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0006 1番のおかず

部屋に入ると、こぢんまりとした窓の大きな部屋だった。

部屋の中央にテーブルがあり、イスが3つ用意されている。

じいさんとジュラさんが既に座っているので、空いているイスの横に立った。

底辺の僕は勝手に座っていいものか悩んだ。


「どうぞ」


ジュラさんがにこやかに言ってくれた。


「ありがとうございます」


僕は御礼を言ってイスに座った。

僕が座るとステラさんと4人のメイドさんが料理を台車で運んで来た。

4人のメイドさんは、明るい外の光の下で見るととても若く見える。

料理の配膳が終わっても5人のメイドさんは、扉の横に立ったまま部屋を出て行かない。

約束では3人で食事の筈だ。

これでは8人だ。


「じいさん。食事は3人の約束だけど、これでは8人だ」


僕は、食事のマナーがわからない。

だから見られたくないので文句を言ってみた。


「何をいう。この者達は召使いじゃ。道端の石や草と一緒じゃ」


そう言うと、じいさんは5人のメイドさんをさげすむような嫌な目で見た。

ジュラさんまで、同じ目で見つめた。

そうだ、初対面の時、僕もジュラさんからこの目で見つめられた。

僕のいた世界では差別は禁止だけど、この世界では同じ人間でも差別があるようだ。

まあ、僕のいた会社では、普通に僕は隊長からさげすまれるような目で見られていましたけどね。


ステラさんはもうその視線に慣れてしまったのか、平然としていますが、4人のメイドさんは、じいさんとジュラさんの視線を感じ取ると、顔色が悪くなり体が硬直しています。

これでは、料理をこぼしたり、コップを倒したり、そそうをするのは間違いない。

「ジュラさんはとても美人だから、そんな目でメイドさんをみてほしくないなあ。誰でも分け隔て無く慈愛に満ちた優しい目で見てくれる方が絶対にいいはずだ。そんなジュラさんの方が素敵だ」


カタンと音がした。

ジュラさんがコップをたおしてしまったようだ。

顔を見ると驚いたような表情をしている。

ステラさんが倒れたコップを直し、布でこぼれた水を拭いている。


「どうかしましたか?」


僕は、驚いた表情のジュラさんに声をかけた。


「お、おぬし、気がついておらぬのか?」


「えっ!?」


「まあよい。腹が空いておるじゃろう。ささ、食べてくれ」


じいさんが、食事を勧めてくれた。

パンとスープ、お肉の料理が並んでいる。

フォークとナイフ、スプーンが置いてある。

「嫌だなあ。僕は箸がいいなあ。ナイフとかフォークは使い方がわからないからなあ」


「あの、おハシとはどのようなものですか?」


「えっ!?」


「おぬし、心の声が時々出ておるぞ。気付いておらんのか?」


「えーーーーっ!! しまったー! 一人暮らしが長かったから、しぜんと独り言をいう癖がついていたーー!! 僕って何を言いました?」


「うふふふ」

「ぎゃははは」


ジュラさんとじいさんが笑っている。

その後ろで、メイドさん達もこらえきれずに笑っている。

まあ、いいか。これでメイドさんから堅さが取れたみたいだ。


「あの、ステラさん少し厚みのある板はありませんか」


「少々お待ち下さい」


ステラさんは、そういうと首をかしげながら部屋を出て、すぐに戻って来た。


「ありがとうございます」


僕は板を受け取ると、立てかけてある勇者の剣を取り、鞘から剣を抜いた。

そして、板を宙に浮かすと、素早く剣を動かした。

板が木の棒になってパラパラと落ちてくる。


「す、すごい」

「ふむ、みごとなものじゃのう」


2人が目を丸くしている。

落ちてきたのは16本の木の棒だ。

その中の2本を手に取り、残りは机の端に置いた。


「これがハシです」


僕は手に持ち動かした。


「ほう、器用なものじゃのう」


「むずかしいですわ」


ジュラさんは置いてあるハシを取ると、僕の真似をしてみたがうまく出来ないようだ。

僕はイスに座り直すと、ハシで料理を口に運んだ。

その瞬間、全員が僕の顔を見ている。


「うっ!」


僕は思わず声が出た。


「……!?」


全員がゴクリと唾を飲み次の言葉を待っている。

食べづらいわーー!!

ふう、ちゃんと心の中で言えた。


「しょっぱいですね」


「えっ!?」


「あっ、いいえ。これは、料理が悪いわけではなくて、僕の口がおかしいのです。ずっと森で捕まえたり、拾ったりした物だけを食べていましたので、味のしない食事をしていました。だから、突然味のする物を食べて口がビックリしているみたいです」


「なるほどのう」


じいさんとジュラさんがうなずいています。


「ステラ、料理の味を薄くして来て下さい」


「はい、ルド様」


ステラさんと4人のメイドさんが、僕の料理をいったん下げて再び持って来てくれました。


「ところで、質問が有るのですがよろしいですか」


僕は何故、人間と魔人が戦争をしているのかが疑問だった。

そして、魔人と人間の間にどんな違いがあるのか。

今、こうして見ていると、じいさんとジュラさんもメイドさんも、僕達人間と違いが全然わからない。


「むろんじゃ」


「あの、人間と魔人とは何が違うのですか?」


「ふむ、それを食事中に聞くかのう? まあよいわ!」


じいさんがイスから立ち上がり後ろ向きになった。

ジュラさんも立ち上がり後ろ向きになった。

そして、メイドさんがくるりと後ろを向く。

いったい、なにが始まるのだろう?


「ほれ、見て見ろ」


爺さんがズボンとパンツを半分下ろしてハンケツ状態になった。

ジュラさんをみたら、ジュラさんもハンケツ状態になって恥ずかしそうにモジモジしています。

顔が真っ赤になっていて、とてもかわいいです。

驚いたのはメイドさんです。

スカートをバサッとまくって、可愛いパンツが丸出しです。


いいえ、サービスはそれだけではありません。

そのかわいいパンツを半分降ろして、ハンケツ状態になっています。

ステラさんも、かわいい4人のメイドさんも赤い顔をして、恥ずかしそうです。

それがまた……。


こ、これは、なんなんでしょうか?

本当に食事中にやることではありません。

いいえ、むしろ食事中が正解です。

僕は、女性の生のお尻をこんなに近くで見たのは生まれて初めてです。

ご飯が進みます。ご飯が、ご飯が進みます。

これは、世界で1番のおかずです。

じゃねーんだよ! いったいなんなんだよーー!!


「もう、いいかのう」


じいさんがズボンを直して汚いハンケツをしまった。

後の6人は美しいかわいいハンケツをしまってしまいました。


「いったい、なんなんですか?」


「わからんのか。人間には尻に青いアザが全員ある。魔人の尻は綺麗なままじゃ。ステラから聞いたが、おぬしにも無いと聞いた。おぬしも魔人と同じ尻をしておる」


なるほど……でもいちいち尻を見せる必要があるのかなあ?

それに、僕には今は無いけど子供の頃に青いアザはあったはずだ。

これは、どう言う判断になるのだろうか?

ていうか、お風呂にステラさんがいたのかー。

「どう考えても風呂でのあの『あんっ』はステラさんだよな」


「はわわ」


ステラさんが真っ赤になって下を向いた。


――あーーっしまったー!


また、口に出してはいけないことを口にしてしまった。

そこからの料理は味が全くしなかった。

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