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第13話「雪暗て灰雪、慮外爆散雪像配信」

爆散雪像配信00

第13話「雪暗て灰雪、慮外の爆散&自己中配信」


修学旅行生が雪まつりの市民雪像をぶっ壊した。聞くに、悪ふざけがエスカレートした結果らしい。


市民雪像は抽選に当たった有志の方が講習を受けて作ったもの。参加費を取られることもバイト代が支払われることもない。誰でも参加できるが、誰もが抽選に当たるわけではない。そんな市民の皆さんの力作が毎年並び、ずっと国内外の人々を楽しませてきた。作った市民にとって今回の事件では、怒りというよりやり場のない悲しみがただ残るだけだった。


この事件は巷でも、ネットでも話題になった。これにより市、雪まつり運営、修学旅行の中学生、当該者の所属している学校、いろんなところに非難と悪口が殺到した。特に現場の警備体制や運営の対応を糾弾する人が後を絶たず、運営は好き放題にヤジを飛ばす外部の人間どもの対応に苦慮していた。だからといって、ここで該当の中学生を犯人として突き出して晒し者にしようものなら、今度は雪像を壊したぐらいでそんなことするなんて可哀想だと非難を浴びること間違いなし。そう、外野にはたかが雪像だとしか思われない。


俺はずっとこの街の市民だから、行かなくても良いかなと毎年思っているのになんだかんだ文句言いながら毎年雪まつりに足を運んでいる。事件現場にはそのついでに立ち寄った。一応、この街のオーガナイザーだからな。トレンドは押さえておかないと。


その時に運営の人がこの街一番の有名人である俺を見つけ、声を掛けたのだ。運営側からのエスオーエスを俺は正式に受け取った。


時間軸としては第三次すすきの抗争の直後。


これは伝統を守ってきた報われない努力と、仲間内の声を無視できなかったガキと、それをおもちゃのように突如主張を始めた自己中心配信者を巡る話。できれば平穏に楽しく楽しみたい雪まつりの二月。雪暗を見上げ灰雪を待つ白の息。その間を抜けて、俺は息を切らして雪まつり運営本部へ走る第十三話。




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