だが、それも一瞬のこと。すぐに不安気な顔になった。
「ねぇ。この、情報ギルド(仮)ってなに?」
タニアはカウンターに置かれた書類の中で気になる部分を指す。
「この求人を出しているギルドの名称だ。新設ギルドでな。正式な名前がまだ決まってないんだ」
「ふーん。そうなの」
「それどころか、まだ開設されるかどうかも決まってない」
「はっ? えっ? じゃあ、仕事なんてないんじゃ……」
タニアが困惑気味に疑問を口にする。だが、ジャックスは何故か余裕そうに笑う。
「だけど、お前はギルドの受付嬢をどうしてもやりたいんだろ? それなら、ここしかお前に選択肢はない」
「でも……そんな名前も決まっていないような新設ギルドで、パパとママの情報なんて分かるわけないじゃん」
「まぁ、そうかも知れんな。その可能性も無くはない。だけど、それはお前次第だと俺は思うぞ」
「アタシ次第?」
ジャックスの言葉にタニアが首を傾げた。その反応にジャックスはニヤリと笑う。そして、ジャックスはタニアに顔を近づけると、内緒話でもするように小声で囁いた。
「そうだ。考えてもみろ。名前も決まっていないような新設ギルドだ。まだどんな形で仕事を進めるのかなんて決まっているはずがない。だから、お前がやりたいように動くことだってできるはずだ。必要とする情報を集められるような場所にすることだってできるかもしれんぞ」
その言葉にタニアは目を見開いた。本当にそうだろうか。そんなことが可能だろうか。半信半疑のタニアは、でも……と視線を落とす。ジャックスの言う通り、これを逃せばタニアがギルド嬢になる機会はないだろう。それだけは確かなことだ。
再び視線を書類に戻す。ほとんど何も記されていない形式ばかりの書類を見て、タニアはゴクリと唾を飲み込んだ。
「……本当にアタシにできるかな?」
不安気に呟くタニアにジャックスは力強く頷いた。
「タニアは根性もありそうだし、大丈夫だろう。ここなら鬱陶しい採用条件もない。お前がやると言えば即採用されるはずだ。創設者が俺の知り合いでな。俺の口添えだけで大丈夫だ」
「そうなの!? じゃあ、アタシ絶対ギルド嬢になれるってこと?!」
途端に顔を輝かせたタニアにジャックスは苦笑する。
「お前、本当にギルドの受付嬢になりたいんだな」
タニアはハッキリと頷き返す。
「当たり前よ! パパとママの情報を得ることが目的だけど、ずっとギルドの受付嬢になることを夢見てきたんだから!」