「話は聞かせてもらった。任せとけ」
ここは雪まつり実行運営本部。外は寒いからね。あったかいところに避難。やっぱ、この祭り冷えるよ。
今回の話、珍しいことにあらすじが本文につながっている。ここに至るまでのことが書いてあるので、すまんが一番上を見てから来てくれ。一応簡略して話すと、雪まつりの市民雪像を修学旅行の中学生が悪ふざけがエスカレートして壊した。壊したガキと運営に日本全国から非難と悪口攻撃。運営は対応に苦慮。エスオーエス。俺に依頼。これが今回のトラブル。やるせないね。
「ざっと教えてもらったことと、ネットに書かれている情報を比べたが、半分くらいは合ってるな。半分も正解してれば赤点回避。ネットエスエヌエス掲示板民も意外とやるもんだ」
「感心しないでくださいよ。その人たちに攻撃されているんですから」
「わかってますよ。しかし、ネットに溢れているアカウントなんてそれこそ人口の百倍はいます。ひとりで複数持っているのは当たり前、常に使い捨ててまた新しく作って。二桁当たり前の子もいる。各アプリで各用途で。その全てを相手取るのは無理があるかと。ひとつひとつ開示請求して問い詰めるのは無理ですね」
「じゃあ、このパンクどうしたらいいんですか……」
「櫻井さん、でしたか。俺はこれでも小さなトラブル含めて年間百ぐらい受けてるんです。無名無知ザコキャラのガキだった十年以上の俺でさえ、この類いのトラブルにはよく遭遇しました。ネットは良くも悪くも、いつも社会から問題視された。問題とする視点は、世間が認知しているその問題の認識は二十五年間違え続けたまま変わってないけど。だからすぐにネットでトラブルになったと抱え込むんです。攻撃している自覚の無い個人も、誹謗中傷を受けた有名人も健全な企業団体も。ネットの認識を間違えている。スマホの普及とか無料のサービスで金を稼ごうって時代です。何があってもおかしくない。この街と同様になんでもありですよ」
「それでは、本当にどうしたら」
「任せてください。依頼を受けたからにはやります。とりあえず応急処置をします。中学生を含めた問題の根本的な解決はさすがに少しかかるけど、火事は対処できる。時間をください。とりあえず二時間で鎮火を目指します」
「分かりました。お願いします。スタッフも疲弊していて。こんなことになった年は今まで無かった……。毎年観光客の多さに忙しくしていただけだったのに」
「それは、なんとなく分かります。一度ここを離れますが、緊急で何かあったらさっきの連絡先にメッセージか電話ください。あまりにも状況が悪化したらもう少し時間掛かるかもしれませんが、その時は勘弁で。あ、それと報酬くださいよ。いつもタダ働きなんですよ。そのうえ上司に経費取られるし」
「探偵にも上司がいるんですか?」
「だから、探偵じゃないですって。オーガナイザーっていうダサい肩書きの問題解決屋です。昔はただの普通友達だったんですが、今やこの街のビッグボス。奴にこの街で勝てる人間は誰もいない。たとえヤクザでも妖刀使いでも勝てない。そんなことはどうでも良いですね。急ぎますんで。ではまた」
ネット炎上の消火活動。沈めるにはどうすればよいか。それは今も昔も変わらないから、実は簡単。姿や見てくれは変わったけど結局変わらないんだよね。使っているのはどのみち人間だ。あとは人工知能とか自動ロボットとかを走らせてる人間を、そのロボットを潰していきながら特定して警告音。ウイルスをばら撒いていたバカに対して逆にウイルスをばら撒くなんてことは、昔から行われてきた伝統芸。さて、まずは電話するかな。いつものビッグボス上司に。