クラウス宰相の陰謀を暴くため、リリィとクラウディウスは重要な証拠を持って王都へ向かう。しかし、道中には宰相の追っ手が差し向けられており、二人は命を懸けた戦いを繰り広げることになる。
洞窟から脱出したリリィとクラウディウスは、夜明けの空を背にして山道を進んでいた。彼らの手には、クラウス宰相の計画を示す書類と地図が握られている。その内容を王都に届けることができれば、宰相の野望を阻止する大きな一歩になるはずだった。
「急ぎましょう。王都までの距離を考えると、これ以上の遅れは許されないわ。」
リリィは短剣を腰に収めながら早足で進んだ。
「だが、奴らが追っ手を差し向けてくるのは間違いない。油断するな。」
クラウディウスは周囲を警戒しながら言葉を返した。
追っ手の接近
二人が山道を進む中、背後から遠くに馬の蹄の音が聞こえ始めた。その音は次第に大きくなり、複数の騎馬兵が彼らを追っていることが明らかになった。
「来たわね……やっぱり逃がしてくれるわけがない。」
リリィは背後を振り返り、冷静に状況を判断した。
「人数は……十人以上か。俺たちだけでは正面から相手にするのは無理だ。」
クラウディウスは剣を握り直し、険しい顔で言った。
リリィは少し考え込んだ後、近くの岩場を指差した。「あの岩場で待ち伏せしましょう。地形を利用して数を減らすのよ。」
「了解だ。ここは君の策に従おう。」
クラウディウスは短く頷き、二人は岩場に身を隠した。
待ち伏せ戦術
追っ手が岩場に差し掛かると同時に、リリィは短剣を投げ、先頭の騎馬兵の手綱を切り裂いた。馬が驚いて暴れだし、他の兵士たちの陣形が崩れる。
「今よ!」
リリィの合図で、クラウディウスが剣を振り下ろし、混乱する兵士たちを攻撃した。彼の剣技は的確で、一撃ごとに敵を倒していく。
「こいつら、思ったより訓練されているな……!」
クラウディウスは敵の反撃を受け流しながら言った。
「でも、私たちも簡単には負けないわ!」
リリィは敵の背後に回り込み、短剣で素早く攻撃を繰り出した。彼女の動きは俊敏で、敵兵たちの隙を巧みに突いていく。
追い詰められる危機
しかし、敵の数が多いため、次第に二人は追い詰められていった。リリィとクラウディウスは背中合わせになりながら必死に応戦したが、体力の限界が近づいていた。
「このままでは持たない……!」
クラウディウスが息を切らしながら言うと、リリィは険しい表情で周囲を見回した。
「何か突破口を見つけなきゃ……。」
リリィは焦りながらも冷静さを失わず、地形を再び観察した。そして、彼女は崖の上に積み重なった大きな岩に目を留めた。
「クラウディウス、あの岩を落とせば敵の動きを止められるかもしれないわ!」
彼女は崖を指差しながら提案した。
逆転の一手
クラウディウスはリリィの提案に即座に同意し、二人は崖の上へと急いだ。敵兵たちが追いかけてくる中、二人は岩を崩すために全力を尽くした。
「これで……終わりよ!」
リリィが最後の力を振り絞って岩を押すと、崖の上の岩が大きな音を立てて崩れ落ちた。
岩は追っ手の兵士たちに直撃し、彼らの陣形を完全に崩壊させた。生き残った数人の兵士たちは怯え、撤退を始めた。
「これでしばらくは安全ね……。」
リリィは息を整えながら呟いた。
「だが、油断はできない。奴らはこれ以上の追っ手を送ってくる可能性が高い。」
クラウディウスは剣を収め、リリィに目を向けた。
王都への道
追っ手を振り切った二人は、再び王都への道を急いだ。険しい山道を抜け、次第に広がる平野が見えてくる。遠くには王都の城壁が霞むように見えてきた。
「もう少しよ。ここを乗り越えれば、クラウス宰相の計画を止められるわ。」
リリィは握りしめた書類を確認しながら呟いた。
「だが、王都に着いてからも油断するな。奴の手は王宮にも届いているはずだ。」
クラウディウスの言葉には、次の戦いへの覚悟が込められていた。
決意と覚悟
二人は王都の入り口に到着したところで一度足を止めた。ここからは宰相の目が厳しくなることを二人とも理解していた。
「ここから先は、私たちだけの戦いになるかもしれない。」
リリィはクラウディウスに向かって静かに言った。
「構わないさ。君とならどんな敵でも乗り越えられる。」
クラウディウスは力強く答えた。
二人は短く頷き合い、王都への足を踏み出した。その背には、クラウス宰相の陰謀を阻止するための決意が満ちていた。