どうやら俺はまた死んで転生してしまったらしい。
しかもよりにもよって、ファンタジー最強の名を欲しいままにする最強のモンスター『ドラゴン』となってだ。
だがそれも身長が人間の膝下程度しかない、子供ドラゴンである。
鏡に映る俺の姿はとても愛らしく、どこか癒しを感じてしまう雰囲気。
アーモンドを縦長にしたような大きな目と緑色が鮮やかなつぶらな瞳、すまなそうにぴょこんっと頭部脇へと生えている角と少し垂れ下がっている耳。体全体は真っ赤色で、ぷっくりと可愛らしい膨らみをもったお腹だけが少し肌色であり、背中には小さな羽根も生えている。
そしてドラゴンらしくも手足の爪は異様に鋭いのだが、愛らしくもピコピコっと動く短い手足である。また何か声を出そうにも「もきゅ~」やら「きゅ~」など、その2つの鳴き声しか喋れない。
(まさか今度の転生先がモンスターになるだなんて、誰が予想できたよ? しかもこんなに愛らしくて、ファンシーなドラゴンとか誰得なんだ? せ、せめて声くらい……人間の声くらいは普通に出せれば状況も違うんだろうけど……)
俺は抱き抱えられながら、鏡に映る自分の変わり果ててしまった姿に意気消沈してしまう。
「きゅ、きゅ~っ。きゅ~っ」
「あら、どうしたのですかもきゅ子? 今日はいつになく元気がないように見えますが、どこか具合でもお悪いのですか?」
俺が今にも泣き出しそうに鳴くと、少女が心配するように様子を窺ってきた。
どうやら少女はペット(?)である俺の元気なく落ち込んでいるのが気がかりのようだ。
(あっ、マズイ。飼い主(?)に心配というか、不信に思われたら絶対にマズイよな? まぁ中身が別になったとは思われないだろうけど、ここはコイツっぽく振る舞わないと……)
とても悲しそうな表情をしている少女を励ます意味でも、俺は明るく振舞うことにした。
「もきゅ! もきゅもきゅ♪」
(大丈夫! ほんとほんと♪)
「あらあら、ふふふっ」
俺が短い手足をジタバタさせて喜ぶと、少女も微笑ましそうに喜んでいる。
「きゅ、きゅ~っ」
(にしても、女の子って温かくて柔らかいものなんだなぁ~)
俺は背中に当たる少女の小さな膨らみと伝わる体温に癒しを覚えてしまっていた。
「ふあぁぁぁぁ~っ」
「もしかして先程から眠かったのですかね?」
「も、もきゅ~っ」
(何かしらないけど、この体だとすぐに眠くなっちまって)
そして可愛らしい欠伸をしてしまう。どうやら今の体は元の俺の体よりも疲れやすいらしい。
「ふふっ。もきゅ子は相変わらず甘えん坊さんなんですねぇ~。ふんふん~♪ ららら~~~~♪」
少女はそう言って俺を優しく抱きしめながら、少しだけ体を揺らして背中をトントンっと軽めに叩き、どこの言葉か分からないが、子守唄を歌ってくれている。
「きゅ~っ」
(や、ヤバイ。温かさとその歌声が心地よくて、このままだと本当に……寝むちまい……そうに……)
俺が覚えているのは温かさと甘い歌声、そしてとても優しい表情で微笑む黒髪の美少女だけだった……。
第3話へつづく