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第5話 ギザ歯が強すぎるんですケド!

 ネタのないシャリのみを堪能された来馬様は今のところ坊主頭がレゾンデートルだと悟りを開いた私が帰ることに許可を下さった後、何かをお与えくださった。


「これはなんでしょうか?」

「なんで敬語だよ。今日の礼だよ。受け取ってくれ」


 ドラッグストアの袋の中には、化粧水やらボディシートが入っていた。


「とりあえず、顔と歯はちゃんと洗え。清潔感。あと、無駄に臭い消臭スプレーはやめたほうがいい。大体イケメンに限るだから。石鹸の匂いくらいがちょうどいいんだよ。まあ、がんばりな。坊主になるくらいの気合があるんならきっとうまくいくから」


 ギザ歯を思いっきり見せて笑った来馬は……。


「……!」


 不覚にもちょっとかわいかった。


「あ、ありがとなー!」

「……おーう」


 俺は、去っていく来馬を見送ると、袋の底に、湿布が入っていることに気付く。

 そう言えば、最近のサイタ○式筋トレとランニングのせいで、一日震えっぱなしだった俺。


 その場で湿布を貼って、家に帰った。


 湿布の匂いがやけに鼻を通り過ぎていく気がした。


 そして、俺は服を着替え今日もランニングに出かけた。


 ランニングは正直最初きつかったが徐々にランナーズハイというか楽しくなってきた。

 どんどん成長している感じも楽しかったが、それよりも、道行く人の挨拶が俺の人間レベルをどんどん上げてくれている気がしてテンションが上がった。

 時には、おじさんと並走しながら昨今の金融政策とやらに対するおじさんの話を濁しながら聞き流し、出会ったおばあちゃんの何十回目かのよしひろの話を聞き流し、キッズたちの〇ケモンの情報をメモしたりした。ありがとう、キッズ。誰だよ、よしひろ。


 そして、徐々にスピードが上がってきた一か月後、俺は来馬とランニングで出会った。


「ようやく追いついたか」


 なんか、剣の師匠みたいなことを来馬は言ってきた。


「お前も走ってんの?」

「お前よりずっと前からな。身体は鍛えといて損はねえからな」


 何のために? というのは聞けなかった。いきなり東京ドームの下にあると言われる地下格闘技場とかに連れて行かれてバキバキな戦闘させられても困る。


 そして、その日からは俺は来馬と一緒に走り始めた。

 意外にも来馬は、出会う人たちと普通に会話していた。来馬曰く、同世代の方がめんどくせえらしい。


 なんか分かる気がした。


 そして、夕方のランニングを走り終えると、俺はシャワーと来馬に与えられた美容メニューをこなし、飯を食って、図書館に向かう。


 勉強の為だ。

 来馬に与えられたメニューには勉強も勿論あった。毎日一時間三十分の勉強。短いようにも思えるが俺には強い味方があった。進〇ゼミではない。


「待たせたな」


 ヒーローみたいなことを言いながら、来馬がやってくる。

 そう、先駆け! ギザ歯塾だ。


 本当に意外だったのだが来馬は勉強ができる。正直、なんだコイツと思った。

 だが、勉強が出来る来馬は教えるのもうまかった。なんだコイツ。


「まあ、あんたが教わるのうまいよ」

「そんなのあるか?」

「相手の気持ちを考えられるってことは、相手の言いたいことを読み取りやすいってこと。つまり、教わるのがうまいってことなんだよ。プライド高い馬鹿はめんどいだろ」


 なるほど、分かる気がする。


「あんたはさ、あんま才能とかないって言ってたけど、それも十分才能だとアタシは思うけどね」


 そう言って来馬はギザ歯をニヤリと見せつけて悪戯っぽく笑った。


 そして、先駆け! ギザ歯塾の成果あり! 

 一年の三学期中間で俺は学年13位になった。


「来馬は~?」

「ケヒヒ、一位ですケド、何か?」


 なんだコイツ。

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