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第8章 試合

第62話 依頼

 朱良は校長に再び呼び出された。あいさつもそこそこに校長は言った。「また例の仕事をお願いしたいのだ。もちろん正式な依頼だ。」


「校内の問題は片付いたのではないですか」と朱良。


「いやいや、そんなことはない。うちの生徒を外法の道に導いた人物がわかったのだ」と校長。


「警察に捜査してもらうべきではないでしょうか」と朱良。


「うちの生徒に外法の術を教えた、なんていう理由で警察は捜査をしてくれないよ」と校長。


「だからといって、私たちがその人物を処罰することはできません」と朱良。


「そうではないんだ」と校長。「どこから説明すればいいかな。実は外法の人物に対処するための人材を派遣するというか融通する団体のことは、知っているだろう?」


「ええ、真守まさもり会という名前だけですが」と朱良。


「正式名称はそうなのだが、通称は『正森まさもりネットワーク』だ。その団体は、外法の人物の情報を集めている」と校長。「それだけではなく、場合によっては外法の摘発と言うか処分を奨励しているんだ。そして報奨金を出す。自分の管轄内での外法のトラブルは自分で解決するのが原則だ。管轄の関係者が含まれる場合も、できるだけ自分達で処理することになっているんだ。」


「今回のケースでは、私たちの生徒が関係しているので、私たちが処理するように要請されている。ただし、今回は正森ネットワークから些少だが報奨金が出るんだ。どうだろうか?」と校長。「前のケースよりも報酬はいいよ。」


「事情は分かりましたけど、当主が決めることです」と朱良。「もしお断りしたらどうなりますか。」


「それは困るんだ。要請を断ると私たちの肩身が狭くなる。他の団体から人材を派遣してもらうことになるので、場合によってはその費用を負担することになってしまう。どうか引き受けてもらえないだろうか」と校長。


「実はこの地域では、外法のトラブルが少なくとも数年に一度は起こっている。それで、君は知らないかもしれないが、以前から花山道場を頼っていたのだ。先代の修羅氏に依頼をしていた。私も会ったことがある。がっしりした体つきの男性だった。今回も伝手をたどって道場に連絡を取ったら、君にたどり着いたのだよ。」


「君に依頼するのは筋違いではないと思うのだが、どうか頼みたい」と校長。


「とにかく、当主に話します」と朱良。


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