煙突から失礼しまーすと入り込み、吊されている靴下を探す。
が、お子様はスヤスヤと眠っているのに、枕元に靴下を吊していない。
最近そういう子どもも増えていると聞くが、ここは自宅前にあれだけ立派なツリーを構えるご家庭なのだ。靴下を吊していてもおかしくはない。
あれ……もしかして……。
嫌な予感がし、カレンダーを確認する。
――やってしまった! 一日早いじゃないか!
慌てすぎたか!あー、しまったなぁ。本当に反省しないなぁ、俺は……。
まぁしゃあない、明日また来よう。そう思って煙突から帰ろうとしたその時――。
ズサァッという音とともに、別の担当が煙突から落ちてきた。
いたたた…と言いながらそいつは立ち上がり、辺りを見渡す。
部屋の中で目が合う二人。
どうも、と互いに挨拶し、今日はまだその日じゃないですよ、と教えてあげた。
先に煙突から帰らせてもらう。
トナカイに引いてもらうソリに乗りながら考える。
彼も慌てていたのだろう、まさか一日早く来てしまう人が二人もいるとは。
でも、基本、我々は一つの家庭に一人担当が着く規則なので、担当が重なることは無いはずなのだ。
こちらは担当区画のリストを事前に確認しているので、彼が間違っていることになる。
世の中、あわてんぼうにも上には上がいるもんだ。
煙突から落ちてきたこの担当、実は一日早く到着してしまったのではなく、364日遅れて到着してしまった、とんでもないのんびり屋だと知るのは、もう少し後の話。
【あわてんぼう】