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第6話:超必殺技修得

「ぜえぜえ……はあはあ! 俺はやったぞ! 成し遂げたんだ!」

「ぱちぱち! おめでとう! んじゃ、残りのパンツふりかけは非常食として、収納魔法先に収納しておきなさい?」

「取り上げるわけじゃないのか!?」

「そんな鬼畜生なことはしないわよ。わたくしを何だと思ってるの?」

「……俺をモンスターに変えた駄女神様」

「(びきびき)はい、パンツふりかけ没収♪」

「すみません! 麗しき女神様ーーー!」


 オミトは地獄の特訓を経て、なんとかパンツふりかけが無い状態でもニンゲンの食事からエネルギーを補給できるようになった。


 しかし、そうであるのに女神が不穏なことを言ってきやがった。


「これで1週間はパンツを食べなくてもよくなったかも?」

「ここまで頑張ってもパンツ断ちできないってことぉ!?」

「そりゃそうよ。この特訓はあくまでも日常生活を送るためだもん」

「そう言えば、そんなこと言ってたような?」

「あなたにはヒーローとして活動してもらうわ。もしもの時は惜しみなくパンツパワーを発揮することになるわね」


 女神の言うことをうんうんと頷きながら聞くことになる。結局のところ、何かしらで一気にパンツパワーを使った時はニンゲンの食事ではエネルギー補給は間に合わないそうだ。


 そういう緊急時にはパンツを直接、手づかみで食べるのが一番だということを教えてもらえた。


「百聞は一見にしかず。実際にパンツパワーを消耗してもらうわよ?」

「なんで?」

「なんでって……修行だからよ? 言わなきゃわからないの?」

「ぐっ! わかったよ! 一度、パンツパワー切れになったから、2度もやらなくていいだろって言いたいだけだったんだ!」

「あれはたまたま上手く行っただけでしょ? こういうのは何度も場慣れしておくことが肝心よ」


 女神が厳かなオーラをその身からあふれ出させる。錫杖を両手持ちにして、それを左右に振る。シャリン、シャリリンという音がこの空間に漂う。


 次の瞬間、虚空に亀裂が入る。ビシッ、ビシシッ、パリーン! という音が鳴って、虚空が盛大に割れる。


 真っ黒な穴からドラゴンの頭がにょっきりと出てくる。こちらをジロリと睨みながら、身体全体をこちら側へと持ってきた。


 ゴクリ……と息を飲むしかない。


「……えっと。こんなのといきなり戦わされるんですかーーー!?」

「今のあなたならこれくらいじゃないと修行にもならないもの」

「マジで?」

「マジです」


 パンツマンは否応なくドラゴンと戦うことになる。それも上手く力をセーブした上でだ。スパーリング相手として選ばれたドラゴンの顔はさもうっとおしそうにしていやがった……。


 ドラゴンが威嚇するかのように咆哮する。こちらの肌がビリビリとひりつく。しかし、ドラゴンがいくら吼えようが、こちらは負ける気がしなかった。


 パンツ・チョップで一刀両断してやろうとさえ思ったが、それを女神に禁じられている。


「はい、パンツー、パンツー。そこでストレート!」

「パンツー、パンツー、ストレート! って地味すぎる! こんなのヒーローの戦い方じゃない! 必殺技でぶっとばしたい!」


 パンツマンは左右のジャブからストレートを放つという基本スタイルを徹底して叩きこまれた。


 こんな修行、何の役に立つのかと散々女神に抗議する。


「んもう! そんなにヒーローやりたいの? 命の危険を省みずに?」

「ヒーローになれるなら、この命惜しくはないっ! 俺に必殺技を使わせてくれ!」

「困ったわね。そうだ! 消費量の少ないあの技なら!」

「おおう!? 何か名案が浮かんだのか!?」

「パンツ・目潰しよ!」

「ヒーローが使っていい技じゃねだろー!」

「敵を一瞬で無力化できていいとおもうんだけどなあ?」


 ドラゴンといっしょに女神に向かって(ヾノ・∀・`)ナイナイと意思表示してみせた。女神が「んもう……」と肩をすくめている。


 それでも女神が基礎を身につけろとの命令をパンツマンに下す。パンツマンは渋々、ドラゴンの分厚い手にパンツー、パンツー、ストレートを叩きこみ続けた……。


◆ ◆ ◆


 パンツマンの修行は続いていた。この精神と時の部屋に入ってから最後の10日目に突入している。省エネで戦う術をどんどん身につけていく。


「フェイントのジャブを放ってからのローキック!」

「地味すぎるっ!」

「地味とか言うな! 総合格闘技の基本でしょ! 本当ならグラウンド勝負も教えたいくらいなのに!」

「てかやたらと現代格闘技をお勧めしてくるね!?」

「わたくし、桜葉さんの大ファンだったの!」

「渋い選手の名前出してきたな!?」


 女神が桜葉選手の大ファンだということが判明した。確かにコツコツとダメージを与えていくモデルとして彼は最適解だ。


 しかしこっちは必殺技を叩きこみたくて仕方がない。


 ヒーローは華があってこそだ。桜葉さんには悪いが、自分は華やかな必殺技で決めたい。小技ばかりを覚えることはハッキリと言ってストレスだった。


「発想の転換として……エネルギーを使い切る前に敵を全員ぶっ飛ばしちまえばいいと思うだが?」

「それは……危険を伴うわよ? それでもいいなら、超必殺技も伝授しないことはないけど……」

「頼む! ヒーローが超必殺技を使えるとか、最高じゃないか!」

「んもう……ちょっと待ってね? 候補をいくつか考えるから」


 女神がタブレットを操作して、パンツマンの超必殺技にふさわしいものを検索してくれていた。


 スクリーンに流れるように表示される超必殺技を見る。その中のひとつをマジマジと見た。自然と口の端が緩んでしまった。


「これだ! 俺にふさわしい超必殺技だ!」

「えーーー?」

「えーーー? ではない! 俺はこれが気に入った。これを伝授してくれ!」


 女神は渋々といった感じでパンツマンに超必殺技を伝授してくれた。

さらにはドラゴンに代わり、ゴーレムを100匹召喚してくれる。


 ふんっと鼻を鳴らす。右手をまっすぐにゴーレムたちに向ける。自分の中のエネルギーのほぼ全てを右手で握りこんでいるパンツに注ぎ込む。


「俺の右手が真っ赤に燃える! パンツを奪うやつらをすべて焼き尽くす!」


 さらに意識を右手に集中させた。握りこんでいたパンツが発火する。右手が炎に包まれる。


「バーニング・ゴッドバード・パンツ!」


 パンツマンの右手から真っ赤な不死鳥フェニックスが現れた。その不死鳥フェニックスがまっすぐにゴーレム軍団へと飛んでいく。


「うべぼろあぼらぁ!」


 石で出来たゴーレムが飴のように溶けていく。その様子に気持ちが昂ってしまう。


「すげえぞこの超必殺技! うぐあ! 身体から急速に力が抜けていく! パンツを無性に食べたくて仕方がない!」

「んもう! 力の加減が全然できてないじゃない! ほら、これを食べなさい?」

「なんでパンツじゃないんだ! これはニンゲンの食事じゃねーかー!」

「これも修行の一環よ?」

「ちくしょう……ちくしょう」


 パンツマンはせめてパンツふりかけをかけることを許可してもらう。女神はやれやれと肩をすくめている。しかし、こちらは生きるか死ぬかの瀬戸際だ。


 パンツふりかけをぞんぶんにかけたニンゲンの食事を平らげる。なんとか一命を取り留めた。


 これで修業は終わりだ。最後に女神から今の自分のステータスを表示してもらった。


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名前  :オミト・ダテ

モデル :パンツマン

Lv   :99


スキル :パンツ・目潰し(卑怯? ふふふ。知ったこっちゃありませんわ)

     パンツ・金的(暴漢を制圧するならこれが1番!)

     パンツ・あっちむいてほい(油断を誘えるわ!)

     パンツ・隠れの術(姿を消せて便利!)

     パンツ・デコイ(分身の術を格好良く言ってみたわ!)

     パンツ・チョップ(超痛い)

     パンツ・キック(めっちゃ痛い)

     パンツ・ウイング(成層圏を突き抜ける)

     パンツ・アイ(セクハラです)

     パンツ・イヤー(セクハラです)

     パンツ・ハート(JC・JKを見るとときめいちゃう!)


超必殺技:バーニング・ゴッドバード・パンツ


耐性系 :斬◎、突◎、打☆、熱◎、冷◎

弱点  :パンツが濡れる、汚れる、欠けると力が抜ける


特記事項:1週間に1回のパンツ補給で済む身体に(ただし通常活動において)

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 修行の成果がばっちりと出ていた。省エネの新しいスキルだけでなく、超必殺技も修得した。


 これでますますヒーローらしくなったと胸を張って言える気がした。


「とりあえずの修行はここまで。10日間、お疲れ様♪」


 女神の導きにより精神の時の部屋から退出する。


 その途端、疲労感が一気に押し寄せた。パンツマンは牢屋の中で気絶するように倒れ込む……。


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