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第85話

現代 アルタイル王国 スモーク山山頂墓地


 現代では、メントの遺体を墓に還す作業が行われていた。クライスたち、そしてデジャヴはその作業に徹していた。


 「そぉら!」

 ギャバットはシャベルを力強く振るい、土を豪快に掘り起こす。


 「これで、やっと終わったんだね。」

 カイラが静かに言うと、クライスが頷く。


 「あぁ、やっとな。」

 クライスは少し疲れた様子で肩をすくめる。


 「早く手伝ってくださいよぉ!」

 エリーはサボり気味のクライスたちに声をかけ、急かす。


 「ほぇぇ、つっかれたぁ…」

 ハンドルはシャベルを地面に置き、背伸びをしながら一息ついたその瞬間。


 バキ!


 突然、メントが入っていた棺桶から手が突き破ってきた。

 クライスは瞬時に剣を抜き、構えた。


 バキバキ!

 棺桶の木材が破れ、メントがそこから無理矢理這い出してきた。


 「私が生きていることに驚いてるようだな。」

 メントが低い声で笑う。


 「な、なんで…?」

 ハンドルは呆然とし、目を見開いてメントを見つめる。


 「私の体得していた禁忌魔法には、蘇生術がある。」

 メントが笑みを浮かべながら続ける。「死ぬ直前に全ての魔力をそこに込めることによって、数日後に見事に蘇る禁忌魔法だ。」


 「ば、馬鹿な…!」

 クライスが声を上げ、剣を構え直す。


 「ふははぁ!そしてこれで復讐の戦争をはじめることができる…!!」

 メントの目に狂気が宿る。


 「おれが貴様を葬る…!」

 クライスの声は冷徹で、怒りをにじませながら言った。


 「雷魔法!ライデン!」

 メントが杖を振るい、雷を放つ。


 「させるかぁ!ハンドル!」

 ギャバットが叫び、鉄槌を振るうも、メントの姿は無傷のままだ。


 「化け物め…!」

 ギャバットは歯を食いしばって呻く。


 「水魔法!ショット!」

 ハンドルはクロスボウガンを構え、矢の先に水魔法を込めて放つ。しかし、矢は反射し、跳ね返ってしまう。


 ドカン!

 メントの雷が、エリーに直撃し、激しく炸裂する。


 「強化魔法!」

 エリーは体術を強化し、雷を素早く回避する。


 「はぁ!」

 クライスが一気に駆け、杖と剣の攻防戦が繰り広げられた。


 「お供する!」

 カイラも剣を抜き、クライスと共にメントの杖に斬りかかる。


 「氷結魔法 エイジ!」

 メントが呪文を唱えると、その瞬間、クライスたちは一斉に氷結魔法で凍りついてしまった。


 「貴様らでは私には勝てんよ、このまま氷ごと粉砕してやる!」

 メントは得意げに言い放ち、爆発魔法を放とうとしたその瞬間。


 「火炎魔法 ボルケーノ!」

 空からロイスが現れ、火炎魔法で氷を溶かす。カイラたちは自由を取り戻す。


 「ほう、火炎魔法で溶かすか。」

 メントはその状況に驚きつつ、空高く舞い上がった。


 「ロイス!感謝する!」

 クライスは息を切らしながら、ロイスに感謝の言葉を送る。


 「もういい、このまま終わりにしてやる。」

 メントは飛行魔法で空へと飛び立ち、杖をクライスたちに向けて構える。


 「最奥魔法 バッド!」

 メントは杖に全魔力を込め、その魔法を放とうとしていた。


 「彼を止めないと!彼の魔力量だと、王都、いや…この国が滅びる!」

 ロイスが焦りながら叫ぶ。


 「魔力を溜めている状態で岩石魔法で体を覆っている!全員の最奥魔法で奴の奥義を食い止める!これしかない!」

 クライスが冷静に指示を出す。


 「総員!武器を奴に向けよ!」

 クライスが命令を下すと、全員が一斉に武器を構える。


 「最奥魔法!ホワイトショット!」

 全員の武器が白く光り始め、最奥魔法が放たれる。


 「これで…終わりだぁ!!!!」

 メントの杖から黒いビームが放たれる。対するクライスたちの光線がぶつかり、その衝撃で空の雲が一気に消え去った。


 「うおおおおお!!いけえええ!!!」

 クライスが叫び、ビームがメントの黒いビームを突き破る。


 「馬鹿なぁ!!!!ぐわぁあああああ!!!!!!」

 メントは最後の叫びを上げ、ビームにさらされると、身体ごと消滅していった。


 「やっと…終わった…のか…!」

 クライスが息を整え、呟く。


 「ええ、そのようですね…!」

 カイラが静かに答え、クライスの肩に手を置いた。


 クライスたちは安堵の表情を浮かべ、肩を抱き合って立ち尽くしていた。

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