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第17話 突如の人事異動

 千紗は、皇帝セイラスからの突然の呼び出しを受けた時点で、嫌な予感しかしなかった。これまでの経験から、「頼み事」と称されるものが大抵厄介ごとであることは分かり切っている。

仕方なく謁見室に向かう途中、彼女の頭には無数の不安が渦巻いていた。「また無理難題を押し付けられるに違いない……それとも、側室たちの仲裁?まさか、外交問題とか?」


案の定、セイラスの開口一番の言葉が予感を裏付けた。



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セイラスとのやり取り


セイラスは威厳たっぷりに微笑みながら言った。「一つ頼み事がある。」


千紗は眉をひそめ、「今度は何ですか?また何かの仲裁ですか?」と半ば呆れながら返した。


セイラスは少し不機嫌そうに答えた。「いや、人事異動だ!」


「げっ!」千紗は思わず声を漏らした。


セイラスは彼女の露骨な反応に眉をひそめる。「露骨に嫌そうな顔をするな!これは栄転だぞ。」


「いっそ、無人島にでも左遷してください。」千紗はため息混じりに毒づいた。


セイラスは微笑みを浮かべながら続ける。「妃になるか、帝国宰相になるかを選べ。」


「はあっ!?前任の爺さんはどうしたんですか?」


「歳だから引退して隠居するそうだ。」


「私も引退して隠居したいです!」


セイラスは真顔になり、冷静な口調で言葉を続けた。「ロバート爺の推薦だ。宰相を引き受けてくれ。」


「あの爺!厄介ごと押し付けて自分だけ隠居だと!?ふざけやがって!」


「声に出ているぞ。」


千紗は慌てて口を押さえたが、内心では全力で拒否する理由を探していた。



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選択肢の押し付け


「10代の小娘に務まると思えません!謹んで辞退を……」千紗は必死に反論を試みた。


セイラスは涼しげに言葉を返す。「そうか、ようやく決心してくれたか。」


「はあっ?」


「宰相を断るということは妃になるのであろう。」


「……どっちもお断りです。」


セイラスは静かに微笑む。「どちらかしか選択肢はないぞ。」


千紗は心の中で悲鳴を上げたが、表情を崩さずに必死に食い下がった。「私が宰相なんてなったら、他の貴族からの軋轢が見え見えです!周囲の反発を考えれば、とても帝国にとって良い決定とは思えません。」


「皇帝の決定だ。文句はあるまい。」


セイラスの冷徹な言葉に、千紗は完全に言葉を失った。どんな理屈を並べても、彼が撤回する気がないことは明白だった。



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決断の行方


千紗は自室に戻ると、布団に顔を押し付けながら声を上げない悲鳴を上げた。「どうしてこうなるの!?なんで私がこんな重責を押し付けられなきゃいけないのよ!」


頭の中では妃になる未来と宰相になる未来が交錯し、それぞれのデメリットが浮かんでくる。


「妃になれば、側室同士のいざこざに巻き込まれるし、皇帝のそばにずっといるなんて絶対に無理……。でも宰相なんて、私には到底務まらないし、貴族たちの反発で絶対に身動きが取れなくなる……!」


千紗は枕を抱きしめながらため息をついた。「無理難題ばかり押し付けてくるこの皇帝、いっそのこと毒でも盛られてくれたらいいのに……。」


しかし、現実はそう甘くはない。翌日には再び謁見室に呼び出され、セイラスの前で再び選択を迫られることになった。


「……宰相で結構です。」


千紗は苦渋の表情で答えた。


「そうか、頼んだぞ。」セイラスは満足げに頷いた。


「(どうしてこうなるんだ……)」千紗は心の中で呟いた。



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新たな幕開け


こうして、千紗は10代にして帝国宰相という重責を押し付けられることになった。貴族たちの反発や、宮廷内の混乱を考えると、先行きが不安しかない未来だったが、それでも千紗は何とか前を向くしかなかった。


「逃げられないなら、やるしかないのよね……。」


彼女の新たな挑戦が幕を開けた――。



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