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22.攻略せよ機械仕掛けの回転ドラム


【本文】

 魔導機械式のスロットマシンはレートで三種に別れる。


 基本は低レートと高レート。メダル1枚から遊べる低レートから入るのがセオリーだ。

 種銭作って10枚掛けの高レートへ。


 で、スロットコーナーの中でもたった一台だけ、超高レート台がある。

 1BET100チップメダル。

 全ラインに投入すれば回すだけで900メダルが溶ける大物だ。


 勝てば最大、100メダルが一万倍になって返ってくる。一夜にして魔貨が億を超える。


 これまでに栄光を手にした者の肖像画が壁に並んでいた。


 強欲そうな爺とオッサンの二人。


 セオリーならたぶん、経営者の関係者だな。


 ああして「当たります」アピールをするものなのかもしれん。知らんけど。


 さて、始めるとしよう。


 低レートのマシンで戦闘開始。


 リールが回る。チェリーにスイカに7にBARと、絵柄はスタンダード。

 最初の二十分は様子見だ。


 頭の中にドラムの絵柄を叩き込む。

 小当たりで繋ぎつつ、リールの滑りの癖を学習し終えた辺りで――


「あっれ~! ぷぷぷ~! なんか減ってない? メイヤさん減ってない? あ? ごめ~ん自慢するつもりはないんだけどさぁ~。サキュル当てちゃったんだよね……ルーレット♥」


 淫魔が尻尾を揺らして私の肩に身を寄せひっついてくる。

 見れば彼女のチップメダルを入れたカップは二つになっていた。


「ダブルのカップでぼいんぼいんだよ! メイヤさん足りないなら少し分けてあげよっか? それともぉこっちのスイカサイズのカップの方が良い?」


 腕に抱きつき横乳を押しつけてくる。

 マントの上からでもわかる弾力感。


 ええい。集中を削ぐんじゃねぇ。今はおっぱいに構っている場合ではないのだ。


「失せろ」

「ひ、ひっどーい! 言い方ぁ! もっとこうあるでしょ。けど、負けててカリカリしてるのも仕方ないかぁ。サキュルは二十分で倍にしちゃったからね。このままバイバイゲームでばいんばいんに増やしまくって、ぐふふ……メイヤさんを百合で挟んじゃおっと! 楽しみだなぁ」

「はいはいお好きにどうぞ」

「あ! 言ったね! 言質(げんち)ゲットぉ! じゃ、サキュルの勝利の瞬間をカスカススロットの前で座して待っててねぇ」


 お尻ふりふりセクシーウォークでサキュルはルーレットコーナーの人混みに消えた。


 まあ、さすが魔都の民。遊び方は知っているようだ。

 こういった場に不慣れなシャンシャンはどうしているだろう。


 いや、心配なんてしていない。

 二人には耳からスパゲティーを食ってもらう。


 再びスロット再開。半分ほど呑まれたチップメダルをまずは取り戻すところからだ。



 三十分と経たず私は高レートマシンについた。

 元手は三十倍ほどに増えている。高レートのデータ収集ができる軍資金だ。


 そんな私の足下で、乳と額をカーペットにつける淫魔が一人。


「さーっせんしたぁ! どうか……どうかこの哀れな淫魔めにお恵みを!」


 サキュルである。両のおっぱいを床に押しつけ扁平させて、土下座ること雑魚のごとし。


 彼女のチップは底をついたらしい。


 高レートのチップメダルを十枚ほど地面に捨てる。


「拾え」

「へへ~! お恵みお恵み! 旦那ぁ! 一生ついていきやすぜ!」


 美少女が三下ムーブ。床に散らばるメダルをかき集めて淫魔は立ち上がった。


「じゃあ十倍にして返すからね! 待っててねメイヤ!」


 るんるん気分で尻尾ふりふり、サキュルはルーレットには懲りたようで、ブラックジャックのエリアへと消えていった。


「五分ってとこかな」



 五分後。私の足下でサキュルが土下座していた。


「頭でも背中でも踏んでくだせぇご主人様! そりゃあもう気の済むまでごりごりと! 今日からサキュルはメイヤ様の足拭きマットになりやすから」


 くるんとへそ天。尻尾をぶんぶん左右に振って、絶対服従のポーズだ。


 周囲の客や従業員の視線などお構いなし。どうやら母親のお腹の中に羞恥心をおいてきてしまったらしい。


 巨乳美少女淫魔がこれでいいのか?


 ま、いいか。


 適当にメダルを鷲づかみ、サキュルの腹のあたりにばらまいた。


「ひゃん! ちべたい! けど気持ちいいいいいい! メイヤ大好きぃ!」

「今度はゆっくり遊べるやつにしておけよ」

「オッケーオッケーCome On! このご恩は百倍にして返すから!」


 ポーカーコーナーに向かう淫魔。


 運ゲーならいざしらず、駆け引きゲーに首を突っ込むとは。


 終わってるな。


 ポーチから煙草を取り出し指先に魔法力を込めて加熱。火をつけ一服する。


 煙の匂いで肺を満たした。


 チルタイム。少し熱くなりすぎた頭を適度に曇らせ落ち着かせる。


 と、リールの動きに「気配」を感じた。


 滑り方は低レートのマシンよりも癖があるが、パターンは読み切っている。


 集中――


 目薬の効果はまだ健在。


 7の目を端から順に並べる。



 7……7……7……。


 7……7……7……。


「ここだッ」


 最後の7をピンポイントで狙い撃ち。


 高レート台の10000倍大当たりを獲得した瞬間、ファンファーレとともに十万枚相当のチップメダルが台から溢れ出た。


 なにやら奥の方で黒服スタッフどもが慌ただしいな。


 気づかれたか? 大事になる前に撤収も……。


 と、おや?


 私ではなくスタッフたちは別のコーナーに集まっている。


 どうやらビンゴマシンで何かあったようだ。


「ならまあ、いいか」


 にしても、サキュルは何度もおねだりに来たんだが、シャンシャンはどうしているだろう。

 まさか一枚もBETせずに保持して終わりなんてことも……。


 割とサイコなパスっぷりを見せる元聖女だが、ギャンブルはしないのかもしれん。


 バーカウンターでアイスティーでも飲んでまったりしているんだろうな。


 高レートのスロットで稼ぎは十分だが、集合時間までまだある。


 超高レートのマシンを冷やかしてみるか。


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------------------------- エピソード23開始 -------------------------

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