目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第7話 北への旅路

クラウディウスとリリィはクラウス宰相の次なる陰謀を阻止するため、セレノア王国北部の鉱山へと向かう。その鉱山は国の経済を支える重要な資源地だが、そこにはさらなる罠と陰謀が待ち受けていた。



---




クラウディウスとリリィは、セレノア王国北部の鉱山を目指して旅を始めた。しかし、その道中、二人の前に立ちはだかるのは荒々しい自然と敵の追跡者。二人の協力が試される場面が増えていく。



---


2-1 本文


北へ向かう道は険しかった。冬の寒さがまだ残る山道は、凍てつく風が吹き荒れ、雪解け水が道を泥に変えている。クラウディウスは黒いマントを翻しながら、前を行くリリィの姿を見つめていた。


「君は本当に、この道を選んで正解だと思っているのか?」

険しい坂を登りながら、彼は少し苛立ったように問いかける。


「ええ。主要道路は敵の追跡者に狙われやすいわ。この道なら、時間はかかるけど安全よ。」

リリィは振り返ることなく答えた。その声は冷静そのもので、まるでこの困難な道を楽しんでいるかのようだった。


「安全ね……。この寒さを除けば、だが。」

クラウディウスは小さく嘆息しながら、足を進めた。



---


途中の休息


日が暮れかける頃、二人はようやく山道の途中にある小さな休息所にたどり着いた。そこはかつて旅人のために作られた木造の小屋だったが、今は使われていないようで、埃と朽ちた木の匂いが漂っている。


「ここで一晩過ごすの?」

クラウディウスは小屋を見回し、微かに眉をひそめた。


「他に選択肢はないわ。」

リリィは簡潔に答えながら、小屋の中を整え始めた。乾いた薪を見つけると、それを集めて火を起こし、温かい光と熱を生み出す。


クラウディウスはリリィの手際の良さに驚きを隠せなかった。王女として育てられた彼女が、ここまで実用的な技術を持っているとは思わなかったのだ。


「君、まるで冒険者のようだな。」

彼は火のそばに腰を下ろしながら、軽い調子で言った。


「そう見える?だったらよかったわ。」

リリィは微笑みながらも、目は鋭く周囲を警戒している。



---


敵の追跡者


休息も束の間、小屋の外で微かな物音が聞こえた。リリィはすぐさま立ち上がり、手にした短剣を握りしめる。


「誰かがいる……。」


クラウディウスも剣を抜き、窓から外の様子を伺った。暗闇の中、木々の間に人影が動いているのが見える。


「追跡者だな。俺たちをここで仕留めるつもりか。」

クラウディウスの声には緊張が混じっていた。


リリィは小さく頷き、静かに指示を出した。「火を消して。気配を隠すわよ。」


火が消されると、小屋の中は一気に暗くなり、二人は影の中に身を潜めた。外の足音が近づくにつれ、リリィの心拍数も高まる。しかし、その顔には恐怖の色はなく、むしろ冷静な計算が伺える。


「私が外に出て注意を引く。その間に、あなたは別の出口から逃げて。」

リリィは小声で言った。


「それは無理だ。俺が君を置いて逃げるわけにはいかない。」

クラウディウスはきっぱりと否定した。その真剣な表情に、リリィは一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。


「分かったわ。一緒に戦いましょう。」



---


夜の攻防戦


追跡者たちが小屋の扉を蹴破ろうとするのと同時に、リリィとクラウディウスは一斉に行動を開始した。リリィは短剣を手に影のように動き、一人目の追跡者を素早く無力化する。


「クラウディウス、右側をお願い!」


リリィの指示に従い、クラウディウスは剣を振るい、追跡者たちを迎え撃つ。その動きは力強く、正確だった。彼の剣術は貴族の護身術以上の実力を感じさせた。


「意外とやるじゃない。」

リリィは軽口を叩きながら、次々と敵を仕留めていく。


戦いは激しく、追跡者たちは次々と倒されていった。だが、数で圧倒される二人にとって、状況は徐々に不利になっていく。



---


脱出の成功


「ここは持たないわ。今すぐ脱出する準備を!」

リリィはクラウディウスに叫びながら、小屋の裏手に通じる小道を指し示した。


クラウディウスはリリィを守るように立ちはだかりながら、後退し始める。そして二人は追跡者の包囲を突破し、闇の中へと消えていった。


木々の間を駆け抜けながら、リリィは後ろを振り返り、追跡者が遠ざかるのを確認した。


「なんとか逃げ切れたみたいね。」

リリィは息を切らしながら言った。


「君の作戦がなければ、危なかったな。」

クラウディウスも肩で息をしながら答えた。その顔には、リリィへの尊敬の色が浮かんでいた。



---


次の目的地へ


夜が明ける頃、二人は再び歩みを進め始めた。リリィとクラウディウスの間には、少しずつ信頼の絆が育まれていた。


「君と共に戦うのは悪くないな。」

クラウディウスがぽつりと呟く。


「私もよ。あなたがあんなに戦えるとは思わなかったけど。」

リリィは微笑みながら答えた。


二人の旅はまだ続く。その先に待ち受けるのは、さらに困難な試練だった。



---





この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?