から岩を隆起させ、厚い壁を形成する。銃弾が岩に跳ね返り、チンチンと音を立てた。
ティードはその様子を睨みつけ、唸り声を上げる。「来やがったな、自衛隊……!」
その瞬間、彼の身体が獣のように膨張し、毛が逆立つ。牙が剥き出しになり、目が血走った。
「ぐおおああああ!!」
咆哮と共に、ティードは両手に構えたダブルバレルショットガンをぶっ放し、敵兵を吹き飛ばしながら突撃した。
その混乱の中、一機の軍用ヘリコプターが空を割って近づいてくる。
「見つけたぞ……エルフ共……支配者はお前らじゃない。この俺だ!!」
そう叫んだのはイザ。ヘリのハッチから顔を出し、次の瞬間、ミサイルを発射した。
ズドォン!
爆炎がティードたちの足元を包んだが、再びロックのバリアがそれを阻む。
「また魔法か」とイザが悪態を吐く。
ティードの表情が歪んだ。「鬱陶しい人間共だ」
彼は地面に拳を叩きつけ、唸るように呟く。
「最奥魔法――デビルズ」
次の瞬間、大地が爆発するように揺れ、辺り一帯が火と煙に包まれた。自衛隊の兵士たちも、ヘリコプターごと吹き飛ばされる。
「うおああ!!」
イザの叫びと共に、ヘリは炎に包まれ、火球となって墜落した。
瓦礫に押し潰されたイザは、もはやまともに動くこともできず、焼け焦げた半身で呻くばかりだった。
その横を、重々しい足音がゆっくりと近づいてくる。
「バカが……!」
イザは最後の力を振り絞り、腰からウージーを引き抜いた。そして、ティードに向けて引き金を絞る。
ズドドドドド!!
無数の弾丸がティードの胸を貫く――はずだった。
「かすり傷だ」
ティードは血を流していたが、致命傷には程遠い。イザの顔から笑みが消える。
「……はぁ、はぁ……ち、畜生……!」
ティードは剣を抜き、躊躇なくその刃を振り下ろした。
「ちっくしょおおおおおおおお!!!!!!」
スパン――イザの首が宙を舞い、命の灯火が消えた。
その直後、ウッドマンが空を仰ぎ、唸り声を上げる。
「グルルルル……」
「どうした?」
ティードが問いかけたその時、空中にワームホールが現れた。次の瞬間、中から血まみれの女が飛び出してくる。
「やっと戻ってこれた……」
それは、ボロボロの服と裂けた袖、血に濡れた肌のカイラだった。
「なに……?」
「不思議そうな顔だな、海賊」
ティードの眉が跳ね上がる。「どうやって戻ってきた?」
「方法は一つしかないだろう」
「馬鹿な……転移先でタイムトラベルを……!?」
言葉を失うティードを前に、カイラは何の前触れもなく地を踏みしめ、モンキーヘッドを粉砕した。
「せ、せんちょおおおおおお!!」
悲鳴と共に、モンキーヘッドの命は潰えた。
「貴様ぁッ!」
怒りに任せて放たれた二発の銃弾が、カイラの肩をかすめる。
「燃えろよ」
冷ややかに呟いたカイラが、火炎魔法をウッドマンに叩きつけた。木の巨体が燃え上がり、絶叫が響く。
「ぐあああああ!!!!!」
ティードは歯噛みしながら叫んだ。「ロック! 撤退だ! 奴には敵わない!!」
そのまま、彼とロックの姿が光に包まれて消える。
残されたカイラは、焼け焦げた瓦礫の中を見渡し、小さく呟いた。
「……みんなを探さないとな」