傘をお持ちしましたよ、軍師様!
狐の仔の姿で喋れない
「っ!」
軍師様はこちらを
手の隙間から呟きが漏れる。
「……可愛い」
今、なんと仰いましたか?
珠珠はこてんと首をかしげる。それを見た軍師様は、凛々しい眉をへにょりと垂れさせた。
「こんな愛らしい生き物が、この世に存在したなんて……!」
そして、中腰のまま、慎重に珠珠に近寄ってくる。
ほら、傘を受け取って下さい。
くわえた傘を差し出すと、軍師様は傘と共に、珠珠の胴体をぐわしっと掴んだ。
「これは何とも、見せ物小屋に売り払われる前に、私が保護すべきだ。そうとしか思えない」
ほわっつ?!
「しーーっ、悪いようにしないから」
油断していた珠珠は、あっさり軍師様に捕まってしまった。
小さな手足をバタバタさせて逃れようとするが、当然ながらそのような抵抗は全く意味を為さない。
こちらを見る軍師様の目は異様にきらきらしていた。雲上人の美貌がさらに眩しいが、珠珠はこれとよく似た表情を店の前でよく見たことがある。珍しい生き物を捕まえて興奮する少年の顔だ。
だって! 大人な軍師様が、仔狐に執着すると思わないじゃない?!
離して~と全身で訴える珠珠を、軍師様は手持ちの袋に放り込み、ちゃっかり受け取った傘をさして、
その時には、雨も