三人目の被害者の親が警察に届け出て、犯罪が明るみに出た。何台かのパトカーが高校の敷地に入り、校内を捜査した。証拠は見つからず、犯人も見つからずじまいだった。
一度、早川友里が家に蓮を訪ねてきたが、蓮が激しく友里を罵って追い返した。自分の兄が困っている時に何もしないで眺めているような女は、友達とはいえない。もう二度と顔を見せるな、と。
その後、弘樹がひょっこり家出から帰ってきた。風邪をひいて辛くなったそうだ。朱良が風呂に入れて寝かせた。少し痩せたようだと言って蘭が食事を作った。
珍しく正一から朱良に電話があった。
「お前の母校の校長から連絡があったよ」と正一。
「どんな話かしら」と朱良。
「お前も見当はついておると思うが、八角高校でのトラブル解決の手助けの依頼じゃ。道場に正式に助けを依頼したいと言ってきたんじゃ。わしは当主を次の代に譲って隠居したと言ったら、新しい当主の連絡先を教えてほしいと言われた。だから、お前の連絡先を伝えておいた」と正一。
「弘樹が当主だと伝えたの?」と朱良。
「いや、言っとらん。弘樹に暴れられたら大変なことになるからの。言うわけないじゃろ」と正一。
「お祖父さん、あの人たちは私たちの技を外法と言っているようだけど、なぜなの?」と朱良。
「それは、神や仏の教義に合わんからじゃ。手におえんから外法と言っておるんじゃ。気にするな」と正一。
「でも私たちまで外法扱いなんてひどいわ」と朱良。
「この地域は、昔から常ならぬ技の使い手が結構出るんじゃよ。お前さんや弘樹のようにな。それで手を焼いておるんじゃ」と正一。
「
「それは宗教団体間の互助組織じゃよ。常ならぬ技の使い手と敵対したときに、手持ちの使い手を融通しあう組織じゃ。信用取引じゃから、貸し借りが面倒なんだそうじゃ」と正一。
「私たちは入ってないの?」と朱良。
「わしらは格闘技団体とみられておるから、一段下という扱いじゃ。あまり気にするな」と正一。
「持ち駒みたいな扱いね」と朱良。
「その通りじゃ。お前さんレベルだと相当高い値がつくじゃろうな」と正一。
「あまりいい気がしないわ」と朱良。
「弘樹には話さん方がいいじゃろうな」と正一。
「まったくだわ。どんなに怒るかわからないわ」と朱良。