ようやく弘樹が朱良と帰宅して、ダイニングルームに顔を出した。
「遅かったな」と和也。
「途中で、寝間着と下着を買っていたの」と朱良。
「順番にシャワーを浴びてきてちょうだい」と令子。
「一緒に入るわ」と朱良。
「ああ、その前に紹介しておくよ。娘の絵里だ」と和也。
「絵里、この人がお客さんの朱良さんよ」と令子。
「この人が弘樹兄さんの本当のお姉さん?」と絵里。
その場が一瞬凍りついた。
「麻里姉さんと弘樹兄さんは血がつながってなかったのね。なんかおかしいと思ってた。他人みたいじゃなくて、本当に他人だったんだ」と絵里。
「絵里、さっきの話、聞いていたの?」と令子。
「お父さんのことがますます嫌いになったわ」と絵里は背を向けて廊下の先の階段をあがって行った。