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第10話

 よく降る雨です。舗装された歩道は、跳ね返りがあってスニーカーの中まで濡れてきていました。


私達は正門から入らずに、現在は鍵がかかっていて閉ざされてしまっている西側の門から入ることにしました。


 クミコは事前に調べてきたらしく、門は頑丈で押しても引いても動かなかったそうですが、


そばのフェンスの下はくぐれるところがあるので、そこから入ろうと。


クミコは元来が冒険好きなのでしょう。


学校の中では誰彼と仲良くすることもなく、周囲の人達を無視しているように見えますが、


家族の趣味は無人島探検というだけあって、私達を完全にリードしていました。


一人で事前にいろいろ調べてもいたようです。


 夕方6時はまだ明るい。


部活動などで残っている人も、教師達も残っている時間。


その時間に、制服でないスタイルで1年女子が正門から入るとすると、守衛の人の印象にも残るであろうし、


すれ違う人達の目にも奇異に映るにだろうと。


どこか、入り口はないかと調べたとか。


西側は樹木と丈の高い雑草で、忘れ去られたスポットになっていました。


 3人がフェンスの下から、なんとかくぐりぬけると、エイミの胸も水曜日に買ったばかりのデニムもずぶ濡れ状態でした。


 そんな普段であれば、濡れたわ!着替えなくちゃ!いやだー!こんなんで歩けない!と大騒ぎのはずが、


私達は緊張していたのか、興奮していたのか、3人ともに無言で進みました。


とにかく、校内に入り、図書館へ行く廊下か、講堂に向かう廊下に行かなければなりません。


 誰かに会う、または、教師に呼び止められる可能性があるので、図書館への廊下か、講堂への廊下か、進み方としては

2つのパターンを考えていました。


 悪いことをしているわけではないとしても、悪いことでもあるのです。


学校としては公にしていない地下室を探ろうとしているのですから。


そして、私達の最終的な目的は、


ジロウさんにとっては高校時代のちょっぴり苦い、ひと夏の思い出を聞いて、その地下室を利用して、


あの口の悪いエイミを貶めた、ケイタとハヤテを懲らしめてやろうとしているのですから。


秘密裏に動きたいのでした。


私は、じめじめした感じが、嫌でした。


ミミズや蜘蛛がいるような感じで、気持ち悪くて仕方ありませんでした。


クミコは平気な顔をして、声をひそめて

「蛇でも出そうね、、」


私は危うく、キャーッと叫びそうでした。


ぐっと声を殺して、周囲を伺いながら、

私は、この草むらから出なければと思いますが、先頭にいるクミコが、


「テニス部の部室が賑やかだから、 


もう帰るはず、少し待っていましょう!」



出だしから、私は身体中が気持ち悪くてなりませんでした。


今にも蛇に巻き付かれるのではと、クミコの言葉から連想してしまうのです。


雨はバシャッバシャッと勢いよく、降り続き、、カッパでも着てきたほうがよかったと、、私は内心、


もう帰りたい、帰りたいと、口に出したくて、たまりませんでした。

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