弘樹は八角高校に復学した。朝登校して教室に入ると皆が笑顔だった。誰もが、まるで退学処分などなかったかのように振る舞っていた。気味が悪くて、弘樹は逃げ出したかった。結衣のいるクラスに挨拶に行った。
「弘樹君、おはよう!」と結衣はいつも通り声を掛けてくれた。「来てくれたのね。」
「うん」と弘樹。
「昼休みにお弁当を持ってここにきて。一緒に食べよう!」と結衣。
「わかったよ」と弘樹。昼休みの居場所が見つかって、弘樹は少しほっとした。
捕まった五人は退学処分にならなかった。学園が最後まで教育に責任を持つ、という説明だった。
弘樹は釈然としなかった。五人のうち二人は技の使い手だったが、大した技量ではなかった。素質もない。本人たちは、常人離れした技を習得できてうれしさのあまりに、犯罪に走ってしまった、と説明した。校外にも余罪があるらしい。
弘樹たちの関心は、罪を犯した生徒たちではなくて、誰が彼らに技を教えたのかだった。出どころはすぐにわかった。市内にあるスポーツジムで習ったと飯島と八木がすぐに口を割ったからだ。しかしそれは八角高校の管轄ではない。弘樹たちはそう思っていた。