千紗は倉庫で手に入れた証拠と、耳にした密談の内容を基に、宮廷内での陰謀が皇帝セイラスの命を狙ったものだと確信した。計画が実行されれば、帝国は混乱に陥り、宮廷は崩壊するだろう。彼女はこの危機を回避するため、行動に出る決意を固めた。
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皇帝への報告
翌朝、千紗は早速、皇帝セイラスへの報告を求めた。皇帝の執務室に通されると、彼女は深く頭を下げた後、懐から取り出した証拠を机に広げた。
「陛下、これをご覧ください。これは倉庫で見つけた武器や文書です。そしてこの地図には、宮廷内の重要な部屋が記されています。」
セイラスは千紗の言葉を聞きながら、慎重に証拠を確認した。特に、彼の執務室が赤い印でマークされていることに目を留め、険しい表情を浮かべた。
「この地図が示すのは……暗殺計画だな。」セイラスは低い声で呟いた。
千紗は深く頷いた。「はい。カール侯爵を中心とした反逆者たちが、陛下の命を狙っています。具体的な日時までは分かりませんが、彼らが近々動き出すのは間違いありません。」
セイラスはしばらく沈黙して考え込んだ後、千紗を見つめた。「この証拠をどのように手に入れたのだ?」
千紗は倉庫での出来事を簡潔に説明した。その大胆な行動にセイラスは少し驚いた表情を見せたが、同時に彼女の勇気と判断力を評価するような眼差しを向けた。
「千紗、そなたの働きは見事だ。この計画を阻止するためにすぐに動く必要がある。」
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反逆者たちの特定
セイラスの指示のもと、千紗は宮廷内の動きに注視しながら、反逆者たちの詳細なリストを作成することになった。カール侯爵を中心に、密談に参加していた重臣や貴族たちの行動を監視し、協力者の名前を一つ一つ明らかにしていく。
侍女エリカやミナの協力を得ながら、千紗は情報収集を進めた。中には、表向きは忠誠を誓っているように見える者もいれば、明らかに不審な動きをしている者もいた。
「カール侯爵だけでなく、侍従長ロバートも関与している可能性が高いわ。」千紗はエリカにそう伝えた。「彼が反逆者たちの情報を裏で取りまとめているかもしれない。」
「侍従長……彼は陛下の信頼も厚い方です。本当に反逆に関与しているのでしょうか?」エリカは困惑した様子を見せた。
「確証はまだないけれど、行動が怪しいわ。」千紗は冷静に答えた。「だからこそ、動きを見逃さないようにする必要がある。」
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計画阻止の準備
千紗は集めた情報を基に、反逆者たちの次の動きを予測した。計画が実行されるタイミングは皇帝が公開の場に出る儀式の最中とみられた。それまでに手を打たなければならない。
「エリカ、宮廷内の近衛兵に密かに警戒を強めるよう伝えて。」
「分かりました。」エリカはすぐに動き出した。
さらに千紗は、皇帝と親しい信頼できる重臣たちに協力を仰ぐことを提案した。セイラスは彼女の提案を受け入れ、忠誠心の厚い者たちに秘密裏に計画を打ち明け、反逆者たちの行動を封じ込める準備を進めた。
「千紗、世はそなたの判断を信じている。この計画を阻止するため、引き続き協力してくれ。」セイラスのその言葉に、千紗は深く頭を下げた。
「陛下の信頼に応えるため、全力を尽くします。」
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計画の発動と阻止
数日後、宮廷内は表向き平穏を装っていたが、千紗とセイラス、そして彼女たちが選んだ協力者たちの間では緊張が高まっていた。計画の実行が差し迫っているのを全員が感じ取っていた。
その夜、千紗は侍女たちとともに見張りを続けていた。すると、カール侯爵たちが武器を持ち出し、密かに行動を開始したとの報告が入った。
千紗はすぐに近衛兵を動かし、計画の実行を防ぐべく、彼らの動きを封じる指示を出した。
「全員、手分けして動いて!彼らを逃がさないように!」千紗の声に、侍女たちも兵士たちも動きを加速させた。
カール侯爵たちは宮廷内で拘束され、計画は未然に防がれた。千紗が倉庫で掴んだ証拠と、迅速な対応が功を奏した結果だった。
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皇帝からの信頼
事件が収束した後、千紗はセイラスのもとを訪れ、詳細な報告を行った。
「千紗、そなたの働きに感謝する。世が知る限り、これほど迅速に動き、結果を出した者はいない。」
セイラスの言葉に、千紗はほっと安堵した。しかし、その次の言葉には驚かされた。
「そなたにはさらなる役割を与えたい。世の補佐官となり、これからもそばで支えてほしい。」
「……また私に押し付けるんですか?」千紗は苦笑いを浮かべた。
「そなたならば務まると信じている。」
こうして千紗は新たな役割を与えられ、さらに宮廷の中心で活躍する運命を背負うこととなった。彼女の戦いはまだ終わらない――。