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第12話 援軍要請と分かれた道

クラウス宰相の計画を阻止するため、リリィとクラウディウスは王宮に援軍を要請しつつ、自らも貿易港での戦闘準備を進める。港を解放するための戦いが、いよいよ始まる。



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リリィとクラウディウスは、貿易港の危機を知らせるために王宮へ使者を送り出すが、二人は港に残り、敵の動きを妨害する準備を進める。敵の動きを封じ込めるべく、二人はそれぞれの役割を果たそうとする。



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3-1 本文


夜明け前の冷たい空気が港を包み込む中、リリィは一枚の手紙を握りしめていた。それは王宮へと届ける援軍要請の書簡であり、ここでの状況を正確に伝えるためのものである。


「これを確実に届けてほしいわ。」

リリィは近くにいた使者に手紙を渡しながら静かに言った。使者は緊張した面持ちで頷くと、すぐさま馬に乗り、夜明け前の道を駆け抜けていった。


「これで王宮が動いてくれるといいが……。」

クラウディウスは遠ざかる使者を見送りながら呟いた。その横顔にはわずかな不安が浮かんでいる。


「私たちにできるのは、時間を稼ぐことよ。」

リリィは鋭い目つきで港の方角を見据えた。


「そのためには、彼らの物流を止める必要があるわね。物資を運び出させないように、倉庫に細工を仕掛けましょう。」



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分かれた役割


リリィは倉庫内に侵入し、敵の物資に細工を施す役目を引き受けた。一方、クラウディウスは港周辺で敵の動きを封じ込め、混乱を広げるための陽動作戦を担うことになった。


「君一人で大丈夫か?」

クラウディウスが心配そうに尋ねると、リリィは軽く笑みを浮かべた。


「心配しないで。隠密としての技術を見せてあげるわ。」

その言葉にクラウディウスはわずかに微笑み、剣を握り直した。


「俺も陽動をしっかり成功させる。無事に合流しよう。」


二人は短く頷き合い、それぞれの任務に向かった。



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リリィの潜入作戦


リリィは倉庫の裏手から侵入し、物資の木箱に細工を施していった。彼女は木箱の一部に火薬を仕込むとともに、敵が運び出す際に崩れるよう、積み方を工夫して妨害する。


「これで少しは時間を稼げるはず……。」

リリィは作業を終え、周囲の気配を確かめながら物陰に隠れた。


しかし、そこで彼女は思いがけない声を耳にした。


「次の船は予定通り夜明けに出航する。遅れるな。」

それは敵の隊長らしき男が部下たちに指示を出している声だった。彼らは港から武器を国外へ運び出そうとしている。


「国外に武器を運ぶつもり……?」

リリィはその情報に驚きつつも、冷静にその場を離れた。



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クラウディウスの陽動


一方で、クラウディウスは港の入り口付近でわざと敵の注意を引く行動を取っていた。わざと物音を立てたり、影を見せることで、見張りたちを倉庫から引き離す作戦だ。


「侵入者だ!追え!」

見張りたちはクラウディウスを追いかけ、港の奥へと誘導されていった。


クラウディウスは巧みに敵の動きを翻弄し、リリィが安全に作業を終えられるよう時間を稼いだ。


「ふん、こいつらは単純だな。」

彼は余裕を見せながらも、常に次の行動を考えていた。



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再会と計画の再確認


作業を終えたリリィは、指定の場所でクラウディウスと合流した。二人は息を整えながら、手短に次の行動を話し合う。


「物資への細工は完了したわ。でも、夜明けに船を出す準備をしているみたい。」

リリィが報告すると、クラウディウスの表情が険しくなった。


「国外に武器が流れるのを阻止しなければならないな。それが奴らの計画の核心かもしれない。」

彼は剣を握り直し、すぐに行動を起こそうとする。


「でも、無茶はしないで。援軍が来るまで持ちこたえるのが私たちの役目よ。」

リリィは落ち着いた声で諭した。



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戦いへの決意


二人は一度休息を取り、夜明け前の決戦に備えた。港を包む静けさの中、クラウディウスがふと口を開いた。


「君と共に戦うのも悪くないな。」

リリィはその言葉に微笑みながら答えた。


「私もよ。でも、私たちが戦っているのはただの戦いじゃない。国の未来のためよ。」


二人の決意は固まり、港での戦いに向けて準備を整える。援軍が到着するまでの時間を稼ぐため、彼らは命を懸けた戦いに挑もうとしていた。




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