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第2話 ギザ歯悪魔とざまぁ契約結んだんですケド!

 来馬晶きばあきら


 文字通りの悪い友と書いて悪友である。

 身長170センチ(俺より1センチ低い!)とても幽霊映画が似合いそうな迫力ある黒髪ロング、前髪垂らしまくりで、目つきが悪く、で、ギザ歯。

 鮫も負けそうな程のギザ歯でにやりとジョーズに迫力ある笑いをぶちかます系ジョーシ。


 普段は、すげえない胸張ってブレザーのポケットに手を突っ込んで偉そうに歩く。


「おい」


 蹴られた。胸見たからか、胸ないのだから事実上見てないのでは? 思考読むな。蹴るな。


 まあ、というわけで、一目でヤバい奴だと分かるが故に誰も関わろうとしない孤高の魔女。


 学校も休みがちだし、授業はかなりの頻度で寝てる。先生も起こしにすら行かないノータッチトペコン。休み時間も近づくなオーラを出しまくりすます、サンタさーん! ってなもんである。噂によると三年をシメたとかなんとか。サバかな。コイツってサバサバしてっから!


「また蹴られるかぁ?」


 ギザ歯で笑うサメでした。コイツってサメサメしてるから! 気を付けて! シメシメシメられちゃうよ!


 そんなやべえヤツが首根っこ掴んできたら普通の男子であればキョドる。

 しかし、俺は普通の男子ではない。


「おい、クソど変態男子、行くぞ」

「へい、姉御」


 ってなもんで、ド変態な上にプライドを細長く切って、油でこんがりきつね色に揚げて、塩少々プライドポテトにしてゴミ箱にダンクシュート出来る底辺野郎小角伏人はその瞬発力を活かし、すぐに従う、振りをしてダッシュで逃亡!

 まわりこまれた! にげられない!



 はい、というわけで、(俺を)シバいたサバならぬサメ女に連れられてやってきたのは竜宮城ならぬ、屋上。


 流石、激ヤバ来馬姫さんである。進入禁止の屋上に恐れもせずに入っていく。俺も勿論恐れはしない。なんたって来馬さんがいるからなあ! 来馬の威を借る小角である。ヒャッハー!


「で、どこが爆笑シーンだ?」

「ねえよ! 爆笑シーンは!」


 来馬がかい摘みすぎる質問をぶちかましてくる。とはいえ、以心伝心。流石従順なる下僕小角伏人である。これだけで意味を読み取る。


 昨日の告白はどうだったのか? 

 そして、フラれシーンはすべらない話に出来そうか、他にオー〇リーのオールナイトニッポ〇に投稿できそうなネタはないか、その事情聴取である。


「死んでもやめんじゃねえぞ」

「なんなの!? エスパー!?」

「テメエが分かりやすすぎるだけだ、ケケケ」


 うわああ、ケケケって笑ってるう……。相変わらずギザ歯を見せつけ笑っう来馬。


 コイツにはずっとこの調子でネタジャン、『おめえのポケットにまだネタ入ってんじゃねえのか!? オラジャンプして見ろよ。チャリンチャリン言ってんだろが、オラ出せよオラオラオラオラオラ!』、で空条徐〇ばりに責めてくる。ちなみに空条〇倫は174センチしゅん。


 昼休みや放課後に屋上に拉致されネタを提供し、解放される。そんな日々を快感に変えられた男、小角伏人ではあるが、今回のは笑えるポイントが見当たらなかったので、守秘義務を守らせていただく。


「いや、別に」

「思春期、気取んな。黙秘権ねーから、全部喋れや。かつ丼、食わせろ」


 理不尽デカ女、来馬により俺は全てをゲロった。勿論、かつ丼もおごった。

 かつ丼屋さんの美味しいかつ丼を食いながら、来馬は笑った。


「げひゃひゃひゃ! あのクソ女、マジで最悪だな!」


 うわあ、げひゃひゃひゃって笑ってるぅう……。GA○KTを神と崇めるジェネレーションな俺としては大分刺さったのだが、針だけに。多分ついてこれないだろうから口には出さず、代わりに肉汁溢れるカツを口に入れながら笑う。


「はっはっは! そういうわけなんだよ! もぐもぐ」

「で、いじめられてるってわけか」

「ごふーっ!!! っけほけほ……お前、なんで」

「……アタシはあのクソ女のことならなんでも知ってんだよ」


 ひええええええ!

 急に激ヤバ女が激クソ女に対する怒りを吐き出すと、ハキ喰らったよわよわバイキングこと小角伏人は気絶する、振りをする。


 これ以上はヤバい。コイツと長い付き合い、3ヶ月とちょっと、あ、コイツと付き合える人間からすればね、当社比当社比、から見た今のコイツの怒りっぷりは尋常ではない。触らぬ来馬にたたりなし。


 来馬は、天羽のことが心から嫌いらしく、俺が天羽が気になっていると伝えたときも、天羽に告白すると宣言した時も異常なレベルでキレた。


『同じ小中で、散々あのクソ女のクソっぷりはクソ知ってるわクソ』


 と、どっかの海のコックばりにクソを多用し、天羽のことを表現していた。しかし、人を表面でしか見られない男、小角伏人容疑者17才は、見事に引っかかり嘲笑の監獄クラスルームに入れられてしまったわけだ。


 というか、今も来馬がクソを連呼している。やめたまえ、ここは誇り高き庶民の場、安い早い美味い丼ぶり屋さんぞ。


 俺は、さっさと会計をすませ、クソ製造機と化したヤバ女を連れ出す。

 クソを出すなら断崖絶壁の崖、じゃなくて、アンチ潔癖トイレである。アンチ潔癖トイレのある公園という名のフリーエンターテイメントワールドにエスケープした。


「あのクソ女がああああ!」


 コイツの天羽に対するキレっぷりが半端なさ過ぎて引く。っていうか、引く通り越してもう推せる。俺の為とかでは全然ないだろうけど、こんだけ怒ってくれてる来馬たんマジ天使泣ける推せる。


「何ニヤニヤ見てんだコラア」


 ぴえん。


「悪いな、お前が散々忠告してくれたのに」

「……で、お前、どうする?」

「どうするって?」

「このままあのクソ女にマウントとられたまま残りの学校過ごす気かっつってんだよクソが」


 あれ? いつの間にか俺もクソられてない?


「よくはねーよ。けど、あっちは学園のアイドル様、こっちは底辺ヲタク。スクールカースト奴隷層の俺に何ができる?」

「……『ざまぁ』してみねえか?」


 ざ、ざ、ざ、ざまぁ!? って!!? アレか!? ラノベとかでよくあるアレか!?


 落ち着け、魅力的な言葉ではあるが、ラノベじゃないんだし……ラノベじゃないのか……う、頭が……


「あのクソ女の悔しがる顔でさっきのカツ丼3杯はイケるだろうな」

「やります」


 悪魔の言葉に思わず、受けてしまう。おのれ……悪魔め、こうみょうなてぐちで……!


「でも、具体的にはどうすんだよ。ラノベなら、実は隠れた才能を持っててとか、美人の彼女が出来てとかになるがラノベじゃない、から……ラノベじゃないから! オレ、サイノウ、ナイ! オンナカンケイ、マジ、ナイ!」

「なんで頭を押さえながら急に宇宙人と化したは知らねえが、お前に才能なんて期待してねえよ」


 ぴえん。


「要はアイツが悔しがる程度に男あげりゃあいいわけだ。そうだな……勉強学年10位以内、腹筋割れてる、女子に複数人告白される。あとは……まあ、とりあえずはこの位で十分だろ。」

「十分すぎるけど! 舐めんな! 俺は雑魚中の雑魚だ!」

「今日イチの声が出てるな、雑魚。まあ、任せろ。お前をオオボラ野郎にしてみせる」

「嘘を吐くのはよくないと思います!」


 この時、反射で突っ込んだ神速の男、小角伏人であったが、オオボラとは大法螺吹きのことではなく出世魚の名前だそうで、ボラの名前の由来は太い腹、ほはら(腹太)から転じて生まれたらしい諸説あり、というわけで為になったねえ~とグーグ〇先生から学んだもう高校生、小角伏人はオオボラ野郎になるべく、来馬から作戦を聞くことにした。


「いいか、女子に告白されるかどうかは時の運もあるが、少なくとも、勉強と筋肉に関してはちゃんとやりゃあできるレベルの話だ」

「嘘だ!!!!」


 ひぐらしがなく頃ではない冬の入り口で俺は叫んだ。そんなレベル上げどうすればやれるのかなかな。


「嘘じゃねえよ、必ずそうしてみせる。が、条件がある」

「条件?」


 条件がある。古今東西国士無双、この言葉でいいことがあったためしがない。


「アタシと契約しねえか?」


 かわいいを被った悪魔との契約で魔法少女になる以上に、やべえを被った激やば悪魔との契約でちょっとマシ男子になるという契約による条件、激やば案件である。小生小便しそうだぜい。イエア!


「ど、どういうことだYO」


 精いっぱいのラッパーといういっぱいいっぱいの虚勢張って聞くと、


「アタシはあんたに必ずざまぁさせてみせる。だからうまくいった暁には、アタシの言うことを三つ必ず聞いてもらう」


 をい、ドラゴンでも世界中に散らばる七つの球を集めてようやく一つの願いを叶えてくれるんぞ。なのに三つだと。やめておけ、それは改悪ぞ。


「ざまぁ出来たら、さぞかし気持ちイーんだろうなあ」


 ぐほおお! 悪魔のハスキーボイスで気持ちイーはヤバ杉晋作。

 急に立位体前屈したくなること山の如し。もとい、俺のは小山だ。俺は正直者、小角。


「……このまま、学生生活、ただ耐えるだけで棒に振るのと、少しでも前向いてやりあうのどっちがいい」


 悪魔のささやきが俺に迫る。


「大丈夫だ、アタシがどんな手を使っても必ずざまぁさせてみせる」


 なんだこの安心感は、いや、分かっている。


 この激やば悪魔女は、必ずやられたらやりかえすヤバん沢直樹なのだ。こと、それに関しては全幅の信頼を置いている。


「わかった、てめえのことだ。悪だくみさせたら天下一品だ」

「よく分かってんじゃねえか、アタシのことを」


 目の前にいる髪も心も真っ黒な女はギザ歯を見せつけながら笑った。


「ああ……そうだな。頼む、俺にざまぁとやらをさせてくれ」

「オーケー、あのクソ女にしょんべんちびらせてやろうぜ」

「お前、本当に汚ねえな!」


 来馬は思いっきりギザ歯を見せて笑った。

 その日、俺はコイツに魂を売った。

 そして、ざまぁを目指す日々が始まるのであった。


 明日から。


「今からにきまってんだろうが、ごらあ」


 ギザ歯こわい、ぴえん。

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