麻里は稽古を終えて、武道館のわきの並木道を歩いていた。植え込みの奥、街灯の光の当たらない暗がりに、見るとはなしに目を向けて麻里はギョッとした。縁の石段に横に並んで腰を掛ける二人の人影がある。あのときと同じ背格好、あのときと同じ子供を抱きかかえるような姿勢、安達英子と弘樹にまちがいない。麻里は何も気が付かぬふりをして、息を殺して通り過ぎた。
帰宅して気持ちを落ち着けてから、朱良に電話をして見たことを伝えた。