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第12話 アレクシスの助け





アルバート男爵の反撃は、タニア・ローズウッドを限界まで追い詰めていた。彼は不正を隠蔽するため、タニアの評判を落とし、彼女の動きを封じようとしていた。さらに男爵の手下たちが邸宅に侵入し、彼女の命を狙ったことで、危機は最高潮に達した。



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刺客の襲撃


夜更け、タニアは書斎で次の計画を練っていた。邸内は静まり返り、外から風の音だけが聞こえる。だが、その静けさを破るように、微かな足音が響いた。タニアはペンを置き、警戒を強める。


「……誰かいるの?」

彼女は低く呟き、懐に隠していた短剣を手に取った。


物音のする方向に向かうと、暗がりの中に人影が動いているのが見えた。男爵の送り込んだ刺客だと直感したタニアは、声を張り上げる。

「止まりなさい!」


しかし、侵入者たちは立ち止まるどころか、武器を構え彼女に迫ってきた。リーダー格の男が冷たい声で言い放つ。

「タニア・ローズウッド、お前にはここで消えてもらう。」


タニアは身構え、冷静さを保とうとしたが、相手の人数の多さに内心の緊張は隠せなかった。



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アレクシスの救援


刺客たちが一斉に襲いかかろうとした瞬間、鋭い剣の音が夜空を裂いた。次の瞬間、暗闇の中から現れたのは、アレクシス・フォードだった。


「遅れてすみません、タニア様。」

アレクシスは軽い調子で言いながら、剣を巧みに振るい、刺客たちを次々と倒していく。その動きは洗練されており、一切の隙がない。


「どうしてここに……?」

タニアが驚きと動揺を滲ませて尋ねると、アレクシスは冷静な声で答えた。

「あなたに危険が迫っていると聞いたので、少し心配になっただけです。」


彼の剣術は卓越しており、刺客たちは次々と倒され、残った者たちは恐れをなして逃げ出した。庭に再び静寂が戻ると、タニアは短剣を握ったまま立ち尽くした。



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アレクシスとの会話


戦闘が終わり、アレクシスは剣を鞘に収め、タニアに向き直った。彼の表情は落ち着いており、まるで何事もなかったかのようだった。


「怪我はありませんか?」

アレクシスがそう尋ねると、タニアは一瞬言葉を失ったが、すぐに冷静さを取り戻し答えた。

「助けてくれたことには感謝します。でも……あなたは一体何者なの?」


彼女の問いかけに、アレクシスは微笑みを浮かべながら首を軽く傾けた。

「私はただ、あなたを守りたいだけです。それ以上のことは、いずれ必要なときにお話しします。」


「守りたい……ですって?」

タニアは疑念を隠せなかったが、彼の言葉の裏にある真意を探ろうとしても、彼の態度は一貫して穏やかだった。


「それでは、私はこれで失礼します。また何かあればすぐにお呼びください。」

アレクシスはそう言うと、夜の闇の中に姿を消した。その背中を見送るタニアの胸には、感謝と不安が入り混じっていた。



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揺れるタニアの心


タニアは一人庭に立ち尽くし、深呼吸を繰り返した。アレクシスが助けてくれなければ、命の危機にさらされていたことは明白だ。だが、彼の行動には依然として多くの謎が残っている。


「彼の目的は何なの?本当に私を守るためだけに……?」

タニアは頭を抱えながら呟いた。彼の助けを受け入れるべきか、それとも距離を取るべきか。復讐を進める中で、誰も信用できない状況が続いていた。


だが、彼女はすぐに考えを振り払った。今はアルバート男爵への計画を進めることに集中すべきだ。感情に流されては、復讐の道を踏み外してしまう。


「アレクシスが何者であろうと、私の目的は揺るがない。」

タニアは自らにそう言い聞かせ、再び書斎に戻った。



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決意を新たに


書斎に戻ったタニアは、紅いドレスを眺めながら静かに息をついた。それは母の形見であり、彼女に復讐の力を与える象徴だった。


「男爵……次はあなたの番よ。」

その言葉に込められたのは、タニアの冷たい決意だった。どんな困難が待ち受けようと、彼女は自分の目的を果たすために全力を尽くす覚悟をしていた。



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