「お前が青山だな。アジトまで案内してもらおう」
「誰だ、貴様」
「呼び名が違ったか。一般にはネオ・サムライシベツのボーカル、青山だったかな」
「誰だ。どちらにしてもそのバンドは既に解散している」
「でも、かなり有名なんだろそのバンド。今でも街でファンに声をかけられる時はバンド名で呼ばれるって聞いたぜ。『見ろよあれ。ネオ・サムライシベツの人だよ』って。サムライシベツの青山。単刀直入に言う。ハルという女性からお前を探して欲しいと依頼を受けている。写真がある。知ってるだろ、この女性だ」
「知らないと答えたらどうする」
「知っているはずだと問い詰める」
「知っていると答えたらどうする」
「彼女はお前たちの仲間だろと、答えを言う」
「根拠は」
「お前ら全員目が同じだ。それは人間として、人体の仕組みとしてありえない。虹彩は人間によって異なる。認証システムで使われているぐらいだ。人間じゃないだろ、お前たち」
「なるほど。そんな欠点があったとは。機械すら騙せるほど精巧に作り上げていたはずだったが。まさか我々も見落としていた見落としを見抜くとは。良い洞察力だ。そうだな。それは早急に本部に改善を求めなければ」
「青山。俺をアジトに連れて行け。さもなければこの場でお前を殺して情報を引き出す。俺には専門家もびっくりな仲間がたくさんいる。みんな血眼になってお前たちを探しているぜ。早くしたほうがと思うが、青山」
「それは物騒な。焦るな。今、了承を得た。ついてこい、貴様」
こうして俺は青山問題の真髄に辿り着いた。長かったな。ハルさんに出会った時、真っ先に排除した可能性が答えだったんだから無理もない。やはり作り物のように綺麗だと思ったのは、警戒したのは間違いじゃなかった。どのみちこんなエスエフみたいな話が現実にあるだなんて想像できなかったから、一撃で見抜くことはできなかっただろうけど。