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第82話

 ロイスの叫び声が響く。


 「最奥魔法! スノーマン!」


 その瞬間、雪と氷で形作られた巨人の魔獣がヴェンデッタに向かって突進を開始する。氷の足音が地面を揺らし、巨大な影がヴェンデッタを飲み込もうとしていた。


 「真っ二つにしてあげる! 最奥呪法スピア!」


 ヴェンデッタが叫ぶと、空間が歪み、光の槍がスピアとして現れる。その槍が空を裂いて雪の巨人を貫こうとする。


 「させるか!」


 突如、空から現れたカイラがその槍をかき消すように飛び込み、ヴェンデッタの腹部を一閃、真っ二つにした。


 「な……!?」


 ヴェンデッタは信じられないといった顔で、腹から流れる血を見つめる。傷口から溢れ出る血が冷気の中で蒸発していく。


 「これはアレンの分だ」

 カイラの言葉に、無言で頷くクライス。アレンを倒したヴェンデッタが、ついにその報いを受けた瞬間だった。


 「ふん…まずいな…」


 ヴェンデッタは歯を食いしばり、表情を歪めながらその場を離れようとする。だが、追い詰められているのはヴェンデッタだけではなかった。


 「見つけたぁ! メントぉ!」

 ロックの怒声と共に、岩のような巨人が足音を立てて近づいてきた。ドシドシと地面を揺らしながら、彼は自衛隊を無双するように倒しつつ、メントを追いかけていた。


 「こっちだ、クソ野郎!」


 悠がビルの陰から奪った斧を強く投げ、ロックめがけて放った。斧は空気を裂いて飛び、ロックに迫る。


 「探偵!」


 クライスが後ろから声を上げる。


 「こっちは任せろ! メントを追え!」

 クライスは言葉を続けると、すぐに走り去った。メントの後を追いかけ、悠が一瞬その姿を見失う。


 ロックは悠を見てにやりと笑った。


 「お前が探偵か? ここで殺してやるぜ!」


 ロックはモシンナガンを奪うと、悠の眼球を狙い、一発放った。銃声が響く。


 「バン!」


 だが、ロックは無駄に終わることを知っていた。


 「残念、俺は岩石魔法の使い手だ。目を岩のように固くすることもできるんだよ!」


 悠は思わず呆れた。


 「目の強度を強化できんのかよ! 厄介だな」


 そのとき、空からカイラが叫ぶ。


 「じゃあ、俺が何とかする!」


 カイラは一気に空中へ飛び上がり、剣を振りかぶると、ロックの頭上を狙って振り下ろした。激しい音を立てて、鋼の刃がロックの頭部を貫き、岩のように硬い皮膚を切り裂いていった。


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