クラウス宰相の陰謀の一端を突き止めたリリィとクラウディウスは、さらなる手がかりを得るため、宰相の配下である可能性が高い人物が集う秘密の会合へと向かう。そこでは、隠密姫としての力量とクラウディウスとの信頼が試される。
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翌晩、リリィとクラウディウスは貿易港から帰還したばかりだったが、次の行動に移っていた。貿易港で手に入れた書類の中には、セレノア王国の高官たちがクラウス宰相と秘密裏に接触している可能性を示す情報が含まれていた。
「この名簿にある名前の一人が、今夜この城下町で開かれる会合に出席するらしいわ。」
リリィは城下町の地図を広げ、指で一つの建物を指した。それは町の端に位置する小さな貴族の館だった。
「君の情報が正しければ、そこに重要な手がかりがあるはずだ。」
クラウディウスはリリィの指摘を確認しながら頷いた。
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準備と計画
「どうやって潜入するつもりだ?」
クラウディウスが問うと、リリィは自信満々に微笑んだ。
「私は直接中に入るわ。あなたは周囲の見張りを引きつけて。」
「俺が囮になるのか?」
クラウディウスは驚いたように目を見開いたが、リリィは軽く肩をすくめた。
「あなたは目立つ顔をしてるもの。逆に私は、影の中で動くのが得意だから。」
その言葉にクラウディウスは苦笑し、ため息をついた。「分かった。だが、無茶はするなよ。」
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館への潜入
夜が更け、二人は館へと向かった。クラウディウスはあえて正面から目立つ行動をとり、館周辺にいた見張りたちの注意を引いた。その間にリリィは背後の塀を登り、静かに館の中へと忍び込んだ。
中は思ったよりも豪華で、広間には既に数人の貴族たちが集まっていた。その中には、名簿に載っていた名前――セレノア王国の財務官、リクター・エインズの姿もあった。
「間違いない……彼もクラウスとつながっているわね。」
リリィは天井の梁に身を隠しながら、会話に耳を傾けた。
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秘密の会合
「……クラウス様の計画は順調だ。しかし、我々は次の段階に進む必要がある。」
リクターが低い声で話し始める。周囲の者たちは黙って頷き、その言葉に耳を傾けている。
「セレノア王国の評判を落とすだけでなく、経済的な混乱を引き起こす。そうすれば、我々の計画にとって最も障害となる勢力も崩壊するだろう。」
「経済的な混乱……まさか……。」
リリィは息を呑んだ。それはクラウス宰相が貿易港で仕掛けた陰謀が単なる始まりであることを示していた。
リクターはさらに話を続ける。「次に狙うのは――」
しかし、その瞬間、外で騒ぎが起きた。どうやら、クラウディウスが見張りたちと衝突したようだ。館内の貴族たちは一斉に顔を上げ、不安げに周囲を見回す。
「誰かが侵入したのか?」
リクターが警戒心をあらわにすると、リリィはすぐさま判断を下した。
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クラウディウスとの共闘
リリィは梁から飛び降り、一瞬のうちにリクターの背後に回り込んだ。短剣を喉元に突きつけ、冷たい声で囁く。
「動かないで。何を企んでいるのか、全部話してもらうわ。」
突然の出来事に、他の貴族たちは驚きで声を失った。リクターは苦しげに声を絞り出す。
「き、貴様……誰だ?」
「質問するのは私よ。次にクラウスが狙っている場所、それを話しなさい。」
リクターが口を開こうとしたその時、扉が勢いよく開かれ、クラウディウスが飛び込んできた。彼は剣を構え、館内を見回すと、リリィの姿を見て安堵の表情を浮かべた。
「無事か、リリィ!」
「そっちはどうなの?」
「なんとか見張りは片付けた。だが、この場所も長くは保たないぞ。」
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リクターの口封じ
クラウディウスの言葉に、リリィは素早くリクターを問い詰める。
「話しなさい。次の計画の全容を。」
「わ、分かった……。次は、北の鉱山だ。そこにある金鉱を掌握して、資源を独占する計画が――」
その瞬間、窓ガラスが割れ、一本の矢が飛び込んできた。矢はリクターの胸を貫き、彼はその場に崩れ落ちる。
「何!?」
リリィとクラウディウスは同時に外を見やったが、暗闇の中に人影は見えなかった。リリィは悔しげに拳を握りしめる。
「口封じ……。クラウス宰相の手の者ね。」
クラウディウスも険しい表情を浮かべた。「計画の一部は聞き出せたが、これでは決定的な証拠にはならない。」
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次なる目的地へ
館を後にした二人は、北の鉱山が次の目的地であることを確認した。クラウスの陰謀を完全に阻止するためには、ここでの失敗を繰り返さないよう、さらに慎重に動く必要がある。
「君の行動力には感心するが、次はもう少し俺にも計画を共有してくれ。」
クラウディウスが苦笑しながら言うと、リリィはわずかに笑みを浮かべた。
「分かったわ。次はちゃんと相談する。」
こうして二人は、次の目的地である北の鉱山へと向かう準備を整えた。彼らの前に待ち受けるのは、クラウス宰相のさらなる陰謀と、隠された真実だった。
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