朝が来てまず最初にしたことは、語るほどではないがションベンを済ませた。
夏休みがまだ続いていることもあり、学校に行く必要がないため再び布団に戻った。
「菊川くん。早くきてっ」
「はい。いまいきます」
ぎゅーと抱きしめて見つめ合った。
ふふ、とお互い照れくさくなって笑いながらキスをしてまた照れて。典型的なバカップルみたいなことをしていた。
「菊川くん。菊川くん。好き。好きだよ」
言いながら距離を詰めてくる彼女はたまらなくかわいい。元気になってきちゃったよどうすんのこれ。
「先輩、キスしていい?」
「んっ。ちょっと待ってね。歯磨きしてくる、起きたばっかだし」
「あっ。俺もします。無神経ですみません」
「ううん! 一緒に磨こ!」
で、典型的なバカップルみたいな理由で横並びで一緒に歯を磨き終え……。
「んっ。ん」
濃厚なキスで脳がとろけそうになってます。
「先輩、前から思ってたんですけど慣れてません?」
「舌でぶどう転がしながら練習してたから」
「ぶどうになりたい人生でした」
「ぶどうになるより、今のままの方がいいよ?」
「いろいろ舐めてくれるんですか!?」
「い、いろいろ……?」
ダメだこれ以上言ったらポリスメンに捕まってしまう。自重しなければ。
「たとえば……。乾いてるところとか」
唇を食べられた。
食べられた、というより、咥えられた? なんて言ったらいいのかな、舐められた?
「いつも乾いてるよね。これからは私が潤すからね」
可愛く言いながら背伸びしてキスしてきた先輩を愛おしく思った時にわかった。
今、俺のこと抱いている気持ちが愛情だって。
そして、先輩から感じるこの気持ちが愛なんだって。
「菊川くん、どうしたの?」
「え?」
「ごめんね気持ち悪かったかな、重かったかな、ごめんね。悪気はなかったんだよ」
動揺して泣きそうな先輩を見て気が付いた。
ーーどうして俺は泣いている。
ーーそして答えはすぐに出た。
「愛を、すごく感じました」
「……そっか。伝わって嬉しい」
「先輩、結婚しましょう」
「え!? うん! しよ!」
「再来年18になるんでその時に!」
「……学生結婚?」
「はい。この幸せを手放したくありません」
恋は自然が作ったもので、結婚は人が作ったもの。
どちらも終わりは必ず来ると言う。
けれど、先輩とならどんな形になっても、死んでも、繋がっていける気がするから。
愛したい、愛されたいの関係からここまで来れたんだ。だからーー。
「それはダメ! 仕事とかもあるし、将来のこと考えるといろいろと」
「……そうですよね。先走りすぎました」
「ううん。でもやっぱり結婚しちゃおっか」
「……いいんですか!?」
「うん。でも子供は安定してからね!」
「わかってますよ!? でもやっぱりもっとちゃんとしてからにしましょうか結婚は。結婚式とかもちゃんとすぐしたいですし」
「好き! 大好き!」
抱きついてきた先輩を受け止めて、布団に押し倒した。
「先輩。俺のこと嫌いにならない?」
「なるわけじゃん。お互いもう知らないことないでしょ?」
「お互い知らないこと、ありますよ」
「え! なにがあったっけ?」
「裸」
「……………………」
「とことん、贅沢していいんですよね?」
「……私じゃ贅沢とは言えないよ?」
「俺からしたら極上の贅沢ですよ?」
「……菊川くんのも見せてよ?」
「……お粗末ですけどいいですか?」
「……その方がありがたいかな、大きいと怖いんっ」
その口を塞ぐように唇を重ね、胸に触れた。
「……ほんとにしていいの?」
「……菊川くんの彼女なので」
「やばっ。俺の彼女かわいすぎ」
日が登って街を照らす時間に俺たちは太陽より熱い愛を育んだ。