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第13話 夜明けの妨害作戦



援軍が到着するまでの間、リリィとクラウディウスは夜明けに出航しようとしている敵の船を妨害するために動き出す。二人はそれぞれの技術を駆使し、物資の輸送を阻止しようと奮闘する。



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夜明け前の貿易港は静寂に包まれていた。だが、その裏側では緊張が高まっている。敵は倉庫から港の桟橋に向けて物資を運び出し、船に積み込む作業を急いでいた。灯火が僅かに揺れ、兵士たちの声が低く響いている。


「時間がないわね……。」

リリィは倉庫の屋根に身を潜め、桟橋の様子をじっと観察していた。敵の兵士は多いが、全てが整然と動いているわけではなく、隙を突けるポイントを探していた。


クラウディウスが物陰から顔を出し、低い声で言った。「どうやって動く?見張りが厳重だ。」


リリィは少し考え込み、やがて静かに口を開いた。「まずは船を動けなくするわ。船が出航できなければ、彼らの計画は遅れるはず。」


「なるほどな。それで船をどう止めるつもりだ?」

クラウディウスが問うと、リリィは短剣を指し示した。「帆や綱を切るのよ。それに、燃やせるものがあれば船の甲板で混乱を引き起こすわ。」


クラウディウスは目を細め、頷いた。「よし、それなら俺が見張りを引きつける。君は船に潜り込め。」



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船への潜入


クラウディウスが囮となり、見張りたちを港の別方向へ誘導している間に、リリィは静かに船へと近づいた。桟橋を渡り、甲板に足を踏み入れると、彼女はすぐに周囲を確認した。


「ここまで来たけど……中にも兵士がいるのね。」

船内からは数人の兵士たちの声が聞こえ、物資を積み込む音が響いていた。リリィは短剣を手に、気配を消して船の中へと進んだ。



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帆と綱の破壊


リリィはまず帆を固定している綱を見つけ、それを切り始めた。切れた綱は甲板に落ち、帆がたるんで動かなくなる。


「これで出航は簡単にはいかないはず……。」

彼女は次々と綱を切り、船の動きを封じていった。


作業を終えたところで、船の奥から兵士が現れた。「誰だ!?」


リリィは瞬時に身を隠し、兵士の背後に回り込んで短剣を喉元に突きつけた。「静かにして。」


兵士は声を上げることもできず、リリィは素早く彼を気絶させた。その間に、別の兵士たちが甲板に集まり始める。



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甲板での混乱


「侵入者だ!」

兵士の一人が声を上げ、リリィの存在が知られてしまった。彼女は甲板の隅にあった樽を転がし、燃えやすい油を甲板に広げた。


「これで少しは混乱するはず。」

彼女は火種を樽の隙間に投げ込み、火が油に燃え移るのを確認した。甲板が炎に包まれると、兵士たちは慌てて水をかけ始めた。


その隙を突いてリリィは船から飛び降り、桟橋に戻った。



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クラウディウスの陽動戦術


一方で、クラウディウスは港の別方向で兵士たちを引きつけていた。わざと物音を立て、影をちらつかせることで、敵は次々とそちらへ向かっていった。


「こいつら、本当に単純だな。」

クラウディウスは微笑みながら剣を振り、近づいてきた兵士たちをかわしていく。


敵の注意を引きつけ続けることで、リリィの作戦が成功する時間を稼いでいた。



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再び合流


港の裏手で合流した二人は、互いの任務が順調に進んだことを確認し合った。リリィは息を整えながら、クラウディウスに報告した。


「船の帆と綱は切ったわ。それに、甲板も火事になっている。しばらくは動けないはず。」


クラウディウスは満足そうに頷いた。「さすがだな。君のおかげで敵の計画は大幅に遅れる。」


「でも、これで終わりじゃないわ。まだ他の船が控えているかもしれない。それに、援軍が来るまでは油断できない。」


二人は次なる行動を話し合い、さらなる準備を進めることにした。



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次なる戦いへの決意


夜が明け始め、港の空が薄明るくなってきた。敵の混乱は続いているが、まだ完全に彼らを無力化するには至っていない。


「援軍が到着するまで、私たちでできることをやりましょう。」

リリィの言葉に、クラウディウスも静かに頷いた。


「君と共に戦うのも悪くないな。本当に頼りになる。」


「あなたもよ。次はもっと協力し合いましょう。」


二人は短く笑い合い、さらなる戦いに向けて動き出した。クラウス宰相の陰謀を阻止するための戦いは、まだ続く。



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