【本文】
夢を見ていた。
宵闇の天幕の中――
大きなおっぱいを両手で鷲づかみにしてもみもみしている夢だ。
手のひらに吸い付く柔肌の感触。脂肪ゆえに少しだけひんやり。もちっとした重量感。
まるで現実。人差し指でなぞるようにして、徐々に山頂を目指すと。
「はうん……あぁん……そんなにじらさないで」
耳元で熱い吐息がASMRした。
背筋がぞわる。
シャンシャンとは思えない艶めかしさだ。
おかしい。小娘の胸に小玉スイカサイズのおっぱいが並んでいるはずがない。
だから夢だと判断できる。
夢だし……なにやってもいいか。
声の主が私の耳たぶを軽く噛んだ。
「んちゅ……」
私は――
おっぱいから手を離すと身体を入れ替え、女をうつ伏せにする。背中に馬乗りになると女の顎を片腕でぐいっと持ち上げた。
背中を強制海老反り。女の胸がばいんと揺れる。
空いた手で女の鼻の穴に指をつっこんで引っ張り上げた。
「あがっ! あががががが!」
「夢だから無罪! 夢だから無罪!」
鼻フックキャメルクラッチ。一度試してみたかった技だ。
たぶんあれだなぁ。夢の中でこういったことを無意識のうちにやってしまうから、私の寝相って悪いんだと思う。
夜襲を受けても自動反撃。メイヤ・オウサーに死角なし。
「やめてやめて助けてぇ殺さないでぇ! 折れる! 背骨が折れちゃうからぁ!」
「夢だから大丈夫だろ」
「大丈夫じゃな~い! 起きて! 目を覚まして!」
「夢だと痛覚ないっていうからな。現に私は全然痛みを感じていない。つまりこれは……夢ッ!!」
「技かけてる方だからでしょ! こっちは痛いの!」
声もしゃべり方も雰囲気もシャンシャンっぽくない。
パッ……と、テント内の魔光ランプが灯った。
つけたのはシャンシャンだ。
「ちょっとぉ。うるさいわよ何暴れてんの……よ?」
あくび交じりに目を擦る元聖女と視線がスパーク。
あれ? じゃあ今、夢だと思って私が鼻フックキャメルクラッチしているのって……誰? やだぁ怖い。
「こ、こんばんわ! 素敵なお嬢さん! 助けてください暴漢に襲われてるんです!」
鼻をふがふがさせて懇願する全裸の少女。
おっぱいぶるんぶるんさせながら、背中に馬乗られている。
少女のお尻から黒い革の鞭みたいな尻尾がしゅるり。先端が矢印っぽくなっていて、いかにも魔族味がある。
紫色の艶やかなショートボブに、虹の光彩を放つ瞳がシャンシャンに懇願した。
これには元聖女も大困惑だ。
「ねえメイヤさん。いったい……なんてことしちゃってくれてるわけ!?」
「キャメルクラッチを少々嗜んでおります」
「夜中にテントに全裸の女の子連れ込んで、どったんばったん夜の大運動会なんて! しかも隣にあたしが寝てるのよ!? 大胆通り越してスリリングなプレイに興じる変態じゃないの! そ、そういうのしたいならしたいって言ってくれれば……」
小娘は後半震えた小声になって、ちょっと何を言ってるのかわからない。
「え? なんて?」
聞き返すつもりでシャンシャンの方に重心を移動した瞬間。
「うきょおおおおおおおお! 折れる! ねえ! 折れます折れちゃうから! 心も体もバッキバキになっちゃうからぁ!」
「夢の分際で泣きわめくな」
「夢じゃない! 現実! 現実見て! あ、あと自己紹介させてくれると嬉しいんだけど」
「なんだ言ってみろ」
「この苦しい体勢のままで? 一旦解放して落ち着いたところで、改めて自己紹介じゃダメ?」
なぞの巨乳ショートボブ魔族が瞳を潤ませる。
シャンシャンの眼差しが「離してあげて」と訴えた。
「いいやダメだね。一発ギャグで私を笑わせることができたら解いてやる」
「滑らせるつもり!? 大けがさせる気まんまんじゃないですかやだもー!」
「裸芸に頼るからいかんのだ」
「これは裸芸じゃなくて、おまえを誘惑するためだったんだけど」
「貴様! 初対面の人におまえだなんて失礼でしょ!」
「ひいいすんません!」
「けしからん乳だ。さあ、笑わせてみろ」
一瞬、間をおくと巨乳はおっぱいをぶるんぶるんとゆすってみせた。
「ヘイジョージ! おっぱいが並ぶと何になるか知ってるかい? そう……パイが列を作るからパイレーツさ!」
「ハッハッハッハ! 傑作だな……死ね」
私は女の鼻の穴にかけた指をさらにぐいっと引き上げた。
「きょわあああああああああああああ!」
「もうやめてあげて! その子の心が壊れちゃうわ!」
「ちょっとお嬢さん! 身体の方も心配して!」
なんだか愉快なテント暮らし。
どうやら夢でもないみたいだし、十分楽しんだので釈放してやろう。
・
・
・
たき火を起こした。
まず全裸に服を着せた。といっても、光沢のあるビキニの上下だ。上も下も布地面積が極端に少なく、ほぼ裸。限りなくカニに近いカニかま。モザがイク必要がなくなる最低限だった。
巨乳を地面に正座させる。その上から蔓縄で後ろ手にしばりあげ拘束は完璧だ。
実に美しい亀甲縛りである。胸が強調されて、盛り上がりも最高潮だ。
うむ、エロい。100点。いや120点。
シャンシャンが私に尋ねた。
「ねえ、女の子の裸とか恥ずかしくなっちゃう童貞君じゃなかったの?」
「夢だと思ってたからな」
「へぇ……怖っ。夢だったらなんでもするんだ」
「夢でなくとも縛り上げたりするぞ」
「メイヤさんって容赦ないのね」
恐れおののけ小娘よ。というか、夢じゃないならもっときちんと揉んでおくべきたった。
揉み揉みしだいておくべきだった。
山頂を制して旗を立てるべきだった。
技を掛けてしまったのは実にもったいない。
で、正座亀甲縛りおっぱいはというと――
「このたびはお騒がせして大変申し訳ありませんでした」
こんこんと頭をさげた。
ゆっさたゆんと双丘が重力に従って揺れ落ちる。
谷間を維持したままなんて、ものすごい重量感だ。
「貴様は誰だ?」
「えっとぉ、サキュルはサキュルって言います」
「一人称を自分の名前にするタイプか。さては可愛いという自覚があるな?」
「あ? わっかる~? けっこう可愛いって言われるんだよねぇ」
軽いぞ、こいつ。
シャンシャンが首を傾げた。
「女の子が夜中に一人で訊ねてくるなんて、よっぽどよね。何があったの?」
「あ! お嬢さんご心配なく。サキュルは大丈夫だから。あのねあのね、家出とか放浪癖とかじゃなくてぇ、魔帝国の偉い人に指示厨されてきました」
つまり刺客か。
「私の寝込みを襲ったということだな?」
「うん! だってサキュルは淫魔だから、エッチなことが得意だし」
「隣に子供が寝てるでしょうが!」
一瞬、シャンシャンが「何言ってるの子供なんてどこにも」という顔をしたが――
「あ、あたしを子供扱いした? 今、完全に売ったわよね? ケンカする? ねえメイヤさんケンカする? グーで殴り合う?」
「私と小娘じゃ相手にならんだろ」
「そんなのやってみないとわかんないじゃない! だいたい、大きい子のおっぱいは揉んで、あたしのは無視するとかひどいと思うの。おっぱいは平等よ! もっと丁重に扱って!」
「さっきから元聖女がおっぱいおっぱい言うんじゃありません!」
シャンシャンとにらみ合うと、巨乳が間に挟まってきた。
「まあまあ二人とも落ち着いて。サキュルが話くらいは聞いてあげるから」
「貴様は偉そうだぞ」
「あなたにあたしの心は解らないわ! 永久に!」
ともあれ、魔帝国からの新たな刺客。
殺意は無かったようだが、いったいどうしてくれようか。
少なくとも――
黙っていればルックススタイル全部ヨシ。
口を開けば残念美少女。
もったいない。もったいないゴーストがお盆に一斉に押し寄せ最後尾2時間待ちをするくらいに、もったいないと思う、ある春の夜の私です。
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