リリィとクラウディウスは次なる目的地、セレノア王国の重要な貿易港に向かう。しかし、道中で敵の新たな策略が明らかになり、予想外の危機に直面することになる。クラウス宰相の計画は、彼らの想像を超えるスケールで動き始めていた。
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薄暗い森を抜けた先に、貿易港の街並みが見えた。活気ある港町らしく、大きな船が並ぶ桟橋と、その背後に広がる市場が夕日に照らされている。
「貿易港に着いたわね。でも……なんだか静かすぎない?」
リリィは遠くの港を見つめ、眉をひそめた。通常、この時間帯の港はもっと賑やかで活気があるはずだ。しかし、今は人影がまばらで、どこか不穏な空気が漂っている。
「確かにおかしいな。普段ならもっと喧騒が聞こえるはずだ。」
クラウディウスも港を見下ろしながら同意した。その目は警戒の色を帯びている。
二人は急いで街に降り、港の様子を確かめることにした。
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静まり返る港町
港に到着した二人を出迎えたのは、不自然なほど静まり返った街の通りだった。店は閉まり、窓や扉には板が打ち付けられている。人々の姿はほとんどなく、空気は張り詰めている。
「何が起きているの?」
リリィが疑問を口にすると、一軒の家の中から小さな声が聞こえた。
「……ここは危険だ。早く離れろ。」
声の主は年老いた男性だった。彼は窓越しに二人を見つめ、怯えた様子で話を続ける。
「昨夜、大勢の武装した男たちが現れ、港の倉庫を占拠したんだ。それからは、誰も外に出られなくなった。」
「武装した男たち……クラウス宰相の手の者ね。」
リリィは拳を握りしめた。
「倉庫を占拠?まさか、そこを拠点にして武器を集めているのかもしれない。」
クラウディウスは険しい表情で言った。
「とにかく調べる必要があるわね。」
リリィは意を決して立ち上がり、港の倉庫へと向かうことを決めた。
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占拠された倉庫
倉庫の周囲は完全に敵の支配下に置かれていた。武装した男たちが見張りをしており、何人もの兵士が倉庫に物資を運び込んでいる。リリィとクラウディウスは影に隠れながらその様子を観察した。
「これは思った以上に大規模ね……。」
リリィは低い声で呟きながら、見張りの動きをじっと見つめた。
「この人数を正面から突破するのは無理だな。」
クラウディウスも同じく観察しながら冷静に判断を下す。
リリィは一瞬考え込み、やがて口を開いた。「なら、裏から潜入して内部の様子を探りましょう。何を運んでいるのかを突き止める必要があるわ。」
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潜入作戦
二人は倉庫の裏手に回り込み、隙を突いて中に忍び込んだ。倉庫の中は広大で、無数の木箱や樽が積み上げられていた。リリィは素早く一つの木箱を開け、中身を確認する。
「……やっぱり武器ね。」
リリィは短剣を持つ手に力を込めた。その箱の中には、大量の剣や盾、そして投石機の部品らしきものが詰め込まれていた。
「これをセレノアの主要都市に流通させ、混乱を引き起こすつもりだな。」
クラウディウスが低い声で言うと、リリィは頷いた。
「これだけの量を運ぶために、港を占拠したのね。でも、これを止めるにはどうすればいいかしら……。」
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新たな敵の登場
二人が話し合っている最中、倉庫の奥から足音が聞こえてきた。振り返ると、そこには武装した男たちの隊長らしき人物が立っていた。
「侵入者か……!お前たち、ここで何をしている?」
その男の声が響くと同時に、数人の部下が二人を囲むように動き出した。
「見つかったわね。」
リリィは短剣を構え、警戒の態勢を取った。
「戦うしかないな。」
クラウディウスも剣を抜き、リリィと背中合わせになった。
男たちが一斉に襲いかかってきた。リリィは素早い動きで敵の攻撃をかわしながら反撃し、クラウディウスはその剣技で次々と敵を倒していく。
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危機からの脱出
激しい戦闘の末、二人はなんとか敵を振り切り、倉庫から脱出することに成功した。港を占拠している敵の人数が多すぎることを考えると、正面から全てを制圧するのは不可能だった。
「これ以上ここで戦うのは無理ね。でも、あの物資を外に出させるわけにはいかない。」
リリィは荒い息を整えながら言った。
「だが、どうやって止める?この港を解放するには、もっと大規模な援軍が必要だ。」
クラウディウスも息を切らしながら尋ねる。
「私たちだけじゃ無理でも、情報を王宮に届ければ援軍を呼べるわ。その間に、私たちは物資を妨害する準備をするの。」
リリィの言葉にクラウディウスは頷き、二人はその場を後にして次なる準備を始めることにした。
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次への決意
港を取り戻し、クラウス宰相の計画を阻止するために、二人は力を合わせてさらなる行動を起こすことを誓う。それは簡単な道ではなかったが、二人の絆はより深まっていた。
「君の決意は固いようだな。」
クラウディウスが微笑みながら言う。
「もちろんよ。国を守るためには、どんな困難でも乗り越えるわ。」
リリィも微笑み返した。
こうして二人は次なる一手に向けて動き始めた。クラウス宰相の野望を阻止する戦いは、これからさらに激しさを増していく。