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0022 買い出し

「この狭い部屋に何人いるんだよ!!」


せまいボロアパートの一室に、全員勢揃いだ。


「くふっ」


ジュラさんが、僕の顔をのぞき込んで美しい顔で微笑んだ。

体を揺さぶっているのは、美少女のシエンちゃんだ。

そんなに揺さぶったら、夢でもよっちまうだろうがー!


「なんだよー。今日はじいさんまでいるのかよぉ」


ジュラさん、シエンちゃん、リエル君、ステラさん、美少女4メイドの後に、じいさんが良い笑顔で立っている。


「わ、わしだけ仲間外れはずるいのじゃ」


言い方はシエンちゃんみたいだが、じいさんが言ってもかわいくはない。


「しかたがないですね。では、出かけますか」


「あの、デミル様。今日はどこへ行くのですか」


玄関を出ると、ジュラさんが僕のすぐ横に並んで聞いて来た。


「ふふっ、今日はディスカウントスーパーです。底辺生活者の御用達ですよ」


「ディ、ディスカウントスーパー!!!!」


全員の声が綺麗にそろった。

きっと聞いた事のない単語なんでしょうね。

そのむかし近くにあった、ディスカウントスーパーをイメージしている。

昔は大繁盛していたお店だ。

他店よりも必ず、1円は安かった。

消費期限の近い商品は投げ売りされていた。


カップメンやジュースなどは、消費期限などを僕は気にしないから大量に買っていたなあ。

2リットルの炭酸飲料が百円で売っていた。

リボンなんとかという透明のサイダーのような飲み物だ。一杯買い込んで毎日飲んだっけ。

後は、売れなかった外れ商品なんかもあったなあ。

意外とうまくて、はまっても生産中止で買えないのはかなしかった。


「さて、ここにしましょうか」


ここは、僕の夢の中だ。

若い頃の思い出のディスカウントスーパーだって開店します。

ボロアパートのすぐ近くに本日オープンです。


「おおっ!!」


目の前にあらわれたディスカウントスーパーに全員の目が輝いている。


「では、入りましょう」


店に入ると、まずは野菜と果物が並んでいる。


「す、すごいです。見た事も無いものばかりです」


ジュラさんが、色とりどりの果物を見て驚いています。


「美味しいですよ。おすすめはシャインマスカットです。これです」


僕は1つぶ取って、ジュラさんの口に入れてあげた。


「ふふぁっ、あ、甘いです。お、おいしーい」


その言葉を聞くと全員が、シャインマスカットに群がり、はげたかのように食べ始めました。


「ここは、僕の夢の中です。自由に食べても大丈夫です。おおいに楽しんでください。シエンちゃん、リエル君、オルパちゃん、モルチェちゃん、メルノちゃん、ネイラちゃん、皆はチョコレートがどこかにあるから探してみてください。とてもおいしいですよ」


子供軍団には、チョコレート探しという宝探しのゲームでも楽しんでもらおう。

子供達は目を輝かせて走りだした。


「うわあぁー! からい、からいのじゃーー!!」


じいさんが3個入り、98円のタマネギを袋から出してかじって涙まで流している。

よりによって、タマネギをかじるかなあ。


「じいさん! これは煮たり焼いたりして食べる野菜だ。カレーに入れると滅茶苦茶美味いんだ」


「カレーとな?」


「おおっ!! じいさんでかしたぁー!! そうだぁー!! 材料を集めればカレーが食える。アルプの力があれば本物が食える。朝飯はカレーだーー!!」


そうと決まれば、材料を1000円分で用意してみよう。

僕はカートを持って来て、タマネギと人参、ジャガイモを放り込んで、カレールーをみた。

うむ、蜂蜜が溶けている奴が特売で、128円で売っている。

こんなもんだったよなあ。なつかしい。

給料が変らんのに、物価があがったからなあ。


カレーもおちおち食べられない。

ご飯だって食べられない。

こっちに来る前の主食は、88円の食パンだったよなあ。

あと必要な材料はお肉だ、合い挽きが100グラム78円、五割引のシール付きがある。

うむ、これだけあれば、十分作れるな。


「あの、何をしているのですか?」


ジュラさんが、左手にシャインマスカットを1房持って、右手でもぎ取って食べながら聞いて来た。


「朝ご飯にカレーを作ろうと思いまして」


僕は、カレールーの箱を見せた。

甘口と書いてあるカレールーだ。

やっぱり、カレーは甘口が1番だ。


「美味しそうですね」


「飛びますよ。ふふふ」


「まあ」


「あったぁーー!! ありましたぁーー!!」


「この声はリエル君ですね。元気で楽しそうないい声だ」


僕は声の方へのんびりとむかった。


「そうですね。デミル様も、とてもうれしそうです」


「えっ? そうですか?? そうかもしれませんね。あの子は、あの年でひとりぼっちですから、心配していたのです」


「うふふ、それを言ったら、家のメイドはみんな、一人ぼっちですよ」


「えっ? ステラさんもですか?」


「はい、この国は一人ぼっちが多いですわ。すべて人間のせいです」


うっ!

最後の言葉を言ったとき、ジュラさんの瞳に憎悪の炎が見えた気がしました。

でも、シャインマスカットを一粒口に入れると、幸せの表情に変りました。


「ぎゃあぁぁぁあぁぁぁ!!!!」


シエンちゃんの悲鳴です。


「ど、どうした!?」


僕は、心配でお菓子コーナーに向かいながら声を出していた。


「うまいのじゃあぁーーーー!!!!」


シエンちゃんが、チョコレートを口一杯に入れすぎて、口の回りがネチョネチョです。

それだけではなく、手も服も床もネチョネチョです。

4人の美少女メイドもシエンちゃんと同じ状態です。


「ひええぇぇーー!!」


さすがの、ジュラさんも悲鳴を上げました。


「デミル様、これはおいしいですね」


リエル君は、ひょっとすると育ちが良いのかも知れない。

行儀良くすこしずつ食べている。


「君も、シエンちゃんと同じようにしてもいいんだぞ」


「ええぇぇーっ!?」


リエル君はとても嫌そうな顔をした。

同じ子供でも、あれは嫌なようだ。


「こっちに来てごらん」


リエル君はチョコレート、ジュラさんはシャインマスカットを手にしたままついて来た。

僕はお菓子コーナーから、スイーツコーナーへ移動した。

ショートケーキや、シュークリーム、エクレア、プリンがある。


「わあぁー!!」


リエル君と、ジュラさんの瞳が輝いた。


「おすすめは、シュークリームとプリンだな」


僕が一つシュークリームを食べて見せた。

生クリームとカスタードクリームが2層になっている奴だ。

夢の中なので、生クリームは大量に増量しておいた。

2人とも僕の真似をして、一口食べた。


「おいしーーい!!」


2人がスイーツコーナーを楽しんでいると、茶色のベチョベチョ軍団がやって来てスイーツコーナーをベチョベチョにした。


じいさんとステラさんが静かだと思ったら、2人して惣菜コーナーで弁当をむさぼっていた。

カツ丼やお寿司、フライにたこ焼きを食べていた。

せっかく楽しんでいるので、皆をそのままにして僕は目覚めてカレーを作りたいと思っている。


「アルプ、僕が起きるとこの夢はどうなるのかな?」


「ニャ! この夢はもうアルプが記憶しましたニャ。デミル様が起きてもそのまま維持できますニャ」


緑の猫耳幼女のアルプが、姿を見せてくれた。うん、かわいい。


「じゃあ、皆はこのまま夢を楽しませてやってほしい。僕は目覚めてカレーを作るので、さっきのショッピングカートの中の物をサイドテーブルに出して置いてくれないか」


「わかりましたニャ」


僕は、アルプの頭を優しくなでた。

アルプは目を細めてうれしそうにしてくれた。猫のようにかわいい。

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