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第80話

 ついにティードたちは、仲間を解放した末に京都の地へと足を踏み入れた。


 「メントとヴェンデッタを探して殺せ。ただし、ヴェンデッタだけは生かして俺の前に連れてこい。この手で直々に始末してやる」


 命令を下すティードの声は、冷酷で揺るぎなかった。


 「おいおい、待ってくれよ船長!」と、モンキーヘッドが不安げに口を開く。「こんな危ねぇ戦場で、俺たちまで動かす気かよ!」


 しかし、ティードは容赦なく一喝した。


 「黙れ。貴様らは弱小海賊だ。俺の指示に従え」


 その言葉に、仲間たちは沈黙するしかなかった。


 「もう時間がない。新惑星を支配するのは、メントじゃない。この俺様だ」


 その時だった。突如、ビルの影から自衛隊が姿を現し、銃口を一斉にこちらへ向ける。


 「目標確認!撃てええええええ!!」


 ズドドドドドドッ!


 轟音と共に、M4の連射音がティードたちを襲った。


 「ロックバリア!」


 ロックがとっさに地面から岩を隆起させ、厚い壁を形成する。銃弾が岩に跳ね返り、チンチンと音を立てた。


 ティードはその様子を睨みつけ、唸り声を上げる。「来やがったな、自衛隊……!」


 その瞬間、彼の身体が獣のように膨張し、毛が逆立つ。牙が剥き出しになり、目が血走った。


 「ぐおおああああ!!」


 咆哮と共に、ティードは両手に構えたダブルバレルショットガンをぶっ放し、敵兵を吹き飛ばしながら突撃した。


 その混乱の中、一機の軍用ヘリコプターが空を割って近づいてくる。


 「見つけたぞ……エルフ共……支配者はお前らじゃない。この俺だ!!」


 そう叫んだのはイザ。ヘリのハッチから顔を出し、次の瞬間、ミサイルを発射した。


 ズドォン!


 爆炎がティードたちの足元を包んだが、再びロックのバリアがそれを阻む。


 「また魔法か」とイザが悪態を吐く。


 ティードの表情が歪んだ。「鬱陶しい人間共だ」


 彼は地面に拳を叩きつけ、唸るように呟く。


 「最奥魔法――デビルズ」


 次の瞬間、大地が爆発するように揺れ、辺り一帯が火と煙に包まれた。自衛隊の兵士たちも、ヘリコプターごと吹き飛ばされる。


 「うおああ!!」


 イザの叫びと共に、ヘリは炎に包まれ、火球となって墜落した。


 瓦礫に押し潰されたイザは、もはやまともに動くこともできず、焼け焦げた半身で呻くばかりだった。


 その横を、重々しい足音がゆっくりと近づいてくる。


 「バカが……!」


 イザは最後の力を振り絞り、腰からウージーを引き抜いた。そして、ティードに向けて引き金を絞る。


 ズドドドドド!!


 無数の弾丸がティードの胸を貫く――はずだった。


 「かすり傷だ」


 ティードは血を流していたが、致命傷には程遠い。イザの顔から笑みが消える。


 「……はぁ、はぁ……ち、畜生……!」


 ティードは剣を抜き、躊躇なくその刃を振り下ろした。


 「ちっくしょおおおおおおおお!!!!!!」


 スパン――イザの首が宙を舞い、命の灯火が消えた。


 その直後、ウッドマンが空を仰ぎ、唸り声を上げる。


 「グルルルル……」


 「どうした?」


 ティードが問いかけたその時、空中にワームホールが現れた。次の瞬間、中から血まみれの女が飛び出してくる。


 「やっと戻ってこれた……」


 それは、ボロボロの服と裂けた袖、血に濡れた肌のカイラだった。


 「なに……?」


 「不思議そうな顔だな、海賊」


 ティードの眉が跳ね上がる。「どうやって戻ってきた?」


 「方法は一つしかないだろう」


 「馬鹿な……転移先でタイムトラベルを……!?」


 言葉を失うティードを前に、カイラは何の前触れもなく地を踏みしめ、モンキーヘッドを粉砕した。


 「せ、せんちょおおおおおお!!」


 悲鳴と共に、モンキーヘッドの命は潰えた。


 「貴様ぁッ!」


 怒りに任せて放たれた二発の銃弾が、カイラの肩をかすめる。


 「燃えろよ」


 冷ややかに呟いたカイラが、火炎魔法をウッドマンに叩きつけた。木の巨体が燃え上がり、絶叫が響く。


 「ぐあああああ!!!!!」


 ティードは歯噛みしながら叫んだ。「ロック! 撤退だ! 奴には敵わない!!」


 そのまま、彼とロックの姿が光に包まれて消える。


 残されたカイラは、焼け焦げた瓦礫の中を見渡し、小さく呟いた。


 「……みんなを探さないとな」

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