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第3話

 私達3人は学年の中で浮いた存在になりつつありました。


7月になり暑さが厳しくなる頃、エイミは学校を休みがちになりました。



イジメとは違う、何か得体の知れない疎外感があるとエイミは言います。



 私は親元を離れて祖父母の家から学校に通っていて、


すでに社会人になっている従兄弟と大学生の従兄弟が同じ家にいましたが、


2人ともに私と同じ高校の出身者です。


長男は役人になり、次男は都内の国立大医学部に通っています。



次男のジロウさんは、従兄弟の中でも私に一番年齢が近いので、


小さな頃から仲良しで、少し学校の様子を話すと、ある事を秘密だけどねと前置きして、教えてくれました。



 小さくて、髪が背中までフワフワちょっと癖毛、色白で大きな目の私は、


小さな頃からずっと変わらず、リナちゃんと呼ばれるより、


「オニンギョさん」と呼ばれていました。


 地元で中学生の頃は、変わった子、可愛くて小さくて、理数系だけが異常にできる子、おとなしいお嬢さんだけど、親も兄弟姉妹も、いじめたりしたら反撃が怖い一家、、、。


そんなんで、悪口すら聞いたことがありませんでした。


守られていたのでしょう。


歳の離れた兄や姉に。


また地域ではそれなりに力がある両親や祖父母に。



でも、東京の祖父母の家にいて、そんな守りもありませんから、


エイミのことを思うと気が気ではありませんでした。



 祖父母はすでに引退していますが、


元は2人そろって都内の大学病院に勤めていたドクターです。


エイミの肥満について相談してみると、しばらくここに住んでみたらどうだろうかという提案でした。


 多分何か考えがあるのだろうと、


夏休みまで待たずに、この夏をここで過ごしたらと言います。


ひと夏の思い出にしたら良いではないかと。


仲良しの友と、ひと夏過ごしてみる、多分、肥満は治まるだろうと、祖父母は自信ありげでした。


ひと夏の思い出、素敵だなと思いました。



私達の親戚一同、肥満ぎみの人間はいません。


あくまで粗食と、生活の中での体動かし、


ごく自然に肥満予防が出来ているのでしょう。



 エイミは横浜から通っていました。


非常に厳格な家庭ときいていたので、


友達の家でひと夏過ごすことを、許してもらえるかどうか分かりませんでしたが、


エイミは両親と祖父母に会いに来たようです。


ようですというのは、


たまたま郷里から姉が来ていて、学校から帰ってから着替えをして、2人でショッピングやお食事に出かけていた時に訪問したらしいのです。



エイミは割に行動が早い人のようです。



 姉はすでに大学を卒業して銀行に勤めていたので、


月に1回は私を監督するために東京に来ます。


2、3日逗留しますが、

ショッピングは殆んど姉自身のものを買い、


申し訳程度に私にブラウスやスカートを買ってくれます。


そしてお食事。


姉は私とは違い美人です。


一緒に歩いていると、随分とあからさまに振り向かれます。


レストランでも何となく周囲の男性の視線を感じます。


姉はそれが嬉しいのか、視線を感じると、余計にちょっと気取ってシャンとして、お食事を続けます。


まあ、姉のように女性としての資質が揃っている人はさておいてです。




エイミのご両親は、私のところでひと夏過ごすことを了解したそうで、


週末に小さな引っ越しがありそうです。


エイミが必要なものものを、単身者用の引っ越し業者に頼んだとか。



そして、私は従兄弟から教えてもらった、秘密話が頭から離れませんでした。

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