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第19話 新たな旅立ち

 紅いドレスを脱いだタニア・ローズウッドは、自室の窓辺に立ち、朝焼けに染まる空を見つめていた。その瞳には、これまでとは違う希望が宿っていた。復讐という目標を果たし終えた彼女は、ようやく自分自身の未来に目を向けることができるようになったのだ。



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別れの準備


タニアは手紙を書くために机に向かった。それはこれまでの協力者たち、特にリゼットへの感謝を伝えるものであり、彼女がこの土地を離れる決意を告げるものでもあった。


「リゼット、あなたには本当に感謝しているわ。もしあなたがいなかったら、私はここまで来ることはできなかった。」

彼女はペンを走らせながら、静かに呟いた。リゼットは長い間、彼女の計画を支え続けてきた信頼できる友人だった。だが、これからの旅は、自分一人で進むべき道だとタニアは考えていた。


手紙を書き終えると、タニアはそれを封筒に入れ、机の上にそっと置いた。その瞬間、心の中に込み上げる感情を感じたが、彼女は深呼吸をして冷静さを取り戻した。


「これでいいのよ。新しい人生を歩むためには、過去を振り返らない強さが必要だわ。」



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紅いドレスとの別れ


タニアはクローゼットを開け、中に丁寧に掛けられた紅いドレスを取り出した。それは、母の形見であり、彼女が復讐を遂げるための象徴だった。だが、今となっては、それを纏う必要はもうない。


「ありがとう……あなたは私を支えてくれた。でも、もうこれでお別れよ。」

タニアはドレスを優しく抱きしめながら、心の中でそう呟いた。


ドレスを大切に箱にしまい、リゼットに託すために部屋の片隅に置いた。それは、彼女が過去と決別し、新しい自分として生きるための象徴的な行為だった。



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新しい衣装


紅いドレスをしまった後、タニアは新しい衣装を選び始めた。これまでの華やかさを象徴するドレスとは違い、彼女が選んだのは、動きやすく実用的で、それでも品のあるシンプルな装いだった。


「これが、私がこれから歩む人生にふさわしい姿ね。」

タニアは新しい服に袖を通し、鏡の前に立った。その姿は、かつての彼女とはまるで別人のようだった。華やかさを捨てた代わりに、彼女の瞳には強い意志が宿っていた。


「これでいいの。これが本当の私。」

タニアは自分にそう言い聞かせるように呟き、微笑んだ。



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リゼットとの別れ


旅立ちの準備を終えたタニアは、最後にリゼットを呼び出した。忠実な協力者であり、友人でもあった彼女との別れは、タニアにとって最も辛い瞬間だった。


「リゼット、これまで本当にありがとう。あなたのおかげで、私はここまで来ることができたわ。」

タニアは穏やかな声で感謝を伝えた。


「タニア様……私にとって、あなたのお側にいられたことが何よりの誇りでした。」

リゼットの目には涙が浮かんでいた。


タニアはリゼットの手を取り、優しく握り締めた。

「これからは、あなた自身の人生を歩んでちょうだい。そして、いつかまた会いましょう。その時は、お互いに新しい未来を話し合えるように。」


リゼットは涙を拭い、力強く頷いた。

「タニア様、どうかお元気で。そして幸せを見つけてください。」


二人は短い抱擁を交わし、最後の別れを告げた。



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旅立ちの朝


翌朝、タニアは荷物をまとめ、静かに屋敷を後にした。馬車に乗り込む前に、彼女は振り返り、これまで住んでいた場所をしっかりと目に焼き付けた。


「さようなら、そしてありがとう。」

彼女は小さく呟き、馬車に乗り込んだ。


馬車がゆっくりと動き出し、屋敷が遠ざかるにつれて、タニアの心は軽くなっていった。復讐の重荷から解放され、彼女はようやく自由な未来に向かうことができる。


窓から差し込む朝の光がタニアの顔を優しく照らしていた。彼女はその光に目を細めながら、小さく微笑んだ。


「これが新しい私の始まり。どんな未来が待っているのか楽しみだわ。」



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