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第10話

 『クイーンサマ!』『ナカマガ』『コロサレタ!』『メチャツヨノボウケンシャガ!!』『ウケツケジョートシロイローブダ!!』『ユルセナイ!』『コレ、テキノ』『カミ、キッタラオチタ!!』『ウニョウニョ!』


 ゴブリンの森の最深部の洞窟にて、ゴブリンたちが騒ぎわめく。


 洞窟の最奥には石の玉座があり、そこに座るはゴブリンたちの王。


 スラリと長い手足に、バキバキの腹筋、緑色の長い髪を持つ美しい女。


 ゴブリンクイーンは、騒ぐゴブリンたちの前でゴブリンが差しだした証拠品を手に取って眺めた。


「これは……スライムの一部。ピンク色……そか、スライムクイーン……冒険者に化けて我らを闇討ちねぇ……うふふ、いいこと考えちゃった」


 ゴブリンクイーンはウニョウニョ動くスライムの一部を触りながら笑い、傍らのとげ付き鉄こん棒を担いで席を立つ。


「お前たち! これはスライム達からの宣戦布告よ! 奴らを討つ! 備えよ!! 報復よ!!!!」


 うおおおおおおおおお!!!!


 ゴブリンクイーンの力強い宣言に洞窟内のゴブリンたちが吠えた。




 早朝、畑仕事に出ようとしたジジは、ゴブリンの血にまみれたクーデレがグロッキー状態のサーリャを担いで≪ロウヘイノヤカタ≫に戻ってきたのを目撃する。


「ど、どうしたのじゃ!? おお、サーリャ! 大丈夫か!!」


「安心してくださいマスタージジ。サーリャさんは夜通しゴブリンと戦って疲れているだけです。傷は一つもありません」


「なんじゃ、そうじゃったか……、ほっ」


 あまりにも素早く安心するジジ。


「も少し心配しなさいよクソ爺……」


 サーリャが悪態をつくが、ジジは耳が遠くて聞こえていないようだった。


 クーデレはジジに受付嬢スキル・営業スマイルを向けた。


「サーリャさんは立派にクエストを完遂しましたよ。マスタージジも、もう少し彼女を信じてあげたらいかがでしょう」


 クーデレの言葉にジジは小さくため息をついて、サーリャを優しい目で見降ろした。


「そうじゃな。まさか夜通し戦ってくるとは思わんかったよ。あんなに体が弱かった子が大したもんじゃのう……。」


「……クソ爺」


 今度の悪態はどこか照れているような気配があった。


「まあ、まだまだ魔法の腕は半人前なので、クエストには私が同行しますよ。ですからマスタージジは安心してサーリャさんの冒険者活動を許可してあげてはいかがです?」


 クーデレのそんな申し出に、クーデレに背負われているサーリャが一番驚いた。


「え? え……?」


「そうじゃの。クーデレさんが補助してくれるのならば安心じゃな。サーリャ、冒険者活動を正式に許可しよう。己の信じた道を進むがよい……」


 サーリャの頭をジジのクマのような手が優しく撫でる。


 彼女はクーデレの背中に顔を押し付けて


「ありがとう……クーデレ、さん……」


 震えながらつぶやくのだった。


(……家族に認められるのはこの上ない喜びだからな)


 クーデレは自然と微笑んでいた。

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