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第26話 おこしやす、修学旅行は事件の香り6:大阪でナンパ&迷子大騒動

 1. 道頓堀で粉もん天国


 修学旅行二日目の朝、女子六人組は大阪・難波に降り立った。


 アーケードを抜けると、ど派手なグリコ看板とタコ焼きの香りが迎えてくれる。


「うわぁ、これがテレビで見る“おおさか”どすか!」


「あずささんの京都イントネーションが可愛すぎる件」


 まずは朝タコ焼き。屋台の兄ちゃんが鉄板を回す手元を見て、鸞が英語で実況を始める。


「Look at this professional turning! Perfect 180-degree rotation!」


「ええから早よ食べろ!」


 アツアツを口に入れた瞬間、全員が「ハフッ!!」と跳ねる。ソースと青のりの香りでテンションは急上昇。



 2. ナンバのナンパは勢いが違う!?


 心斎橋筋を歩き出して数分。片手にクレープ、もう一方にイカ焼きを持つ陽菜が叫んだ。


「ちょ待って! なんかイケイケ兄ちゃんが近づいてくる!」


 サングラス+派手シャツ三人組。


「お嬢ちゃんら、どこから来たん? 良かったら案内したげよか?」


 お決まりの台詞に、沙耶香が「出たぁ~」とヒソヒソ。鸞が一歩前へ。


「Sorry, we already have a perfect guide――Google Maps♪」


「グ、グーグル……?」


「それでもご案内させて?」


「せやなぁ……ほな**“大阪城の歴史を英語で5分プレゼン”**できたら考えたるわ!」


「ムリムリムリ!」


 ナンパ兄ちゃん撤退。周囲の観光客から拍手が起こる。


「さすがナンパ撃退女王!」


「あずささんも次いってみよか?」


「そ、それは勘弁……!」


3. USJ(仮)でフリーダム迷子


 午後は班別行動最大の目玉、**U☆WORLD スタジオパーク**へ。


 入場ゲート前、人、人、人! 外国語も飛び交い、テンションと音量がインフレ。


「ハリウッド・ドリームの待ち時間…2時間!?」


「お土産ショップも入場制限!?」


 地図を広げた深雪が指示を出す。


「二手に分かれてチケット引換とロッカー確保! 30分後にスヌパレ前集合!」


 そこで事件は起きた。


 ロッカー前の人波に揉まれ、あずさがふと振り返ると、鸞の姿がない。


「……え?」


 一気に胸が締め付けられる。スマホを取り出す手が震えた。


> あずさ:『どこどす?』

> 鸞:『ドラゴンコースター並んでるとこ! どこか分からん!』

> あずさ:『ドラゴンコースター3つあるんどす!』


 翻訳アプリが誤変換し、チャットは“竜巻農園にいる”など謎ワードに化ける。


 園内アナウンスは英語・中国語・韓国語の連続。情報過多に頭が真っ白。


「まず日本語プリーズ……!」


 あずさは泣きそうになりながらも、深呼吸。  

耳を澄ませば、周囲の雑踏に混じって――聞こえた。


「AZUSAAAA——!!」


 遠くステージ方向、観覧車の下。あの金髪が手を振っている。


 人垣をかき分け、息を切らしながら駆け寄る。


「もう……心配したんどす……!」


「ごめん! でも、でっかいゾンビが出てきてテンション上がってもうて!」


「あほ! 次は絶対離れへんと約束どす!」


「Yes, ma’am!」


 二人は指切り。周りの外国人カップルが「So cute!」と笑顔で写真を撮っていた。


4. 大阪ナイトは粉もんリターンズ


 夜は道頓堀へ戻り、ネオンきらめく川沿いでお好み焼きパーティー。


「自分でひっくり返すん? 怖い!」


「こうや! フリップ・アンド・スライド!」


 鸞がヘラ捌きを披露するとプロ並みの円盤が完成。  

あずさは京風に九条ねぎを追い打ち。  

ソースがジュワッと焦げる匂いに、六人は幸せの溜息。


「今日だけで粉もんカロリー1年分……」


「でも旅はカロリーゼロ理論どす!」



5. 宿へ —明日に続く光—


 ホテルの部屋に戻ると、窓からは梅田の摩天楼。  

その灯りを見つめ、あずさは囁いた。


「……鸞さん。さっき迷子になったとき、心臓止まるか思いました」


「うちも。あずささんが見えへん瞬間、世界がモノクロなった」


 そっと肩が触れ合う距離。  

外は賑やかなネオンでも、二人の世界は静かで温かかった。


「明日、神戸も一緒に歩こうな」


「ええ。今度は、ずっと隣に」


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