【本文】
クレイジーサイコ両刀(やや百合より)淫魔の話によると、彼女を派遣したのは大娼館という組織だってさ。ふふふ……しーらなーい。
教えろください。で、サキュルが言うには――
魔都の歓楽業の元締めである。大娼館に所属するということは、淫魔として誇らしいことらしいとかなんとか。
サキュルの額を鷲づかみ。頭の中身をローディング。
こいつの記憶、ほぼ十割が可愛い女の子のことばっかりじゃないか。
ふむ。両刀かと思ったが立派なサイコレズだ。ありのままに育ってくれればよかったものを。
百合の間に男を挟むなどという、歪んだ性癖に思想誘導した奴を許してはおけない。
命じた「偉い人」とやらに、今、会いに行きます。(深夜帯)
ひとまずサキュルの頭の中から情報を洗い出し。
大娼館の位置を把握。で、現在その一番エロい……いや偉い人とやらの寝込みを襲うため、取材班は一路魔都へと跳ぶのであった。
神出鬼没の大泥棒。今宵、あなたの夢をいただきます。メイヤ・オウサーは予告状を出さない。
転移魔法で滑り込んだ先はゴージャスな天蓋付きのクイーンサイズベッドの上だった。
部屋は魔光ランプで照らされて、うっすら黄昏色。
ベッドの主を見る。
艶めかしい女だ。スケスケ寝具姿で安眠中。
ウェーブがかった髪は長く、尻もぷっくりしていた。寝息に合わせて尻尾がゆらゆら。
胸は大きい。もはや大きすぎてアレだ。
大玉スイカである。片方だけでも持ち上げるのに両手でいきたくなるサイズだ。
頭バグりそう。シャンシャンに少しだけ、分けてあげることはできなかったのか? だれもが少しずつ優しくなれればいいのに、世界はどうしてこんなにも残酷なのだろう。
時刻は午前三時半。
大娼館の超乳女館主に挨拶する。
「おはようございまああああああああああああああああああす!!」(117㏈)
「きゃあああああああああああああああああああ!」
女館主が跳ね起きた。胸はもちろん四方八方ぶるんぶるんだ。甘い蜂蜜のような匂いがむわっとした。
多分、いつもの私なら色香だのフェロモンだので骨抜きにされているだろう。
だが、今は違う。
私は怒りに燃えている。惑わされるはずがないのである。
女館主がベッドの上にアヒル座りで上目遣い。
「だ、だ、誰?」
「貴様が私の元にサキュルとかいう小娘淫魔を送り込んだ張本人だな?」
「貴男、メイヤ・オウサーね! あ! そ、そういうこと。チェンジ? チェンジってこと? やっぱりあの娘じゃダメよね。本当にごめんなさい。じゃあいっそ、わたくしがお相手をしましょうか?」
察しの良い女だ。嫌いじゃない。
むしろ本来であれば超乳美女は大歓迎。だが――
「そういう話じゃない! 貴様……なぜサキュルを選んだ? 正直に話さなければ……貴様の前髪をぱっつんに揃えるッ!!」
「ひいぃ! やめて! 切らないで! 落ち着いて! 話すわ。だから殺さないで!」
無抵抗で命乞いをされると、ちょっとやりづらい。
ひとまず縛り上げるだけに留めておこう。
親指でピンッと指弾。女の腹部に蔓縄の種がヒット。魔法力は緑の粒に注入済み。着弾と同時に発芽成長拘束完了。
本日の縛り方は――背面観音。背中側で両手を合わせる姿は祈りのそれだ。神々しさすらあった。
SSRくらいのレアリティ。
女館主は平伏した。
「まさか、わたくしが一瞬で屈服させられるだなんて」
「黙れ。こちらの質問にだけ答えろ。なぜサキュルをよこした?」
「ええと……余ってたから」
「なんだと?」
「噂だと貴男の元に送り込まれた刺客は、全員廃人化レベルになるまで嬲(なぶ)り弄(もてあそ)ばれてしまうって……うちの商品を傷物にはできないから」
「人を商品にするのか貴様ぁ!」
「買う人がいるんだから需要と供給よ。それに淫魔にとって指名ナンバーワンをとることは、とっても名誉なの。わたくしも今の地位を自分の魅力一つで勝ち取ったのだから」
女館主が重そうに身体を起こす。
蔓縄で縛り上げた胸がさらに誇張されてパンパンだ。
呼吸も荒く肌が上気して、女はうっすら汗ばみスケスケの寝具が肌にぴたりと張り付いた。
じっと私を見る眼差しに、迷い無し。
「あの子は淫魔としては欠陥品。お客様にお出しできないわ」
「なぜだ!?」
「頭の中身が男の子だからよ」
「うむ! その通りだ。だが貴様は怠った。女の子が好きなら好きで、その才能を生かす方向で育成せず、サキュルを切り捨てたッ!!」
「どうしてあなたがそんなに……あんな子のことを」
カッチーン。私の右手が勝手に女のほっぺたを掴んで、キュッと口をすぼめさせる。
タコみたいな口になり妖艶さが下品な変顔で上書きされた。
「黙らっしゃい! そのおしゃべりな口を塞いでやろうか!?」
「あうあうあぁ」
「この世には、あんな子なんて言われて良い奴はいないのだ」
「ひぇひゃへふぇ」
「ちゃんと喋れッ!!」
「ひゃひいいいい! むひれひゅ~!」
女の頬から手を離す。女は視線を落とした。
「あの子はルックスも身体も立派な淫魔よ。大娼館のオーディションをクリアする千人に一人の逸材。だけど……お客様との疑似恋愛ができない子なの。ベッドに行く前のトークタイム三十秒でチェンジ……チェンジ……またチェンジ……指導してもダメ……もうどうすることも……できなかったのよ!」
「わかる。あんな子、そうそういないぞ」
「貴男、あんな子なんて言われて良い奴はいないって言ったばかりよね?」
「じゃあそうだな。アレな子だ」
「酷くなってるわよ?」
「黙れ! 訊かれたことにだけ答えろ。でなければ館を燃やす」
「ひいぃ! ごめんなさいごめんなさい」
「貴様がサキュルを売った。間違いないな?」
「そ、そうしないと……今度は、わたくしが酷い目に遭うから」
「ん? どういうことだ? 貴様の意思ではないのか?」
女の口は重たい。
私は短杖を取り出した。シャフトに熱を込める。
荒っぽくはなるが、この女には少し焼きを入れる必要がありそうだ。
二度とは元に戻らなくなる恐怖を前に、どこまで耐えられるかな。
「や、やめて! 顔だけは!」
私は女の髪を掴んだ。
「言え。誰に命じられた? 白状しないというなら……貴様の美しく波打つ髪にストレートパーマを当てるぞ」
「それだけはお許しくださいッ!!」
こうして――
女館主はぺらぺらとしゃべり始めた。
大娼館の裏にはさらに大きな闇が潜んでいたのである。
元締めの元締め。イニシャルに「ヤ」のつく職業。
亜人系マフィアがケツ持ちしているようだ。
国が変わっても裏社会の構図縮図は変わらんらしい。
女に確認する。
「つまり亜人系暴力団の『覇王会直系ゴクド組』からの圧力ということだな?」
「え、ええ。貴男を懐柔できる淫魔を送り込めって……性交……もとい成功すればゴクド組の株が上がって、覇王会直参の中でも筆頭になれるから……って」
「ふむ。だが、送り込んだ娘が私に壊されることを恐れて、壊れても良い玩具を選んだ……というのだな」
「他に選択肢は無かったのよ! お願い! 許してちょうだい!」
「いいやダメだね。貴様には……死をもって償ってもらう。キャラ立てのチャームポイントを失い、あいつ誰だったっけとなるがいい!」
問答無用で私は女のウェーブがかった髪にストレートパーマをあてがった。
「ああああああああああああああああああッ!!」
女の悲鳴が心地よい。
男を挟む百合を生み出した罪。あがなうのに死すら生ぬるいのだ。
直毛さらさらとなり、無個性に朽ちていけ。
――さて。
次は元凶。覇王会直系ゴクド組だな。
【リアクション】
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